平成10年度さきがけ研究21 採用研究課題概要

「状態と変革」 研究領域


◆ 動的イオン場を介した電子物性制御

  芥川 智行   北海道大学電子科学研究所 助手
 有機導体中にデザインされたイオン場(イオンチャンネル・水素結合・超分子構造・非晶質場)の中を運動するイオンに注目し、外場によるイオン運動の制御を行う事で伝導電子系が応答する、新規なイオン応答型の電子素子の開発を目指します。


◆ 機能性有機分子自己組織化膜の相分離現象および局所的電気伝導性の測定

  石田 敬雄   アトムテクノロジー研究体;オングストロームテクノロジ研究機構 リサーチサイエンティスト
 本研究では基板あるいはパターンを形成したシリコン基板上に、機能性分子のナノ構造の形成および局所的な電気測定を行い、究極的な分子素子動作の可能性を探ります。


◆ 同位体制御による半導体物性デザイン

  伊藤 公平   慶應義塾大学理工学部 専任講師
 Si, Ge, GaAs等の半導体材料を構成する元素には複数の安定同位体が存在します。本研究では半導体中の同位体組成を制御することから、電気伝導度、熱伝導度等の物理値に対する同位体効果を明らかにし、新しい機能をもった半導体のデザインに役立てます。


◆ 光によって生成する遷移金属錯体の新しい電子相

  岡本 博   東京大学大学院工学系研究科 助教授
 電子-スピン-格子が強く結合した一次元金属錯体結晶を光励起することによって、結晶構造やスピン秩序が変化した新しい電子相の生成を試みます。


◆ 木星の海を地球に創る

  奥地 拓生   名古屋大学理学部 助手
 木星型惑星の内部には液体の水が数十〜数百万気圧の圧力下にあり、地球のそれと全く異なる性質をもっています。このような極限条件下での水の性質をその場観察するための陽子核磁気共鳴分光計の開発を目指します。


◆ 発光性金属錯体による構造秩序識別システムの構築

  加藤 昌子   奈良女子大学理学部 助教授
 有機−無機複合体の多様な構造と発光状態を制御することにより、特異な発光性金属錯体構造秩序体を開発し、構成要素と相互作用因子の効果を解明しながら、発光プローブやセンサー機能を持つ新しい構造秩序識別システムの構築を目指します。


◆ 不均一磁場を用いたクラスター質量分析装置の開発

  河合 明雄   東京工業大学大学院理工学研究科 助手
 ラジカルなどの磁気モーメントをもったクラスターを不均一磁場を用いて質量選別する装置を製作し、光イオン化などでよく経験するクラスターの破壊などの問題を避けながら、クラスターの質量分析を行うことを目指します。


◆ 偏光双安定面発光半導体レーザ

  河口 仁司   山形大学工学部 教授
 半導体レーザーは、光通信や光ディスクの光源として広く用いられていますが、本来もつ光非線形性を用いると新しい機能素子が実現出来ます。超高速の偏光双安定動作とスピン偏極電子の注入によるレーザー発振偏光の制御をめざします。


◆ 液相微小空間における単一クラスター計測と反応ダイナミクス

  北森 武彦   東京大学大学院工学系研究科 助教授
 ガラス基板に微細加工したサブμmの溝や穴を液相のミクロ化学実験空間とし、独自の顕微光熱変換分光法を検出法として、液相単一クラスターの直接検出や、溶媒分子へのエネルギー移動、反応ダイナミクスの解明に挑みます。


◆ 点接触境界のダイナミクスの原子直視観察

  木塚 徳志   名古屋大学難処理人工物研究センター 講師
 物質同士が単原子もしくは数原子で接触している点接触境界では特異な現象が現れます。この点接触境界において生じる様々な現象の構造ダイナミクスを直接観察することを試みます。


◆ スピン−電荷−軌道結合系における電子物性の磁場制御

  桑原 英樹   上智大学理工学部 講師
 本研究では強電子相関物質である3d遷移金属複合酸化物を主な研究対象とし、スピン-電荷-電子軌道の各自由度が強く結合することによって生み出される新規電子物性の開拓、およびその物性の解明を目指します。


◆ 半導体中非平衡電子系のテラヘルツ・ダイナミクス

  河野 淳一郎   Stanford UniversityW.W.Hansen Experimental Physics Laboratoly
            主任研究員兼講師

 本研究では、テラヘルツ自由電子レーザーの交流強磁場に激しくドライブされた半導体中のブロッホ粒子の運動、またそれによる系の物性の変化を理解することを目的とします。


◆ 高速分光法による交換相互作用発現の直接観測

  小堀 康博   東北大学反応化学研究所 助手
 溶液中の光化学反応過程における常磁性分子間の電子交換相互作用発現機構を解明します。交換相互作用の符号や大きさから、溶質、溶媒分子の配向緩和ダイナミクスが交換相互作用にどのように寄与するのかを明らかにします。


◆ 遷移元素を含むIV族クラスタ固体における状態転移とその応用

  谷垣 勝巳   大阪市立大学理学部 教授
 本研究では、ナノ領域のIV族元素クラスタ固体において、特定の部位に磁性を担う遷移元素を導入した新しいクラスタ固体を創製し、クラスタ固体における特異的な伝導電子と磁性電子との間に働く相互作用によって生じる物質の状態変化を詳細に検討します。


◆ 2次元液晶性水面上単分子膜の光誘起非平衡ダイナミクス

  多辺 由佳   工業技術院電子技術総合研究所超分子部 主任研究官
 アゾベンゼン誘導体の二次元液晶性単分子膜に微弱な光を一様にあてると、異性化された数%程度の分子により巨視的な非平衡パターンが発現します。この劇的な配向波の発生・伝播のメカニズムを解明します。


◆ レーザーで創るタンパク質のマクロな形態・ミクロな構造

  坪井 泰之   京都工芸繊維大学繊維学部 助手
 タンパク質は基礎・応用両面より大変興味深い研究対象です。本課題では、レーザー光が誘起する様々な現象(化学反応、温度上昇、衝撃波)を巧みに利用し、タンパク質特有の複雑な状態を創製・制御することを目指します。


◆ 磁束の量子化過渡現象と新規物性の解明

  斗内 政吉   大阪大学超伝導エレクトロニクス研究センター 助教授
 極短光パルスを用いて磁束量子を生成したり、消滅させたり、状態を変化させたり、また量子状態の変化する様子を過渡的に観測したりすることで、新しい物性の発見と解明、および、新しい応用への道を切開くことを目標とします。


◆ 基底状態の質的変化としての量子相転移

  初貝 安弘   東京大学大学院工学系研究科 助教授
 絶対零度における相転移(量子相転移)の視点から、量子系における質的変化をおこす現象を臨界現象の理論、斬新な方法論的手法を用い計算科学的側面から研究します。


◆ 金属ナノ細線の集積自己形成

  村越 敬   大阪大学大学院工学研究科 助手
 本研究では、ナノメートルから数十ナノメートルのサイズ領域において導電性ナノ細線を構築し、室温下にて動作可能な単電子デバイスの集積構築を目指します。


◆ 超低温・超高圧下の固体水素の分光学的研究

  百瀬 孝昌   京都大学大学院理学研究科 助教授
 固体水素の極低温・超高圧下における様々な相を分光学的手法で調べることで、分子集団における多体相互作用の定量的な解明を目指すと共に、実験的には観測されていない凝縮系水素の種々の相転移の可能性を検討します。



This page updated on September 25, 1998

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