高速汚泥コンポスト化システム


(背景)
短期間で高品質のコンポストができる装置への要求

 現在我が国では、毎年4億トン前後の産業廃棄物が排出されているが、その半分近くを占めているのが、下水処理汚泥を中心とする汚泥である。これら汚泥の処理・処分は、現在、脱水してからの埋立、或いは脱水、乾燥、焼却してからの埋立が主流であるが、処分場の不足や環境汚染等の問題から、汚泥の有効利用が強く求められている。下水汚泥などの有機系廃棄物の再資源化技術としては、微生物によるコンポスト(堆肥)化が、環境的にもエネルギー的にも最も有効であると考えられており、既に様々なコンポスト化装置も建設されている。しかしながら、これらの装置を用いた場合でも、コンポスト化には通常1〜3ヶ月以上の期間が必要となるため、敷地面積や装置容量が大きくなり、建設費の増大を招いている。また、汚泥の脱水ケーキをコンポスト化する場合、そのままでは水分含量が大きく、微生物の働きが悪いため、おがくずなどの水分調整材を混ぜるが、これらの分解のためにコンポスト化期間が長くなったり、コンポスト中に未消化のまま残り、品質の低下を招いている。低品質のコンポストは農家に受け入れられにくく、このようなコンポストがたまっていくという問題も引き起こしている。このため短期間で高品質のコンポストができる装置が求められている。

(内容)
水分調整材不要で、汚泥から短期間で高品質のコンポストを製造するシステム

 本新技術は、下水汚泥などの有機系廃棄物を、8日間程度のごく短期間でコンポスト化する高速コンポスト化システムに関するものである。
 本システムでは、処理する汚泥とほぼ等量のコンポストを混ぜて、水分調整や通気性の改善、発酵の促進を図るとともに、コンポスト中におがくずなどが残ることによる品質の低下を避けることができる。また、汚泥とコンポストの混合時に、畑の土のような団粒構造を形成させることで、非常に通気性の良い状況とした上で、発酵槽下部からの通気と、上部からの吸引を同時に行うことにより、切り返し等の撹拌操作なしに、極めて好気的な条件で発酵を行うことができる。これにより、コンポスト化期間を短縮できるとともに、最高90℃程度の高温発酵を行え、病原菌や寄生虫、雑草種子を死滅させることができる。また、発酵槽から吸引した空気を、通気用の空気として発酵槽に還流することで、コンポストによる吸着と微生物による分解で脱臭が行え、発酵槽以外に脱臭設備を必要としない。このように、本システムは、簡易で安価な施設で、ごく短期間に、衛生的で高品質のコンポストを汚泥から作ることができる。

(効果)
下水汚泥等のコンポスト化と、コンポストの有機栽培農業等への利用

本新技術による高速汚泥コンポスト化システムは、

1.
純好気性高温代謝型の発酵により、必要滞留日数を短縮できる。
2.
切り返しなどの撹拌機構や、脱臭設備を必要としない。
3.
病原菌や寄生虫卵、雑草種子を死滅させるのに十分な高温発酵と、水分調整材などを必要としないことにより、衛生的で高品質なコンポストを製造できる。

などの特徴を持つため、

1.
下水汚泥をはじめとする有機系廃棄物のコンポスト化。
2.
コンポストの有機栽培農業への利用や、土壌改良材としての利用。

などに広く利用されることが期待される。


This page updated on April 20, 1998

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