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「独創的で問題提起の明確な研究を求める
-研究申請者と審査員の意志疎通の重要性-」
平成10年度の「脳を知る」領域には78件の研究提案が申請され、統括と6名の領域アドバイザーにより選考を実施した。1次選考は書類審査により13件(約17%)が推薦され、2次選考の面接審査を経て、最終的に、4件(約5%)が採択された。領域アドバイザーとしては、形態学、分子生物学、感覚生理学、運動生理学、シナプス伝達機構、記憶・情動を含む高次機能の分野に十分な理解を持つ研究者に参加をお願いした。また、各申請書の書類選考は2〜3名のアドバイザーの評価と全審査員による追加討議の結果に基づいて2次選考への推薦を決定した。
基本的に統括が求めたのは、当然ながら新規で独創的なアイディアに基づいた国際レベルの優れた研究提案である。同時に、高額な研究助成金は社会的投資であるから、それに見合った成果の保証も必要である。この二つの目的を満足させるには、(1)提案された研究課題が明確な問題提起を持ち、(2)その問題検討のために具体的かつ綿密な実験操作が計画され、(3)計画した研究の実行可能性(feasibility)の保証が要求される。提案された研究を実施すれば、何を知ることができるのかが予測できなかったり、具体的に何を検討するのかが不明であったり、提案された実験が果たして可能なのかの保証がなければ、審査員が推薦を躊躇するのは当然である。
研究申請者自身には、研究提案の上記の3点が明かであっても、それが審査員に明確に伝達されなければ、内容は正当に評価されない。研究提案に関しては申請者だけが詳細を熟知しているのだから、その意義と重要性を審査員に容易に理解させる記載が重要である。審査員の希望は研究提案者が何を意図しているのかを正確に理解することである。書類審査では、この両者の意志の疎通のチャンスは一方通行の1回かぎりであるが、この支障は面接によって補われる。面接の結果、予測と一致することもあるが、全く予測と反することも経験する。いずれにしても、面接の機会の確立は高くないから、申請書において審査員との意志の疎通をはかり、提案研究の意図を正確に審査員に伝達する努力を望みたい。
This page updated on September 25, 1998
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