平成15年9月29日 |
埼玉県川口市本町4-1-8 科学技術振興事業団 電話(048)226-5606(総務部広報室) http://www.jst.go.jp/ |
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<背景> | ||||||||
電子は自転していて、電子スピンと呼ばれる微小な磁石として振る舞うが、これが強磁性体においてはそれが一方向に揃う結果、磁化が現れる。この自転運動が、電子の重心運動(軌道運動)に影響を及ぼすことが知られている。特に、スピンと軌道の間の相互作用(スピン・軌道相互作用(注7))により、電場を印加した時にそれと垂直な方向に電子の運動方向が曲げられることが知られていた。これを異常ホール効果と呼んでいる。このように、磁気的に電気的な性質をコントロールできれば、大きな応用への道が開ける。例えば、磁場をスイッチオン・オフすることで電流の方向が変わるような磁気伝導素子を作ることができるが、そのためにはこの効果を大きくする必要があり、そのキーとなる原理の発見が切望されている。今回の成果は、この異常ホール効果が波数空間における磁気単極子という数学的構造で支配されていることを実証したもので、その大きさを決めている要因を絞り込んだことになった。さらに磁気単極子という基礎物理学的にも重要な問題に固体物理学から光を当てることにもなった。 | ||||||||
<成果の内容> | ||||||||
本研究は、金属強磁性体SrRuO3の磁化、電気抵抗、ホール効果、カー回転などの精密な測定を、第一原理に基づく電子状態計算により解析することで、この系の異常ホール効果が波動関数の波数空間における磁気単極子で支配されていることを実証した。今回用いた試料は、フラックス法による超良質単結晶とレーザーデポジション法により作成した薄膜試料であり、特に、酸化物薄膜作成技術の進歩によって単結晶としては得ることができない組成を変化させた試料(Caのドーピング)の作製に成功したことが詳細な実験研究を可能にした。異常ホール効果の測定は極低温・高磁場の条件で行われ、精度の高い測定によって実験と理論との定量的な比較が可能となった。 理論的には、異常ホール効果を表わす横伝導度が、波動関数の位相から作ったゲージ場の積分で表されることになり、その湧き出しまたは吸いこみの点が、磁気単極子に対応する。第一原理計算では、波数空間の精度を従来よりも一桁改良し、さらに内挿法を組み合わせることで従来捉えられなかった波動関数およびゲージ場の詳細な構造を見ることができるようになった。この手法は、膨大な計算量と高度な計算技術が要求されるが、近年のスーパーコンピュータの性能向上と研鑽技術の開発によって実現可能になった。 その結果、以下のようなことが判った。
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<今後の展開> | ||||||||
今後は更に、2次元強磁性金属などのより大きな異常ホール効果、磁気光学効果を示すことが予想される系、さらには量子化したホール効果を示す乱れを含む系の探索を行い、応用に耐える磁気伝導素子、磁気光学素子の実現を目指す。 | ||||||||
<研究領域> | ||||||||
研究領域:創造科学技術推進事業「十倉スピン超構造プロジェクト」(研究期間 平成13 年~平成18年) | ||||||||
<本件問い合わせ先> | ||||||||
朝光 敦(あさみつ あつし) 東京大学 低温センター 助教授 〒113-0032 文京区弥生2-11-16 TEL:03-5841-2860 FAX: 03-5841-2863 長谷川 奈治(はせがわ たいじ) 科学技術振興事業団 戦略的創造事業本部 特別プロジェクト推進室 調査役 〒332-0012 埼玉県川口市本町4-1-8 TEL:048-226-5623 FAX:048-226-5703 | ||||||||
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