(資料4)

新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要


○個人型研究(さきがけタイプ)
研究領域 「情報と細胞機能」

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
岩脇 隆夫 奈良先端科学技術大学院大学 遺伝子教育研究センター 非常勤研究員 生理・病態環境下で生じる小胞体ストレスの実態とその応答機構の動物個体レベルでの解明 小胞体内に変性タンパク質が蓄積することは一般に「小胞体ストレス」とよばれています。最近、この小胞体ストレスとヒト疾患との関連が報告され、動物個体レベルでの小胞体ストレス研究が求められています。本研究では小胞体ストレスモニター系を開発・利用して動物個体レベルでの小胞体ストレスの発生機構の解明、新規小胞体ストレス応答分子の探索、および小胞体ストレス関連疾患に対する治療法の開発を目指します。
斎藤 通紀 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター チームリーダー 単一細胞での網羅的遺伝子発現解析によるマウス生殖細胞決定機構の解明 多細胞生物を構成する細胞群の中で、唯一そのゲノムを次世代へ伝達する生殖細胞系列が、どの様に決定され、いかなる分子的特性を獲得するかを理解することは、発生細胞生物学のみならず生殖・再生医学の観点からも重要です。本研究では、生殖細胞が決定される際に伴う遺伝子動態の時間的変化を、単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析により捉えることで、生殖細胞を体細胞と分かつ本質的分子機構を解明することを目指します。
白根 道子 九州大学 生体防御医学研究所 21世紀COE上級研究員 膜輸送分子Protrudinによる神経突起形成機構の解明と神経再生への応用 神経突起の伸長には細胞表面積の増大が必然的に伴うため、突起先端に脂質膜成分を供給する必要があります。しかしこれまで脂質供給による突起伸長の分子機序は不明でした。本研究では、突起への膜輸送に重要な役割を果たす新規タンパク質Protrudinによる神経突起形成機構を解明します。また神経細胞死防御と神経軸索伸展の基礎的分子基盤を明らかにすることにより、それらを統合した神経再生への応用を目指します。
豊田 実 札幌医科大学 医学部 助手 有糸分裂チェックポイント遺伝子CHFRのがん診断・治療への応用 分裂期チェックポイントに関与する遺伝子CHFRがヒト腫瘍において高頻度に異常メチル化により不活化されていることを見いだしています。本研究ではヒト腫瘍における抗がん剤感受性とCHFR遺伝子のメチル化および発現との関連性を検討し、化学療法の適応決定の診断指標として利用することを検討します。さらに、CHFRによる分裂期制御の分子機構を解明し、CHFRを分子標的とした新規抗がん剤の開発を行います。本研究の成果により、オーダーメイドがん治療や新規抗がん剤開発の開発が可能になると考えます。
東山 繁樹 愛媛大学 医学部 教授 膜型増殖因子の持つ細胞増殖のアクセル機能とブレーキ解除機能の分子機構の解明 細胞増殖は増殖因子-受容体シグナルによる増殖アクセル機能と並行して、増殖ブレーキ解除の機構が作動することにより、スムーズな細胞周期の進行がもたらされると考えられます。しかし、このブレーキ解除の分子機構は全くと言っていい程不明です。本研究では単一膜型増殖因子が持つ増殖アクセル機能と増殖ブレーキ解除機能の巧妙な分子機構を明らかにします。この研究から細胞増殖分子機構の新たな概念を創出し、細胞増殖制御の破綻による疾患の新たな治療戦略の確立を目指します。
廣瀬 哲郎 Yale University School of Medicine, HHMI Postdoctral Fellow 核マトリクス結合蛋白質によるRNP再構築と分配機構の解明 核マトリクス(NM)は核内で網状ネットワークを形成し、加工途上の前駆体mRNAと結合しています。NM構成蛋白質はその発現レベルの変化ががん細胞で観察されることから、有用な診断用分子マーカーとして用いられています。本研究では、転写された前駆体RNAが結合パートナーのRNA結合蛋白質を交換しながら成熟化して行く過程の機能解析を通して、NM結合蛋白質SRm160が最終的に成熟RNAだけを核外に移行させ、プロセシングが不完全なRNA及び切り出されたイントロンを核質に留め置く機構の解明を目指します。
三木 裕明 東京大学 医科学研究所 助教授 Wntシグナルによる神経細胞のネットワーク形成制御 Wntシグナルは、形態形成を制御する情報伝達系として発見され、細胞がん化やや幹細胞分化制御などの医学・生物学的に重要な現象に関わることが知られています。神経細胞の形態制御にも影響することから、本研究ではWntシグナルの情報伝達因子Dishevelledの発現から微小管安定化に至る分子メカニズムを追究し、神経細胞の形態制御とそのネットワーク形成におけるWntシグナルの重要性を突き止めることを目指します。
村田 茂穂 (財)東京都臨床医学総合研究所 分子腫瘍学研究部門 常勤流動研究員 ユビキチンと分子シャペロンの連携による細胞機能制御機構の解明 細胞内で異常となったタンパク質は、分子シャペロンの助けにより正常に復帰するか、ユビキチン化された後プロテアソームにより分解されるかの運命をたどり、細胞内への蓄積が防がれています。しかしその選別機構および異常タンパク質のユビキチン化機構は明らかではありません。本研究では、シャペロンとユビキチンシステムの橋渡しをする「品質管理ユビキチンリガーゼ」の同定と作用機構の解明により、神経変性疾患をはじめとした異常タンパク質蓄積に基づく疾患の新たな理解を目指します。
山下 潤 京都大学 再生医科学研究所 助教授 新規試験管内誘導システムによる分化再生研究 細胞分化は、幹細胞や前駆細胞が、特定の機能や形質を持った固有の細胞へと変化する生物の基本的現象であり、ES細胞(胚性幹細胞)は、体中のすべての細胞に分化できる万能の幹細胞と考えられています。ES細胞を用いて構築した新しい試験管内分化誘導システムを応用して、本研究は試験管内だけで細胞分化を再現し、ゲノムワイドなトランスクリプトーム解析、遺伝子機能阻害実験を組み合わせて、その全体像を包括的に把握することにより細胞分化のメカニズムを明らかにするとともに、新しい再生医学の開拓を目指します。

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This page updated on September 18, 2003

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