呼吸筋機能測定装置


(背景)
死腔負荷の増加に基づく換気量の増加により呼吸筋の能力を他の運動筋から分離測定でき、呼吸筋のみの機能を的確に診断ができる装置が望まれていた

 近年、肺を拡張・収縮させる横隔膜や肋間筋などの呼吸筋の運動効率の低下も呼吸困難の原因の一つであることが明らかとなった。
 呼吸筋の運動効率の低下の原因として、肺の気道抵抗の上昇や弾性低下により、呼吸筋に常時大きな負荷が加わり、呼吸筋が疲労することも重要な因子であると考えられている。このため、呼吸困難に対する適切な治療を行うには、呼吸筋の運動効率の変化を測定し、呼吸筋の機能を診断することが必要となっている。
 現在、呼吸筋の機能測定に関しては、圧力計を用いて、最大努力呼吸時の口腔内圧を測定し、これから呼吸筋力を推定している。この測定法は、被検者の努力に依存することや呼吸負荷の変化に対する呼吸筋の能力を測定できないなどの問題があり、呼吸筋の機能を的確に診断することは困難であった。このため、呼吸負荷の変化に対する呼吸筋の能力を測定でき、呼吸筋の機能を的確に診断ができる装置が望まれていた。

(内容)
被検者の換気量を連続的に増加させ、呼吸筋の酸素消費量の変化を算出し呼吸筋の機能異常による運動効率の変化を測定

 本新技術は、被検者の口腔に接続した蛇腹状チューブを一定速度で伸長させて呼吸回路の内容積を増加させることにより呼吸死腔量を増加させ、よって被検者の換気量を連続的に増加させ、呼吸筋の酸素消費量の増加の程度を算出することにより、呼吸筋の機能異常による運動効率の変化を測定する装置に関するものである(写真)。  本装置は、(1)呼吸回路、(2)循環回路、(3)気量測定部、(4)データ解析部で構成されるが、各部の概要は以下の通りである()。

 (1)呼吸回路

 呼吸回路は、その中間を回転ドラムに巻き付けた状態になっている蛇腹状チューブであり、その一端をマウスピースに接続し、他端を循環回路に接続している。
 ドラムを回転させることにより蛇腹状チューブを伸長させ、内容積を連続的に増加させることにより呼吸筋に対する負荷を増加させる機能を持っている。
 (2)循環回路
 循環回路は呼吸回路から誘導された被検者の呼気中に含まれる炭酸ガスを吸着剤(ソーダライム)により吸着・除去する機能を持つ。
 (3)気量測定部
 気量測定部は、循環回路に接続され、炭酸ガスの吸着除去および呼吸回路の内容積変化に伴う気量の変化を1呼吸毎に測定する機能を持つ。
 (4)データ解析部
 データ解析部は、CPU、ブラウン管などで構成され、気量測定部のデータから換気量の増加に対する呼吸筋の酸素消費量の変化を算出し、結果を表示、記録する機能を持つ。

(効果)
呼吸筋の機能異常の診断や治療効果判定を行うための検査・診断装置として利用が期待される

 本装置は、死腔容積を連続的に増加したときの呼吸筋の酸素消費量測定を行うほか、呼吸する環境(炭酸ガス濃度や酸素濃度、呼吸回路の通気抵抗など)を任意に設定できる機構を併せ持っている。
 このため、本装置は、呼吸筋の機能異常の診断とその治療効果の判定に有効であり、また呼吸困難感が呼吸筋の酸素消費量と相関することから呼吸困難度の客観的指標が得られるほか、スポーツ医学や高齢者医療などの研究分野で広い利用が期待できる。

(注)この発表についての問い合わせは以下のとおりです。
    科学技術振興事業団 開発業務部管理課長 内野裕雄[電話(03)5214-8996]
              管理課       久保 亮
    チェスト株式会社  主任研究員     菰田正治[電話(03)3815-4321]


This page updated on April 20, 1998

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