戦略的基礎研究推進事業「内分泌かく乱物質」研究領域における
平成10年度採択研究課題の概要


研究代表者:
梅澤 喜夫
所属・役職:
東京大学 大学院理学系研究科化学専攻 教授
研究課題名:
内分泌かく乱化学物質の細胞内標的分子の同定と新しいバイオモニタリング
概   要:
生体内ホルモンの合成、分泌、情報伝達に関わる諸過程に対する内分泌かく乱化学物質(endocrine disrupting chemicals 以下EDC)の影響を検索するとともに、これらを基礎としたEDCスクリーニングシステムを構築し、EDC投与により発現が変化する遺伝子群を系統的に解析するとともに、DNAチップを用いたEDCバイオモニタリングシステムを確立する。
 これにより、EDCの細胞、個体レベルでの作用分子機序が明らかになるのみならず、汎用性のある新規EDCバイオモニタリングシステムを社会に提供できる。
研究代表者:
香山 不二雄
所属・役職:
自治医科大学 医学部衛生学教室 助教授
研究課題名:
植物由来および人工の内分泌かく乱物質の相互作用
概   要:
人工内分泌かく乱化学物質とphytoestrogenの作用メカニズムの差異に関して検討し、ほ乳類における人工内分泌かく乱化学物質の曝露バイオマーカーを検索し、リスク評価の手法の開発を行う。生体中phytoestrogenの定量法を確立し、さらに両者の骨組織、免疫担当細胞への影響および相互作用を評価する。
研究代表者:
堤  治
所属・役職:
東京大学 医学部産婦人科学教室 助教授
研究課題名:
ヒトを含む哺乳類の生殖機能への内分泌かく乱物質の影響
概   要:
内分泌かく乱物質のヒト生殖器官(子宮内膜や卵胞等)への汚染の程度を、不妊症や子宮内膜症の疾患との関連で評価する。また卵子・胚の体外受精・培養系で内分泌かく乱物質の最小毒性量を設定し、その作用メカニズムを分子レベルで明らかにする。その結果からヒト生殖機能への安全限界を設定し、国民全体の不安に具体的に解答する。
研究代表者:
遠山 千春
所属・役職:
国立環境研究所 環境健康部 部長
研究課題名:
リスク評価のためのダイオキシンによる内分泌かく乱作用の解明
概   要:
一般環境中におけるダイオキシンへの曝露が、感受性が高いと考えられる胎児・乳児に及ぼすリスクを推定するためには、毒性発現のメカニズムの解明が不可欠である。そのため受精から出生までの時期に曝露したダイオキシンにより、生殖機能、行動・脳機能、免疫機能がどのようなメカニズムによって量・反応(影響)関係を示すかを実験的に明らかにし、リスク評価に適用することを試みる。
研究代表者:
名和田 新
所属・役職:
九州大学 医学部内科学第三講座 教授
研究課題名:
核内受容体・共役因子複合体と内分泌かく乱物質
概   要:
内分泌かく乱物質が胎生期、出生後の高次内分泌調節機構におよぼす広範な影響を検討する。このため、核内受容体/共役因子複合体の核内三次元分布の異常を簡便に可視化する方法を開発し、核内受容体/共役因子複合体をはじめとする転写調節機構全般に与える影響を明らかにする。さらに、この機能障害が出生後の環境要因により大きく修飾されることを明らかにし、内分泌かく乱物質をその作用機構の観点より再分類する。
研究代表者:
藤井 義明
所属・役職:
東北大学 大学院理学研究科 教授
研究課題名:
内分泌かく乱物質の生体毒発現の分子メカニズムとモニター系の開発
概   要:
多環性芳香族などの内分泌かく乱物質の生体毒発現のメカニズムをAhレセプター(AhR)を介するものと介さないものを、発生工学的手法と分子生物学的方法を用いて、分子レベルで明らかにし、催奇形性、胸腺縮退による免疫不全、子宮内膜症等の成因を追求する。また、AhRリプレッサー等の欠失マウスを作製し、毒性発現に感受性の高いモニター動物作製を試みる。
研究代表者:
諸橋 憲一郎
所属・役職:
岡崎国立共同研究機構 基礎生物学研究所 教授
研究課題名:
性分化機構の解明
概   要:
生殖活動は視床下部−脳下垂体−性腺からなる内分泌系によって支えられている。この内分泌系において中心的な役割を果たす転写因子の機能と発現様式を、時間的かつ空間的側面から解析することで、「生殖腺と脳の性分化」の機構を明らかにする。本研究は生殖活動の本質的な理解のみならず、内分泌かく乱物質の作用メカニズムの解明には不可欠であり、問題解決にむけた手掛かりを与えてくれることが期待される。


This page updated on January 5, 1999

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