近年、情報化社会の進展に伴いパーソナルコンピュータなどの情報処理装置の普及が進んでいる。パーソナルコンピュータなどに使用される表示装置としては、ブラウン管やノートブック型パソコンなどに使用される液晶ディスプレイがある。液晶ディスプレイは、装置の薄型・軽量化、省電力化に対応しやすいなどの利点があるため、今後も、パソコンの表示部など、各種機器の表示部分に多用されることが予想される。
液晶ディスプレイは、自らは発光せず電圧の印加の有無により外部からの光の透過・遮断を制御し、明暗や色を表示するデバイスであり、用途に応じて、液晶の背面にバックライトと呼ばれる発光装置が取り付けられている。従来のバックライトは、冷陰極管などの蛍光管を光源として液晶の側面や直下に配置し、ここで発生させた白色光を導光板、反射ドット、拡散板などにより液晶背面全体に均一に分散、照射するものである。しかし、蛍光管を光源とするバックライトは、薄型化や軽量化に限界があるため、今後の液晶ディスプレイのさらなる薄型、軽量化に対応できるバックライトの実用化が望まれている。
薄型のバックライトに適する素子として、薄型の面状発光素子で、直流の低電圧駆動、高輝度発光が期待できる有機エレクトロルミネッセント(EL)素子が注目されている。有機EL素子の基本構造は、有機化合物の発光層を電極で挟んだものであり、例えば、ガラス基板上にインジウム−スズ酸化物(ITO)透明電極(陽極)、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、背面電極(陰極)を積層したものなどがある。有機EL素子の発光は、ITO透明電極から注入されたホールと背面電極から注入された電子が発光層で再結合し、発光中心である蛍光色素などを励起することにより起こる。しかし、従来の有機EL素子は、電極から有機層への電子やホールの注入においてエネルギー障壁が存在するため駆動電圧を下げられない、白色に発光する色素が存在しないので白色光が得られないなどの問題があり、白色発光するバックライト用有機EL素子は実用化されていない。
本新技術は、赤、緑、青色に発色する蛍光色素を共蒸着した白色発光層、陰極からの電子注入効率を高める電子注入層及び陽極からのホール注入効率を高めるホール注入層を設けた構造を持つ白色発光有機EL素子を用いたバックライトに関するものである。
本新技術に係る研究の成果として、これまでに、研究者らは、電子輸送性発光層中に赤、緑、青色に発光する3種類の蛍光色素を均一に分散させることにより白色発光が可能な有機EL素子を試作した。さらに、有機EL素子の電極とこの電極から電子やホールが注入される有機化合物層との界面で起こる反応が有機化合物の酸化、還元反応であることに着目し、陰極側の有機化合物層の中に還元作用持つLiなどの電子供与性の金属をドーピングした新規な電子注入層を形成し、一方、陽極側の有機化合物層の中に酸化作用を持つ電子受容性の化合物をドーピングした新規なホール注入層を形成することにより、電子やホールを電極から注入しやすくし、これにより素子の駆動電圧を下げられることを明らかにした。
これらの研究成果を踏まえた本新技術による有機ELバックライトは、ガラス基板上に順にITO透明電極、ホール注入層、ホール輸送層、白色発光層、電子注入層、アルミニウム背面電極を積層した構造を持つ。その詳細は以下の通りである(図1)。
本新技術による有機ELバックライトは、
などの特徴を持つため、液晶ディスプレイ用バックライト、照明用光源などへの利用が期待される。
This page updated on April 20, 1998
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