研究主題「局在フォトン」の研究構想(概要)


 光を利用した技術の進歩は速く、その利用分野は広範にわたっており、現代社会の基幹技術の一つとなっている。特に、量子光学、光エレクトロニクスの進展は著しく、レーザの発明による光の高パワー化などが実現し、さらにスクイズド光(振幅揺らぎなどの雑音が制御された光)を生み出した。最近、これら通常の伝搬する光ばかりでなく、伝搬しない特別な光が注目されて来ている。それは、ガラス等の物質を透過する光が全反射される際、一部反射されないで物質からにじみ出す光であり、この光の広がりは、物質の極めて近傍(10万分の1ミリ位)にとどまり伝搬しない。その性質を利用すると、先端をナノメータ以下まで尖らせた光ファイバーに光を入射することにより、先端部の空間にナノメータ以下の領域に局在した光(局在フォトン)を発生させることが出来るようになってきた。しかし、この物質からにじみ出す光については、理論は未成熟であり、物質との相互作用等についての実験的研究もほとんど着手されていないのが現状である。
 本研究は、局在する光の本質を理解するために、光の波長よりもずっと小さなサイズの空間にエネルギーが集中している光を理論的、実験的に探求し、さらに、この発生する光を利用する技術の探索を目指すものである。このような光は、極微小な物質の表面に存在し、伝搬しない表面波である。従って、極微小性以外にもその特性は通常の伝搬光とは著しく異なり、光が単独で存在せず、物質と強く相互作用しているため、研究は光の本質に関する新たな領域に切り込むことになる。また、微小物質の種類と振動数で変化する特異的な共鳴現象の検討及びその応用として、共鳴現象を利用した原子操作法による新材料の創製やこの光を用いた超微細加工技術、超小型の光素子への応用の可能性を探求する。
 この研究によって、未開拓であった局在する光の理論体系の構築、微弱な光を計測する光学装置、電子・光デバイスなどの高密度化や高速・大容量情報処理システムの実現への手がかりが得られることが期待される。

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This page updated on August 3, 1998

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