平成10年度さきがけ研究21 採用研究課題概要

「素過程と連携」 研究領域


◆ DNA複製開始からDNA鎖伸長過程への移行機構

  荒木 弘之   国立遺伝学研究所微生物遺伝研究部門 教授
 染色体DNAが複製を開始しその伸長が始まるには、複製酵素が複製開始点にロードされなければなりません。その機構を、出芽酵母の強力な遺伝解析系と生化学的手法を併用することにより明らかにします。


◆ 細胞系譜の観察によるショウジョウバエの脳神経回路モジュール構造の解析

  伊藤 啓   岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所 助手
 個々の幹細胞から生まれた子孫細胞の一群が、成体脳でいつ、どのようにして神経回路網を作ってゆくのか、ショウジョウバエについて、新開発の細胞クローンラベル法を用いて解析します。


◆ 相同組換えにおけるホリデー中間体プロセッシングの機構

  岩崎 博史   大阪大学微生物病研究所 助手
 相同的DNA組換えにおいては、多数のタンパク質が逐次DNAに作用して反応中間体であるホリデー構造が形成されます。この構造体がどのように解離されて組換え体分子が形成されるのかを分子レベルで解明します。


◆ 蛋白質/蛋白質相互作用による物質輸送機能発現の機構

  金井 好克   杏林大学医学部 助教授
 細胞膜を介する物質輸送を担当するトランスポーターの構成サブユニットを明らかにし、その組み合わせと相互作用により機能と調節の多様性が現出されるメカニズムをアミノ酸トランスポーターを中心に解明します。


◆ ミヤコグサで開く根粒共生系の分子遺伝学

  川口 正代司   東京大学大学院総合文化研究科 助手
 日本に自生するミヤコグサは、マメ科植物ではじめて分子遺伝学的解析を可能にすることが期待されています。岐阜と宮古島由来のミヤコグサを用いて根粒共生系を制御する宿主因子群に光をあてます。


◆ 体軸形成におけるWntシグナル伝達経路とAxinの役割

  岸田 昭世   広島大学医学部 助手
 初期胚発生時の体軸形成を制御するWntシグナル伝達経路の構成分子であるAxinとβ-カテニンに着目し、その体軸形成における役割を解明します。


◆ 「味」と「香り」を認識する分子機構

  倉橋 隆   大阪大学大学院理学研究科 助教授
 私たちは五感よって自分のおかれた状況を知ります。本研究では、感覚センサーとしての味覚と嗅覚におけるエネルギー変換機構を感覚細胞内の受容体タンパク質、酵素と物質連鎖の観点から調べます。


◆ 神経細胞の生存シグナル伝達機構の解析

  後藤 由季子  東京大学分子細胞生物学研究所 助教授
 細胞の「生存」を促すシグナルの伝達機構を、そこに働くタンパク質リン酸化酵素に注目して解析し、神経細胞死を防ぐ方法の開発を目指します。


◆ X線1分子計測による細胞膜動的機能解析

  佐々木 裕次  (株)日立製作所基礎研究所 研究員
 機能性タンパク質に標識したナノメートルサイズの金属単結晶からのX線回折斑点を指標に、個々のタンパク質分子の極微な構造変化や局部的な揺らぎを高速計測し、タンパク質が細胞内でどのように機能しているかを調べます 。


◆ 細胞はどのようにして非対称に分裂するか?

  澤 斉     大阪大学医学部 戦略・研究員
 発生過程において、細胞は非対称に分裂して性質や将来の運命が異なる娘細胞を作り出します。線虫C.elegans を用いてこの非対称分裂に関与する遺伝子を明らかにします。


◆ 植物における異性の認識と有性生殖成立の機構

  関本 弘之   東京大学大学院総合文化研究科 助手
 単細胞性接合藻ミカヅキモを用い、その性フェロモンを中心とした細胞内外の情報伝達のメカニズムを明らか にし、接合に至る一連のプログラムの解明を目指します。


◆ 体細胞から個体発生におけるゲノム再プログラム化機構

  多田 政子   鳥取大学医学部 学振特別研究員
 クローン動物誕生が物語るように、卵の細胞質には核の遺伝子発現のプログラムを書き換える能力があります。生殖細胞由来の未分化細胞(EG細胞)にも類似の再プログラム化能があり、その機構と利用法を探ります。


◆ 転写制御の基本的枠組みを探る:モデル制御系の構築とその定量的解析

  田中 正史   東海大学総合医学研究所 奨励研究員
 酵母に設計・構築したモデルプロモーターの転写応答を定量的に解析し、プロモーター構造や転写因子の質・量を反映する様々なパラメーターが如何に集約され一定効率の転写に至るのか、その原則と機構を探ります。


◆ DNAはいかにして分配されていくのか?

  仁木 宏典   熊本大学医学部 講師
 バクテリアの分裂時に、染色体上の特定の領域がどのようにして複製された染色体DNAを娘細胞へ導くのか、またその領域はどのような構造をもつのかを明らかにします。


◆ 血液型糖鎖を通じて知る生命の素過程

  野村 一也   九州大学理学部 助教授
 今まで全く機能のない糖鎖とされてきましたヒトのB型血液型糖鎖が、実はカエルでは細胞接着分子として働いています。この血液型糖鎖システムの研究を発展させて、隠された糖鎖の役割を解明します。


◆ 胚中心における新規なB細胞選択機構の解明

  疋田 正喜   岡山大学工学部 講師
 異物に対する高度な免疫応答の場である胚中心において、B細胞の抗原特異性に変化を引き起こす新規な機構があることを明らかにしました。その機構の解明を目指します。


◆ 酵母の形態形成と細胞増殖との連携制御機構

  平田 大    広島大学大学院先端物質科学研究科 助教授
 形態形成と細胞増殖(分化・細胞周期)は厳密に連携制御されています。本研究では、出芽によって増殖する酵母と分裂によって増殖する酵母を使って、この問題の分子機構の解明を目指します。


◆ 神経軸索の伸長経路を決める道標細胞の発現分子の検索

  平田 たつみ  名古屋大学大学院理学研究科 助手
 マウス終脳にある嗅球の神経細胞の軸索をガイドする道標細胞を見つけました。この細胞が作るガイド分子を同定し、軸索ガイドの機構を分子レベルで理解することを目指します。


◆ 染色体DNA複製の再開始抑制機構の解明

  水島 徹   岡山大学薬学部 助教授
 DNAが複製途上にあるとき、次のDNA複製の開始は抑制されている。私は大腸菌を用いてDNA複製に依存した複製開始の不活性化機構のモデルを提唱しました。このモデルの真核細胞への適用を試み、抗ガン剤開発への応用を目指します。


◆ 分子遺伝学と逆遺伝学による線虫の神経発生の解析

  三谷 昌平   東京女子医科大学医学部 助教授
 ゲノムプロジェクトが進展している線虫を用いて、神経系で機能する転写因子の標的遺伝子群を同定します。また遺伝子破壊法と組合せて神経系形成機構に働く分子の機能を解明します。



This page updated on September 25, 1998

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