本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。

(背景) 大面積で移動度の高いポリシリコン膜を成膜可能な技術が求められています。

 液晶ディスプレイの画素を駆動するためには、シリコン薄膜上に形成した薄膜トランジスタが使用されています。効率が高く高速な薄膜トランジスタを形成するにはシリコン膜自体の電気特性、特に電荷移動度の高いものが求められており、従来のアモルファスシリコン膜に対し、結晶性のよいポリシリコン膜が注目されています。
 従来のポリシリコン膜は、まずプラズマにより原料となるシランガスを分解し、基板にアモルファスシリコン膜を成膜するプロセスと、アモルファスシリコン膜をレーザー等で加熱して結晶化するプロセスの2つが必要でした。プラズマ法は真空中で高周波等によりガスにエネルギーを加えて分解、活性化する方法ですが、大面積にわたって均質なプラズマを形成することは困難です。また、レーザーによる結晶化ではアモルファスシリコン膜全体にレーザーを走査することが必要で生産性向上が難しいといった課題がありました。
 このため、大面積で特性のよい多結晶シリコン膜基板を形成することは困難であり、生産性がよく大面積多結晶シリコン膜を容易に形成できる装置が待望されていました。

(内容) 原料ガスを加熱した触媒金属線で分解することで低温で良質のポリシリコン膜を成膜する装置です。

 本新技術は、原料ガスを加熱した触媒体に吹き付けることで分解することを特長とした成膜装置に関するものです。(原理:図1、装置外観:図2)原料の分解にプラズマを用いないため低温で損傷の少ない膜が得られると同時に、触媒体を基板面積にあわせて配置することで大面積にわたって移動度の高い多結晶シリコン膜を直接成膜することが可能です。
 本開発では、触媒体と基板の位置関係を最適化することで膜厚の均質性を確保し(図3)、さらに、原料ガスであるシラン(SiH4)ガスと水素(H2)ガスの混合比や圧力によりシリコン膜の結晶度、成膜速度を改善しました。また、電荷移動度向上を阻害する膜への酸素混入を成膜室の加熱等により低減し、高移動度のポリシリコン膜を実現しました。

(効果) 液晶や太陽電池の大面積化やコストダウンが期待できます。

 本新技術は、
 (1) 移動度の高い多結晶シリコン膜を低温の大面積基板に直接成膜できる、
 (2) プラズマを用いないため生成中の膜または基板へのイオン衝撃による損傷がない、
 (3) 装置構造が単純で、装置の大きさや形状に対する制限が少ない、
などの特徴を有することから、
 (1) 液晶ディスプレイのスイッチングまたは制御用の薄膜トランジスタの製造におけるシリコン膜の形成プロセス
 (2) その他太陽電池などにおけるシリコン系半導体膜形成
等への利用が期待されます。
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