本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。
レーザ加工は、加工条件に対する制約が少ないなどの利点から、材料の切断や除去、溶接、アニール等に利用されています。現在はレーザ加工用光源として、CO2レーザやYAGレーザ等が利用されています。これらの光源は高い光出力が得られる反面、投入するエネルギーに対し得られる光出力は小さく、エネルギー変換効率がCO2レーザは20%以下、YAGレーザは20%程度が現状です。このため、装置の大型化や強力な冷却機構が必須で、加工コストが高い等の難点を有しています。 一方、半導体レーザ(LD)は、素子内に生じる電荷の再結合による発光をそのままレーザ光として利用するため、エネルギー変換効率が高く50%を越えるものもあります。しかし、大出力のレーザ発振に必要な広い光導波路構造ではレーザ光の発散が大きくなり、集光が困難となる問題がありました。また、出力を上げると光損傷等による素子の破壊、寿命特性の低下が生じることから高出力化が困難でした。このため、小型で高い変換効率を持つ半導体レーザの特長を活かした新規な高出力レーザ光源が待望されていました。
本開発で使用するLDはGaAsを基板とする波長900nm帯のものです。LDの構造を改良することにより、光損傷に強く高出力までビームの発散を抑えることが可能となりました。これにより、レーザ光を容易にレンズで集光でき、高いエネルギー密度が得られます。さらに、このLDを集積回路と同様に露光、薄膜形成、エッチング等により基板上に多数作り込みます(LDアレイ)。アレイから出た個々のレーザ光は、微小なレンズの集合体であるマイクロレンズアレイによりあたかも単一光源から得られたように一本化され、加工等に使用されます。(図1) このLDアレイから得られる光を集光することで、出力100W未満の光源ながら集光部で従来光源と同等以上のエネルギー密度を達成しました。(図2)
本開発によるLDアレイレーザは、光変換効率が高く、小型で取り扱いが容易であるため、加工装置の大幅な小型化が可能となり、適用部位の拡大が期待されます(図3)。また、従来のLDと比較してビーム品質が良いため小さな部分に集光可能であることから、微細レーザマーキングなどあらたな光加工分野の創出も期待されます。 |