科学技術振興事業団報 第46号

平成10年2月19日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「触媒CVDによるシリコン成膜装置」を委託開発課題に選定ならびに開発企業を選定

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、北陸先端科学技術大学院大学教授 松村英樹氏らの研究成果である「触媒CVDによるシリコン成膜装置」を委託開発課題として選定するとともに開発企業を選定した。
 液晶ディスプレイを駆動するには薄膜トランジスタが用いられているが、薄膜トランジスタを形成するには、300℃前後の低温で薄膜を形成する技術が重要となっている。従来、薄膜トランジスタには、低温成膜の非晶質シリコン膜が用いられ、原料ガスをプラズマ状態にして分解してシリコンを堆積させるプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition=化学的気相成長)が用いられている。しかし、最近、開口率の大きな画面の構成や制御回路の構成のために多結晶シリコン膜による薄膜トランジスタが要求されてきている。多結晶シリコン膜を低温で形成するには、プラズマCVDで非晶質シリコン膜を形成してから、熱処理でシリコン膜中の水素を追い出し、さらにレーザを走査してシリコンを溶融して結晶化させる工程をとっており、大面積化、生産性の向上は困難であった。このため、多結晶シリコン膜などを生産性よく、低温の大面積基板上に形成できる技術が望まれていた。
 本新技術は、本研究者らによる触媒CVDと呼ばれる化学的気相成長を用いるもので、原料ガスを加熱した触媒体に接触させて反応種に分解し、低温の基板にシリコン膜を形成する装置に関するものである。本装置においては、タングステン線などの触媒体を備えた真空容器内で、触媒体に直接電流を流して1700℃程度に加熱し、この触媒体越しにシランガスなどの原料ガスを基板に向けて吹き付けることによってシリコン成膜が行われる。 本装置により、結晶性の良い多結晶シリコン膜や水素含有量の少ない良質な非晶質シリコン膜を大型ガラス基板へ直接形成できるので、液晶ディスプレイなどの製造における多結晶シリコン成膜への利用が期待される。また本新技術による多結晶シリコン膜や低水素含有量の非晶質シリコン膜は、さらなる大面積化や生産性などの向上により太陽電池への応用可能性も期待される。
 本技術の開発は、アネルバ株式会社(代表取締役社長 西平俊二、本社 東京都府中市四谷5-8-1、資本金18億円、電話0423-34-0240)に委託し、開発期間は3年間、委託開発費は約2億円を予定している。今後、科学技術庁長官の認可を受けた後、新技術の開発を実施する。

触媒CVDによるシリコン成膜装置(背景・内容・効果)

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