(参考1)

研究領域の概要、研究総括の募集・選考に当たっての考え方



<チーム型研究(CRESTタイプ)>

○戦略目標「情報通信技術に革新をもたらす量子情報処理の実現に向けた技術基盤の構築」の下の研究領域
「量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出」
研究総括:山本 喜久(スタンフォード大学 応用物理・電気工学科 教授/国立情報学研究所 教授)
研究領域の概要
 本研究領域は、ミクロの世界で観測される量子力学的現象を制御し、記憶、演算などの情報処理を行うシステムへ展開していくための基盤となる新しい技術の創出を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、光・電子・原子・原子核など様々な系を対象として、量子効果に基づく基本的なデバイスや多量子ビット化の技術、量子情報の伝送技術や中継技術、さらにそれらの基盤となる要素研究、例えば量子もつれ現象の制御・観測に関する研究等に関して、シミュレーションを含めた実証的な研究を対象とします。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 本研究領域では、量子情報処理システムのハードウェア構成法に関する実験的および理論的研究を募集します。具体的には、イオントラップ、冷却原子、半導体中の電子スピンもしくは原子核スピン、ジョセフソン接合素子、NMR、線形光学系などを用いた量子コンピュータ技術、また、原子集団や量子テレポーテーションを用いた量子中継技術、単一光子、エンタングル光子対を用いた量子暗号技術などが対象となります。実験グループの選択に当っては、アプローチの新奇性に加えて背景となる実験技術のレベルに、理論グループの選択に当っては、コンセプトの新しさ、有効性に重きを置いて判断します。異なった専門を有する複数のグループの共同提案、また海外の最先端研究グループとの共同提案を歓迎します。

○戦略目標「教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明」の下の研究領域
「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」
研究総括:津本 忠治(大阪大学大学院医学系研究科 教授)
研究領域の概要
 本研究領域は、脳を育み、ヒトの一生を通しての学習を促進するという視点に、社会的な観点も融合した新たな視点から、健康で活力にあふれた脳を発達、成長させ、さらに維持するメカニズムの解明をめざす研究を対象とするものです。
 具体的には、感覚・運動・認知・行動系を含めた学習に関与する脳機能や言語などヒトに特有な高次脳機能の発達メカニズムの解明、及びそれらの臨界期(感受性期)の有無や時期の解明、発達脳における神経回路網可塑性に関する研究、高次脳機能発達における遺伝因子と環境因子の相互作用の解明、健やかな脳機能の保持を目指した研究、精神・神経の障害の機序解明と機能回復方法の研究、社会的な環境の変化が脳機能に及ぼす影響に関する研究等が含まれます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 複雑な脳が1個の受精卵から如何に形成され、高次機能を発揮するようになるのかという疑問に対する近年の研究は、初期の遺伝情報によるメカニズムをかなり明らかにするとともに、そのようにして形成された神経回路網は環境からの入力や脳自身の活動によって精緻化や改変を受けることを明らかにしてきました。さらに、この活動依存的変化のメカニズムは学習のメカニズムと共通することも示唆されています。このような知見は主に実験動物で得られてきましたが、最近、ヒト脳機能の非侵襲的計測技術の発展によって、ヒトの脳機能の発達や入力依存的変化の研究が可能となり、ヒトにおいても発達や学習メカニズムを解明し、その成果を社会に還元することが期待されています。
 本領域は、このような現状認識にたって、ヒトの感覚・運動・認知・行動系を含めた学習に関与する脳機能やヒトに特有な言語などの高次脳機能の発達メカニズムの解明、さらに精神・神経の障害からの機能回復の機序解明を目指しています。また、そのようなメカニズムの基礎にある発達脳における神経回路網可塑性に関する実験動物を使った研究も対象としています。動物実験においては、その知見がヒトに適応可能な研究、特定の手法のみならず種々の手法を多元的に併用した融合的研究、或いはシステム的見地からの研究を歓迎します。また、ユニークな発想に立ちながらも、その成果が世界をリードするような独創的な研究を期待しています。


