戦略的基礎研究推進制度における戦略目標について


平成10年4月
科 学 技 術 庁

 我が国は、世界全体のグローバル化、ボーダーレス化と、それらに伴う国際的な経済競争の激化、さらには史上類を見ない速度で進行している人口の高齢化等により、産業の空洞化、社会の活力の喪失、生活水準の低下等の危機的事態に直面することになるのではないかと強く懸念されている。これらの諸問題に対処していくためには、それらの解決の鍵をにぎる科学技術の推進が極めて重要である。また、その成果が人類の共有し得る知的資産としてそれ自体価値を有し、人類に対し貢献し得る基礎研究への期待も非常に大きくなっている。

 このため、様々な科学技術に革新的発展をもたらし、新技術・新産業の創出を目指すとともに、人類全体に共通な地球的規模の問題に取り組んでいくことが極めて重要であり、このような目的を持ち、新たな知的資産の形成も念頭においた基礎研究を、重点的かつ戦略的に進めていくことが必要である。

 これらの状況に鑑み、国として重要であり、かつ緊急に取り組むべき課題を踏まえ、平成10年度の戦略的基礎研究推進制度においては、従来の戦略目標に加え、新たに戦略目標を以下のように設定する。なお、平成9年度設定された戦略目標「脳機能の解明」及び「環境にやさしい社会の実現」については、平成10年度も引き続き課題の募集・採択を行うとともに、戦略目標「大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦」については、採択された課題の研究を引き続き推進することとする。

 本制度の推進に当たっては、平成10年度から、従来の公的研究機関に所属する研究者に加え、革新技術の創出に鋭敏な民間企業の研究者も研究代表者として応募することを認めるものとする。また、異なる発想・価値の相互作用の中から研究活動の活性がより生まれる可能性が高いとされていることを踏まえて、異なるセクターにまたがる研究チームを構成している提案課題の採択を優先するものとする。なお、出資金を活用した他省庁基礎研究推進制度との連携・調整にも配慮するものとする。

戦略目標:分子レベルの新機能発現を通じた技術革新

 我が国が、長引く景気の停滞や国内産業の空洞化を克服し、活力ある社会を維持・発展させていくためには、既存の概念にとらわれず、新たな分野・領域を開拓し、独創的・革新的な技術の創生を通じて、新技術・新産業を創出していかなければならない。また、新しい革新技術の波が分子レベルでの新機能発現により誕生していることを考慮し、重点的にこの分野を推進し、社会の活性化を図っていくことが重要である。
 このため、分子レベルでの機能発現の視点から、世界レベルの大きな成果が期待できる新機能デバイス等の開発、新たな物性や機能を有する新材料の開発、ゲノムの構造・機能の解明や遺伝子機能の特定・制御技術の開発を目指す研究等を進めることが不可欠である。
 したがって、戦略目標を、知的資産を拡大するとともに、新技術・新産業の創出を目指す「分子レベルの新機能発現を通じた技術革新」とする。

戦略目標:資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築

 京都で開催されたCOP3の結果等を踏まえ、我が国としても、今後人類が、真に豊かで快適な生活を実現し、維持していくためには、人類の存亡に関わる地球温暖化等による環境の破壊を来すことなく、種々の人間活動の生態系への影響を極力低減し、持続可能な発展を行うことが重要である。
 このためには、資源を循環させるシステムやエネルギー消費を極力抑えた効率的利用システムの構築を目指すこととし、地球温暖化ガスの新しい抑制技術の開発、環境を配慮した製品設計技術の開発、生物機能を活用した環境関連技術等の開発が期待される。また、このような新しい環境関連技術の中から次世代の革新技術が創出され、環境ビジネスが形成されていき、それらを通じて新しいシステムの構築を図っていくことが必要である。
 したがって、戦略目標を、持続可能な社会発展を目指す「資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築」とする。


This page updated on June 19, 1998

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