炭素材料は、ダイヤモンドや黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、活性炭などの古典的なものから、炭素繊維やフラーレン、カーボンナノチューブ、ガラス状カーボンなど、いわゆるニューカーボンと呼ばれるものまで、様々な材料が開発されている。
炭素材料の特性は、構造によって大きく異なる。例えば、ダイヤモンドでは正四面体の中心と各頂点に炭素原子が配列した構造の繰り返しであり、黒鉛では正六角形の各頂点に炭素原子が配列した構造の繰り返しから成る平面構造が幾重にも重なっている。また、炭素原子がサッカーボール状に配列した構造がフラーレンである。このような材料特有の構造が、その特性に大きく寄与している。また、実際の利用に際しては、材料の形態が大きく影響する。古典的な炭素材料の形態は塊状や粉末状であったが、繊維状の形態を持たせた炭素繊維では、それまでにない広範な用途が広がっている。
このようなことから、これまでにない構造や形態を有する炭素材料の研究開発が、現在でも活発に進められている。
本新技術は、マイクロメートルオーダーのコイル径を有する既存材料にはない形態のアモルファス炭素材料(カーボンマイクロコイル)を製造する技術に関するものである(図1)。
本研究者らは、CVD法により、炭化水素の熱分解と金属超微粒子の触媒効果を利用して、気相から直接に炭素繊維を生成させる気相成長炭素繊維(VGCF vapor grown carbon fibers)の製造において、条件を厳密に制御すると、炭素繊維がコイル状に成長することを見出した。
炭素繊維がコイル状に成長するのは、唯一、アセチレンを原料に用いた場合のみである。アセチレンにチオフェン等の不純物ガスなどを加えたものを原料ガスとして、Ni等の金属触媒微粒子を塗布した基板に吹きつけ、750℃前後で熱分解する。すると、触媒粒子を成長点に、2方向に炭素繊維がカールしながら成長し、やがて二重らせん状に絡み合いながらコイル状に成長する。
CVD法により作られる従来のVGCFが、繊維軸に沿って黒鉛構造が非常に良く発達しているのに対し、カーボンマイクロコイルはアモルファス構造であり、表面積も格段に大きい。また、今後利用が進むと考えられているギガヘルツ帯の電磁波の吸収特性が優れていることが判っている。この他にも、コイル状という既存の炭素材料にない特異的形状に由来する特性を有すると考えられ、それらの特性を活かした用途に利用されることが期待される。
本新技術によるカーボンマイクロコイルは、
などの特徴を持つため、
などに広く利用されることが期待される。
This page updated on April 20, 1998
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