一分子過程プロジェクトの概要


 本共同研究は当事業団の国際共同研究事業として行うもので、研究実施場所はナポリ大学など2カ所を予定している。研究期間は平成10年1月から5年間の予定で、生体における情報変換分子システムの巧妙な動作アルゴリズムの解明などについて研究を進める。
 蛋白質、DNAなどの生体高分子は自ら集合し、お互いにダイナミックに相互作用して情報変換、エネルギー変換など生命活動に重要な働きを担っている。このような生物分子システムは、人工機械では実現できないような高い自立性、柔軟性を示し、非常に効率よく働いているが、その仕組みはよくわかっていない。
 本研究では、細胞情報や遺伝情報の変換を担っている情報変換分子システムに注目し、計測と理論両面から生物分子システムのメカニズムの解明へアプローチする。計測では、生物分子システムの中で生体高分子1個を直接に見て操作する技術などを開発し、生物分子システムの中で働く個々の生体高分子の状態を実時間実空間で画像化する。ここから得られたデータから実体に沿った理論を展開し、生体における情報変換分子システムの巧妙な動作アルゴリズムの解明を目指す。
 この研究により、生体分子システムや細胞の研究に、時間・空間の軸が導入され、劇に例えれば、"役者"を中心に研究してきた従来の分子生物学・構造学的手法に、それら個々の"演技"を実際に見る実験法(物理工学的計測法)と"劇"の内容を理論的に理解する手法(情報システム論)が加わることになり、生命科学の基本をなす生体高分子や細胞の研究にブレークスルーが期待される。


This page updated on April 20, 1998

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