本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。
望まれていた、くり返し使用できる鋳鉄溶湯測温用熱電対 |
1000℃以上となる鉄や銅、ニッケル溶湯等の測温においては、金属溶湯がセラミックスに対して浸食性が強いことと、熱電対に広く使用されている白金ロジウム素線の融点にも近いため、1回だけ使用して交換する消耗型の熱電対が広く使用されてきた。このタイプは素線が露出しているため応答性は優れるものの、鋳造現場では品質維持のために頻繁に測温を行うため、消費する熱電対の本数は膨大な量になり、搬送、維持費も含めると莫大な費用を必要としていた。また、1回毎に交換するために測温の自動化が困難であり、高温溶湯の至近距離で作業者が直接熱電対を湯面につけながら測温しており、危険度が著しく高く、作業環境の改善が叫ばれている。さらに、高機能製鋼等の研究開発においては、材質の組織制御が重要になるため、鉄の融点近傍である1500℃以上の高温での正確な測温のニーズは益々高まってきている。こうした実状から、鋳鉄などの高温域で正確かつ、くり返し測温が行える熱電対の開発が望まれていた。
保護管内に、焼結時に体積膨張するセラミックスを充填して焼成し、金属素線を密着固定させることで、高精度・高信頼性を実現 |
本新技術は、保護管内部に、焼結時に体積膨張するセラミックスを充填して焼成し、内包した金属素線を固定密封するとともに、保護管内に固着埋設することにより、金属素線、保護管、充填セラミックスが一体化した構造の熱電対の製造に関するものである。
研究者らは、ケイ素粉末にチタン粉末を所定の割合で添加することにより、窒化ケイ素の反応焼結体の体積変化を制御できることを発見し、この焼結体を熱電対の保護管内の充填材として応用することで、金属素線を固定密封し、酸素の浸入を防止することに成功した。
充填した焼結体は、金属素線と熱膨張率がほぼ等しく、熱伝導性が高いため、熱衝撃性や応答性に優れる。また、焼結体はシース管内に隙間なく密封されて、全体が一体化した構造をもつため、振動など耐衝撃性や耐久性に優れ、くり返し測温の回数を飛躍的に向上できる。さらには、金属素線は焼結体に被覆密閉されて耐酸化性が増すため熱起電力は高いが酸化され易いタングステン−レニウム合金(W-Re)を金属素線に使用でき、鋳鉄溶湯などの高温環境において高精度な測温が可能となる。また一方で、熱電対を長尺化することにより、熱放射を抑えるために間口が狭く深底化した形状になる傾向がある溶融炉の各部位の測温精度の向上も可能となる。
各種高温計測に、くり返し使用可能な高信頼性熱電対としての利用が期待 |
本新技術によるセラミックス充填シース型熱電対は、
などの特徴を持つため、
などに利用されることが期待される。
(※)この発表についての問い合わせは、電話03(5214)8994 蔵並または山岸までご連絡下さい。
This page updated on February 15, 1999
Copyright© 1999 Japan Science and Technology Corporation.
www-pr@jst.go.jp