Co基合金の連続鋳造技術


(背景)
偏析やスなどの内部欠陥が無く、高品質Co基合金の細線や異形断面鋳塊が望まれていた

 一般にステライト系合金と総称されているCo基合金は高温下でも硬く、耐摩耗性および耐酸化性に優れているため、カッター類、金属加工など高温下で使用されるレールやエンジンバルブの表面を被覆するなどに利用されているが、その反面、塑性加工などが困難な難加工性材料としても知られている。このCo基合金は、溶接材として使用する場合、ロッドの状態(溶接棒)でアーク熱源などにて母材に肉盛溶接し、研削などにより仕上加工されているが、微細部分の溶接や自動供給溶接、研削加工などの現場から、直径3mm程度の細線や使用形状に合わせた断面形状をもつ棒材への要求があった。これに対し、現在のCo基合金の連続鋳造法は冷却しておいた鋳型に、溶湯を供給しながら鋳型内で凝固殻を形成させるものであるが、この方法では鋳壁から内側に向かって結晶が成長するため、湯道が狭まり溶湯の流動阻害が生じてスが発生したり、鋳壁と鋳塊との摩擦が存在することから、細線や任意形状への鋳造が困難であった。また、その鋳塊内部には偏析やスなどの内部欠陥もあり、品質の面からも問題があった(図1-1)。

(内容)
溶湯を鋳型出口において、水を用いて冷却することにより、高品質Co基合金の連続鋳造が実現できた

 本新技術では、鋳型を合金の凝固温度以上に加熱保持し、Co基合金の溶湯を鋳型出口において水を用いて冷却することにより、Co基合金を連続して鋳造するものである(図1-2)。本鋳造方法では、加熱鋳型からの熱伝導により、鋳型内壁面においては溶湯凝固はなく、凝固は鋳型出口外側で、かつ、中心部より進行する。従って、鋳型と鋳塊との摩擦がなく、かつ、溶湯の流動阻害などが生じにくい。このため、直径3mm程度の細線や板状棒材、三角棒材など異形断面鋳塊の鋳造が可能となる。また、偏析やスなどの鋳造欠陥が極めて少ない、一方向組織からなる連続鋳造ができる。
 本新技術における加熱鋳型は、従来の鋳型の概念と異なり、やがて鋳塊として凝固すべき溶湯の形状を整えるための型としての役割を果たす。本新技術によるCo基合金の連続鋳造装置は、以下の各部から構成される。(1)溶融部:誘導加熱により金属を溶融・合金化させ、ブレイクアウト(溶湯の外部への流出)を防止するため溶湯圧を調整する。(2)給湯部:抵抗加熱により溶湯を保温・供給する。(3)加熱鋳型部:誘導加熱により鋳型を合金の凝固温度以上に保持し、鋳塊の形状を整える。(4)冷却部:溶湯を凝固させる。ガスシールドなど蒸気発生による鋳塊の酸化やダメージを防止する構造とする。(5)鋳塊搬送部:鋳塊を引き出し、鋳造速度をコントロールする。
 本新技術では、鋳塊の成長速度(=凝固速度)と鋳塊の引き出し速度との調和がポイントとなる。

(効果)
難加工性材料であるCo基合金の高品質溶接材料や耐熱・耐摩耗性機械部品に広く利用されることが期待

(1)
難加工性材料であるCo基合金を直径3mm程度の細線や板状棒材、三角棒材など異形断面鋳塊に鋳造することができる。
(2)
鋳造欠陥が極めて少ないなど高品質である。
(3)
鋳塊の表面は平滑であり、鋳造で高精度な製品または半製品として使用できる。
(4)
得られるCo基合金細線は、組織が伸線方向と並行であり、内部にスなど欠陥が存在しないことから、従来極めて困難であった直径2mm以下の伸線加工も容易である、などの特徴をもつため高品質溶接材料、高温下で使用されるレールなどの耐熱・耐摩耗性機械部品に広く利用されることが期待される。


This page updated on August 3, 1998

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