○戦略目標「がんやウィルス感染症に対して有効な革新的医薬品開発の実現のための糖鎖機能の解明と利用技術の確立」の下の研究領域
「糖鎖の生物機能の解明と利用技術」
研究総括:谷口 直之(大阪大学大学院医学系研究科 教授)
研究領域の概要
 本研究領域は、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカンといった生体分子群の有する糖鎖の新たな生物機能を解明し、その利用技術を探索するための研究を対象とするものです。
 具体的には、脳神経機能、形態形成、分化における糖鎖の役割と制御のメカニズム等の新しい機能の解明や応用の可能性を開拓する研究、糖鎖の改変によるガンの浸潤転移の制御や感染防止、免疫機能制御の手法探索等の診断、治療、予防への応用を指向する研究、あるいは、糖鎖研究に広く用いられることが期待される糖鎖の超微量解析技術、情報伝達のダイナミックな状況を可視化する技術の実現を目指す研究等が含まれます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 ヒトのゲノム構造がほぼ明らかになり、いわゆるポストゲノム研究が21世紀のライフサイエンスの中心的課題のひとつです。そのなかでも糖鎖による修飾反応はタンパク質の50%以上にみられ、タンパク質の機能や構造に大きな影響をあたえることがわかってきました。また、糖鎖はタンパク質や脂質に結合して細胞間の認識や相互作用を変えるため、癌、慢性疾患、感染症、免疫、脳、発生、再生などの異常、老化などに強くかかわっています。本領域では、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカンなどの分子群の中で、特定の糖鎖の生体内標的分子を同定するとともに、糖鎖による標的分子の機能変化を解析し、糖鎖の新たな機能の解明を目指します。そのためには糖鎖超微量分析技術や情報伝達のダイナミックな変化を可視化する技術の開発も重要であり、これらの技術開発の基礎的研究とともにがんその他の生活習慣病、感染症などの医薬品開発につながる基礎的研究などが本研究領域の対象となります。糖鎖生物学の他の領域との融合的な研究も歓迎いたします。とくに欧米追従型の研究ではなく、国際的にリードする独創的な研究の提案を歓迎します。


○戦略目標「個人の遺伝情報に基づく副作用のないテーラーメイド医療実現のためのゲノム情報活用基盤技術の確立」の下の研究領域
「テーラーメイド医療を目指したゲノム情報活用基盤技術」
研究総括:笹月 健彦(国立国際医療センター研究所 所長)
研究領域の概要
 本研究領域は、ゲノム情報を活用した創薬、個々人の体質に合った疾病の予防と治療-テーラーメイド医療-の実現に向けて、新たなゲノム情報解析システムの創製を目指した研究や多因子疾患の解明と創薬をはじめとした革新的な治療・予防法の基盤となる技術等を対象とします。
 具体的には、遺伝力の強い疾病や感染症に対する感受性や抵抗性のゲノム情報からの解明と創薬、我が国に特徴的な生活習慣病の遺伝・環境要因の探索とゲノム情報に基づいた予防法の開発、さらにゲノム情報に基づく薬剤感受性(有効性と副作用)の個人差を迅速かつ確実に解明することを目指す技術に関する研究、およびそれらの基盤となる新たな高効率ゲノム情報(SNPs)解析技術の実現を目指した研究等が含まれます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 20世紀が集団を対象としたマス医療であったのに対し、21世紀はゲノム情報に基づいて個人を対象としたテーラーメイド医療を実現すべき世紀である。これを可能とするためには、各疾病の発現に重要な役割を演ずる遺伝要因と環境要因の相互作用による病因の解明、およびそれに立脚した創薬をはじめとする新しい治療および予防戦略の開発、そしてこれらを含む種々の治療・予防戦略に対する効果発現と副作用発現の個人差の解明などが重要となる。

 本研究領域では、
(1) 遺伝力の強い疾病や感染症などのゲノム解析による疾患遺伝子の同定とそれを基盤とした創薬
(2) 既存のコホート研究にゲノム解析を付加した生活習慣病の遺伝要因と環境要因の同定およびそれを基盤とした疾病予防・治療戦略の開発
(3) 大きな患者集団を対象とした、各種治療に対する反応性(有効性よび副作用)の個人差のゲノム解析
および、これら研究をより効率的に推進するための
(4) ゲノムマーカーのスタンダード整備
(5) 我が国発の斬新で、高速かつ安価なゲノム情報解析システム実用化の基盤技術開発
などを目指す研究を中心とした、創意工夫とチャレンジ精神に富んだ、そして磐石の準備を整えた研究課題を期待したい。


