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「新しい局面を迎えたゲノム研究」
今回の「ゲノムの構造と機能」に関する研究提案の応募は108件寄せられた。応募要項に記しておいたようにゲノムの構造と機能をより広範かつ柔軟に考え、従来の大型プロジェクトとしてのゲノム研究を補完するもの、又はある特定遺伝子のクローニングなどについての提案は基本的には採択しないことにした。7人のアドバイザーの書面での一次審査、面接による二次審査を経て今回5件の研究提案の採択が決定された。
ゲノム研究は現在、新しい局面を迎えており、遺伝子発現の場としてのゲノムは当然のことながら、染色体の基本構造としてのゲノム、ゲノムのもつダイナミックな挙動など従来個々の遺伝子の解析では不可能であった新しい領域が生まれつつある。一方、インプリンティング、アポトーシスなど重要な生命現象においてのゲノムの構造的関与が示唆されてきている。更に、最近急速に進みつつあるcDNAの解析、ターゲッティングなど実験によるゲノム解析の結果明らかになった遺伝子機能の推定などの重要分野も採択の考慮の対象にした。
本来ならば少なくとももう2件程度の採択が望まれたが、予算の都合上、上述のように本年は5件の採択にとどまった。今回採択出来なかった提案の中にも病因遺伝子の同定への新しいアプローチ、ゲノム解析の新しいテクノロジーの開発、従来解析が不十分であった他種生物のゲノム解析についての優れた提案があったが、残念ながら本年は見送らざるを得なかった。本研究領域への応募は来年、再来年にわたって3年引き続き行われるので、時代を先取りする独創的なゲノム研究に関する提案が来年以降も引き続き寄せられることを期待したい。
This page updated on September 25, 1998
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