平成10年度さきがけ研究21 採用研究課題概要

「形とはたらき」 研究領域


◆ 磁性フォトニック・クリスタルの構造と機能に関する基礎的研究

  井上 光輝   東北大学電気通信研究所 助教授
 結晶中の電子の役割を光で置換えたフォトニック・クリスタルは、フォトニックバンドを利用して、極めて多彩な光波制御が可能となります。本研究は、磁性体で構成したフォトニック・クリスタル(磁性フォトニック・クリスタル)に着目し、スピン依存フォトニックバンドなど、その機能と構造との関係を解明します。


◆ 低分子アンサ型化合物の化学的情報伝達機能

  鹿又 宣弘   理化学研究所有機合成化学研究室 協力研究員
 アンサ化合物の面性キラリティーに着目し,自己増殖・情報転写・触媒的不斉誘導などの化学的情報伝達機能の創製を低分子化合物の中に求めて行きます。


◆ 野生マウスの体内回路網形態と行動

  小出 剛   国立遺伝学研究所哺乳動物遺伝研究室 助手
 動物は進化していくに従い遺伝的変化を生じ、多様に行動を変化させています。こうした動物の多様な行動を解析するために、遺伝的に異なった野生由来マウス系統を用いて行動の多様性を生み出す体内の回路網とその背後にある遺伝子の多様性を探究していきます。


◆ 匂いの嗅げる酵母の創出:匂い受容体の同定と解析

  古賀 誠人   九州大学理学部 助手
 動物は多種多様な匂い物質を、非常に多種類の7回膜貫通型レセプターによって嗅ぎ分けていると考えられています。出芽酵母の接合フェロモン信号伝達系を利用して、匂い物質と匂いレセプターの対応関係を明らかにすることに挑みます。


◆ 細胞内小器官ゴルジ体はなぜ特徴的な層板構造をとるのか

  近藤 久雄   Imperial Cancer Research FundCell Biology Lab. Scientific staff
 細胞内小器官の一つであるゴルジ体は、蛋白の細胞内修飾及び細胞内輸送に重要な役割を果たしています。そのゴルジ体は、扁平膜が幾層にも極性をもって積層した特異な形態を示します。本研究では、ゴルジ体がどのようにこの層板構造を形成し、その層板がゴルジの機能とどう関係しているかを明らかにすることを目指します。


◆ タンパク質多層集積構造によってバイオ技術を飛躍させる研究

  斎藤 恭一   千葉大学工学部 助教授
 多孔性中空糸膜の孔表面上に形成させたタンパク質多層集積構造という形を利用して、タンパク質の超高速精製、光学異性体の完全分離、そして長期高活性な酵素反応という3つのはたらきをさせます。


◆ 心臓が大きく強くなるしくみの研究

  阪本 英二   厚生省 国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部 室長
 実験動物の心臓に遺伝的あるいは環境的な負荷ををかけ、それに応答して発現する遺伝子を探索することで、心臓が物理的あるいは化学的なストレスに適応し、恒常的に働くしくみの解明をめざします。


◆ 低分子化合物による蛋白質の形とはたらきの制御

  袖岡 幹子   (財)相模中央研究所第5研究班 主任研究員
 細胞内情報伝達酵素であるプロテインキナーゼCの形とはたらきを制御する化合物を創りだし、巨大な蛋白質の低分子化合物による活性調節のしくみを明らかにすることを目指します。


◆ 2つのT-box遺伝子産物As-TとAs-T2の形とはたらき

  高橋 弘樹   京都大学大学院理学研究科 助手
 非常によく似たT-boxを持つ転写因子の一方が脊索細胞の分化(As-T)を、もう一方が筋肉細胞の分化(As-T2)を制御します。それではどのようにしてAs-Tは脊索を作りAs-T2は筋肉を作るのか。この2つのT-box遺伝子産物のタンパク質高次構造に依存したダイナミックな機能の変化を追跡します。


