携帯用血糖測定器は、糖尿病患者が血糖を自己管理するための指標とする血糖値を患者自身が簡便に測定するための医療機器であり、医療機関においても、簡易血糖測定器として用いられている。従来の携帯用血糖測定器において最も普及している測定方式は、血糖(血液中のグルコース)に対するグルコース酸化酵素の反応を電気化学的に定量し、血糖値に換算するグルコースセンサー法である。この方式では、血液中のビタミンCをはじめとする還元性物質等の影響を受け、誤差を生ずるとともに、患者が糖尿病性の昏睡に陥る危険性の高い40mg/dl以下の低血糖領域及び600mg/dl以上の高血糖領域では、正確な血糖測定を行うことが困難である。このため、医療機関での使用や、患者が日常測定している血糖値を医療機関で役立てる等の観点から、改善が求められている。また、センサー部分は使い捨てであるが、その交換部分が小さく、神経症や網膜症等の合併症を引き起こしている患者にとっては、センサー交換が負担となっており、この点についても改善が望まれている。
本新技術は、グルコースセンサー法による携帯用血糖測定器において、センサーの電極電位を走査する方法により、広い血糖領域で、測定の信頼性向上を図るとともに、複数のセンサーを1枚のディスクに集積した携帯用血糖測定器に関するものである。
センサーの電極電位を走査する方法は、ビタミンC等の影響を受けにくいだけでなく、出力信号の解析により、誤差を補正できるため、測定精度や再現性を向上することができる。さらにこの方法は、従来より広い血糖領域において、高感度で安定した測定を行える。本新技術により測定した血糖値は、医療機関で用いられる高性能の自動分析装置並の精度を有しているため、患者が日常測定してる血糖値を医療機関で役立てることができるとともに、医療機関における簡易測定の信頼性を向上することができる。
また、複数(10個程度)のセンサーを1枚のディスクに集積することで、一度ディスクを差し替えると、10回程度の測定はワンタッチでセンサー交換を行うことができる。さらに、交換部分であるセンサー集積ディスクは、センサーを集積したことにより寸法が大きくなるため、測定器本体とディスクを差し替える際の操作性を向上でき、神経症や網膜症で手先や目の不自由な患者の負担を軽減することができる。
本新技術による携帯用血糖測定器は、
などの特徴を持つため、
などに広く利用されることが期待される。
This page updated on April 20, 1998
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