液晶ディスプレイをカラー表示するために必要なカラーフィルタは、赤緑青3原色の微細な(数十μm)カラー薄膜を面状に配したものであり、色材として有機顔料を用いていることから、微妙な色合いを出すことができ、鮮明で透明性が大きいと言う特徴がある。
従来、一般にこのカラーフィルタの製造に用いられている顔料を使う方法としては、顔料分散法、印刷法、電着法などが良く知られている。これらは、フォトリソグラフィの工程を持つ場合が多いことから精度が良く、有機系カラー薄膜の形成も容易であるが、薄膜の平坦性や密着性が悪く、顔料を樹脂と混合するため着色層が厚くなる、透過率などの光学特性が低下するなどの基本性能のほか、歩留りが悪く、高コストであるなどの製造技術上の問題もある。
一方、高周波プラズマ法は、形成した薄膜の平坦性や密着性などに優れているため、半導体や磁性材料などの無機物の薄膜形成に応用されている。従って、この高周波プラズマ法を有機顔料のカラー薄膜形成に適用することができれば、従来法では困難であった有機系カラー薄膜の平坦性や密着性の向上などが図れるものと期待されている。しかし、有機顔料は耐熱性が悪く昇華温度などに幅があるため、特性の異なる複数の材料を、それぞれの特性を失うことなく同一の基板上に均一に成膜させることは困難であった。
本新技術は、高周波プラズマ法により有機系カラー薄膜を製造するもので、原料に応じて高周波電力、基板温度などの各種パラメータを独立に最適制御することにより、従来困難であった高周波プラズマ法による有機系カラー薄膜を形成するものである。
具体的には、10-4Torr程度の高真空容器内において、不活性ガスもしくは有機ガスを高周波励起によりプラズマ化し、有機顔料を昇華させる。プラズマ中に昇華した有機顔料を通過させると、有機顔料がプラズマ化したガスに衝突して顔料粒子表面が活性化し、基板に蒸着した際に基板−有機顔料間や有機顔料同士で相互作用が働くことにより、密着性が向上し低温下での優れた薄膜の形成を可能としている。
本新技術により製造された有機系カラー薄膜は、平坦性、密着性、膜硬度に優れ、樹脂と顔料を混合する湿式法に比べ層が薄くても均一かつ良好な光学特性が得られる。さらに、オーバーコート膜を同一工程で成膜する事により耐熱、耐薬品性に優れたものが得られる。その工程は、以下のとおりである。
本新技術は、
等の特徴を有していることから、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの製造に利用されると共に、低温成膜が要求される有機EL等の有機薄膜の製造にも利用されることが期待される。
This page updated on June 19, 1998
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