◆ 横紋筋収縮調節タンパク質複合体の構造解析

  武田 壮一   松下電器産業(株)中央研究所 リサーチアソシエイト
 筋肉の収縮はカルシウムイオンにより調節されています。本研究では調節の要となるトロポニンの機能ドメインの抽出・結晶化・X線結晶解析を試み、収縮制御の原子レベルでの理解を目指します。


◆ クロロフィル分子集合体の超分子構造形成と機能発現

  民秋 均   立命館大学理工学部 助教授
 光合成アンテナのモデル系を合成色素分子の自己集合体によって調製し、その超分子構造の解明と機能発現を行い、さらに、この分子集合体の構築原理をもとにして、新規な高次構造体の構築と機能化をも目指します。


◆ 葉とシュートの分化に関する分子生物学的解析

  塚谷 裕一   東京大学分子細胞生物研究所 助手
 種子植物の基本要素である葉の形態形成制御系を明らかにするため、モノフィレア、キソケトン、といった独自の研究材料を分子遺伝学的に解析し、葉とシュートとの分化あるいは葉の進化に関わる遺伝子ネットワークの解明を目指します。


◆ 花の形を作る遺伝子系の起源と進化

  長谷部 光泰  岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所 助教授
 生物の形の進化・多様性を探ることは、形態形成遺伝子系の進化・多様性を探ることに他なりません。本研究では、植物の生殖器官である花がどのような遺伝子系の変化によって進化したのかを解きあかすつもりです。


◆ 脳細胞の活動と形態変化の高速高分解能計測

  藤崎 久雄   (株)ニコン筑波研究所 主任研究員
 ビデオレート2光子顕微鏡を用いて,生きている脳を安全に高分解能で動態観察し,かつ活動の計測を同時に行う方法を確立して,脳内の細胞の形態と活動との関係を明らかにします。


◆ 篩管を通じたmRNAや蛋白質の長距離移行

  藤原 徹   東京大学大学院農学生命科学研究科 助手
 高等植物の篩管は光合成産物などの通り道です。篩管は脱核した細胞からできていますが、最近、篩管液にはmRNAや蛋白質が含まれていることがわかってきました。これらの物質がどこから何のために篩管に運ばれてくるのかを明らかにすることを目指します。


◆ 細胞内情報伝達機構の1分子イメージング

  船津 高志   早稲田大学理工学部 助教授
 細胞内で生体分子が機能している現場を、蛍光顕微鏡法を用いて1分子レベルでイメージングする技術を開発します。この技術を応用して、細胞内情報伝達と情報処理の分子機構の解明をめざします。


◆ 微小脳の高次中枢のモジュール構造と情報表現

  水波 誠   北海道大学電子科学研究所 助教授
 昆虫の脳「微小脳」の設計原理を解明するための第一歩として、その最高次中枢であるキノコ体に見られるモジュール構造の機能的な意義を、生理学、行動学、および光学計測の方法を用いて明らかにします。


◆ 生体高分子の自己組織化と分子進化

  三原 久和   東京工業大学生命理工学部 助教授
 ポリペプチドは、タンパク質の原始型のような組織化超構造を形成します。ペプチドの自己認識能、自己組織化能や自己複製能等の特性を核酸等との関係も含めて追求する研究を行います。ペプチド集合体の形を分子の進化と関連づけ、新しい分子設計の概念確立を目指します。


◆ 動的らせん分子の創製と応用

  八島 栄次   名古屋大学大学院工学研究科 教授
 本研究では、高分子の高次構造の最も基本的ならせん構造に着目し、その形の制御とはたらきの発現を有機化学的手法にのっとり行うことを目的としています。目指すらせんは動的ならせんで、しかも外部の刺激、特にキラルな刺激に対して応答し、らせん構造を形成する分子の創製です。


◆ 脊椎動物の脳の細胞系譜の解析

  弓場 俊輔   大阪大学大学院医学系研究科 助手
 ゼブラフィッシュは、脊椎動物の脳の基本構造を備えた新しいモデル動物です。この生物の脳の神経細胞が胚から成魚にいたる過程でどのような系譜をたどるのかを、最も先進的な光学および分子生物学的技術を駆使して追跡することによって脳の構成原理の解明に迫ります。



This page updated on September 25, 1998

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