本新技術の背景、内容、効果はつぎの通りである。
紫外線を効果的に遮蔽する薄片状の酸化チタンが望まれている |
酸化チタン(TiO2)は、物理的、化学的に安定で、下地の色を隠す隠蔽力や着色性が良く、紫外線遮蔽効果があるなどの特性を持つため、塗料、プラスチック用など各種の顔料や化粧品用紫外線遮蔽材、電子部品用誘電体原材料などとして幅広く使用されている。また、最近では、酸化チタンの光触媒作用を利用して、脱臭材料、抗菌材料、防汚材料などへの展開も進んでいる。
酸化チタンの製造法としては、硫酸チタンを加水分解して焼成する硫酸法や四塩化チタンを高温で酸化する塩素法などがある。これらの製造法により工業生産されている酸化チタンの形状はほとんどが粒子状のものである。
従来の粒子状の酸化チタンは凝集性が高いため薄くむらのない塗布が難しいという問題があった。このため、展延性に優れた薄片状の酸化チタンが注目され、すでに実用化がなされている。しかし、この薄片状酸化チタンは、チタンアルコキシドを平滑面に塗布、乾燥後、機械的に剥がすというプロセスで製造されているため、薄片を薄くすることに限界があるなどの問題があった。薄片状の酸化チタンの厚みを薄くできれば少量の酸化チタンで物質表面を被覆でき、紫外線を効果的に遮蔽することが期待できるため、より薄く、展延性に優れた薄片状の酸化チタンの製品化が求められている。
チタン酸の層状結晶から薄片状の酸化チタンや中空状の酸化チタンを製造 |
本新技術は、酸化チタンとアルカリ金属塩を混合して焼成、酸処理することにより、シート状のチタン酸が積層した層状結晶を合成し、これをアミン系化合物水溶液中で撹拌して各層を剥離・分散させ、噴霧乾燥・焼成することにより中空状の酸化チタンを作製し、これを粉砕することにより微細な薄片状酸化チタンを製造するものである。
本新技術に係る研究の成果として、これまでに、研究者らは、低温化学反応を利用する新しいセラミックス合成プロセスの開発研究の過程で、新規なチタン酸化合物を合成し、この化合物がシート状の2次元のチタン酸結晶層が積層した構造を持つこと、この化合物を液相中で化学処理することにより2次元結晶層を一層ずつ剥離・分散できることを見出した。さらにこの溶液を噴霧乾燥・焼成することにより殻の厚さが0.01〜0.1μmと極めて薄く直径10〜500μmの中空状酸化チタン微粒子を作製でき、これを粉砕することにより、微細な薄片状酸化チタンを作製できることを明らかにした。
本新技術による薄片状酸化チタンの製造方法は以下の通りである。
これにより縦横が1×1μm程度、厚さ0.75nmのシート状のチタン酸が500〜1000枚積層した層状チタン酸の微結晶を得る。なお、この微結晶の縦横幅、厚さについては、焼成条件を制御することにより、所望の大きさのものが得られる。 |
薄片状酸化チタンは、紫外線遮蔽材や塗料分野での利用などが期待 |
本新技術は、
などの特徴を持つため、本新技術による薄片状酸化チタンは、紫外線遮蔽材への応用や、塗膜強度や密着性向上などを目的とした塗料分野での利用などが期待される。
また、薄片状に粉砕する前の中空状酸化チタン微粒子については、視認性、耐熱性に優れるなどの酸化チタン本来の特徴に加え、嵩比重が低く、流体追随性に優れるという特徴を兼ね備えている。このため、本中空状酸化チタン微粒子は流体計測システム用のトレーサーとしての利用が期待される。
(※)この発表についての問い合わせは、電話03(5214)8994蔵並または長谷川までご連絡下さい。
参考:本件に係る事前評価は、新技術審議会において行われ、評価結果などは別添の通りです。
This page updated on February 15, 1999
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