○戦略目標「医療・情報産業における原子・分子レベルの現象に基づく精密製品設計・高度治療実現のための次世代統合シミュレーション技術の確立」の下の研究領域
「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」
研究総括:土居 範久(中央大学理工学部 教授)
研究領域の概要
 この研究領域は、計算機科学と計算科学が連携することにより、シミュレーション技術を革新し、信頼性や使い易さも視野に入れて、実用化の基盤を築く研究を対象とするものです。
 具体的には、物質、材料、生体などのミクロからマクロに至るさまざまな現象をシームレスに扱える新たなシミュレーション技術、分散したデータベースやソフトウェアをシステム化する技術、また、計算手法の飛躍的な発展の源となる革新的なアルゴリズムの研究や、基本ソフト、情報資源を取り扱いやすくするためのプラットフォームあるいは分野を越えて共通に利用できる標準パッケージの開発などが含まれます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 シミュレーション技術は、従来の理論・実験とは異なる新しい研究手法を実現し、科学技術のブレークスルー、国際競争力の強化に資する基盤技術として、その重要性が高まっています。現在のシミュレーション技術は、計算科学として各研究分野において研究および実用化が進められていますが、さらなる発展のためには、計算機科学や数学、特段、計算機科学分野の研究者との連携が求められています。計算機科学分野の研究者との連携を図ることにより、シミュレーションや可視化のための新しいアルゴリズムの開発、高機能・高性能でしかも信頼性や安全性の高いシステムの開発が期待できます。
 この研究領域では、10年程度後に医療分野における高度治療や情報産業における精密製品設計等の「ものづくり」に役立つ次世代統合シミュレーション技術を確立するという戦略目標の達成に向けて貢献できる基盤整備として必要となる、基礎的・共通的な実用化の基盤を構築する研究を対象とします。
 具体的には、ミクロからマクロに至るさまざまな現象をシームレスに扱える新たなシミュレーション技術、分散したデータベースやソフトウェアをシステム化する技術、また、計算手法の飛躍的な発展の源となる革新的なアルゴリズムの研究や、基本ソフト、情報資源を取り扱いやすくするためのプラットフォームあるいは分野を越えて共通に利用できる標準パッケージの開発などが含まれます。また、アルゴリズム等の研究では、個人の独創的な発想にも期待します。
 特に、計算科学分野の研究者と計算機科学分野の研究者とが協同して進める研究提案で、個別研究領域では採れない分野横断的な共通基盤に寄与する研究開発を含むシミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築に係る広い範囲での研究提案を期待します。
 なお、成果ソフトウェア等は一般に公開することを前提とします。従って、開発するソフトウェアが権利上問題のないモジュールで構成されるよう、既存のソフトウェアとモジュール単位で完全に切り分けられる必要があります。また,プログラム提出後に事業団のソフトウェアライブラリへの搭載にあたっての作業に協力をお願いすることがあります。


○戦略目標「遺伝子情報に基づくたんぱく質解析を通した技術革新」の下の研究領域
「たんぱく質の構造・機能と発現メカニズム」
-たんぱく質の機能発現メカニズムに基づく革新的な新薬、診断技術及び物質生産技術の創製を目指して-
研究総括:大島 泰郎(東京薬科大学生命科学部 教授)
研究領域の概要
 この研究領域は、生命活動の中心的役割を担うたんぱく質の構造及び機能を明らかにしつつ、応用の可能性を探索する研究を対象とするものです。
 具体的には、たんぱく質の構造解析の高度化並びにたんぱく質の動的な構造変化に立脚する触媒活性や代謝調節、情報伝達等の生体反応、発生、免疫、神経系、環境適応等の高次の生命現象のメカニズムの解明とその医薬、診断技術、物質生産への応用、変性・再生等の動的な構造と物性の変化の解析とその制御や改良技術の展開、これら研究に資する新たな測定技術や研究手法の開拓を目指す研究等が含まれます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 ゲノム科学の急進展、放射光やNMR、さらには1分子可視化などの研究手法の発展を背景として、生命の機能素子であるタンパク質の研究の新時代が到来した。ゲノム解析がもたらす膨大な配列データやそれから派生する3次元構造データの蓄積は、いわば静的な解析データであるのに対し、細胞内でタンパク質が触媒あるいは分子認識素子として働くとき、あるいは細胞内の代謝回転や熱・有機溶媒変性などは、動的な構造の変化や揺らぎが重要であり、その解析無しには機能素子としてのタンパク質の理解はあり得ない。ゲノム科学を背景としたタンパク質の新時代は、従来にない独創的な仮説や研究手法を必要としている。また、そのためにはより精密なあるいはより迅速な測定技術などを開発することも求められている。このためには異分野との共同研究も奨励されなければならないであろう。タンパク質の構造機能相関あるいは構造物性相関に関する斬新な仮説を検証しようとする研究、オリジナルな研究手法を開拓しようとする研究、異分野との共同研究からブレークスルーを求めようとする研究を奨励したい。


○戦略目標「先進医療の実現を目指した先端的基盤技術の探索・創出」の下の研究領域
「免疫難病・感染症等の先進医療技術」
-遺伝子レベルでの発症機構の解明を通じた免疫難病・感染症の新たな治療技術の創製を目指して-
研究総括:岸本 忠三(大阪大学 大学院生命機能研究科 客員教授)
研究領域の概要
 この研究領域は、再生医療や抗体工学等を含む先進医療のうち、免疫が関わる各種疾患(例えば免疫由来各種難病や各種感染症)に対する先進医療技術を中心とし、その他関連する先進医療技術も含め、次世代の医療技術の基礎と応用に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、免疫難病(自己免疫疾患やアレルギー等)の発症機構の遺伝子レベルでの解明とそれに基づいた新しい治療法、例えば抗体療法、遺伝子治療、DNAワクチン、幹細胞治療等の開発および結核、マラリア、エイズ等の細菌、原虫、ウイルス感染症に対する新しいワクチンや創薬の開発につながる基礎的研究等が対象となります。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 免疫学は20世紀後半の生命科学分野で最も進展した領域の一つである。生体の免疫系を調節する細胞、分子の働きは、いまやコンピューターグラフィックをみるように解明されている。その成果は、例えば移植臓器の拒絶を防ぐ薬やリウマチに画期的効果を発揮する抗体等、実際の医療の場で大きな役割を演じている。さらに自然免疫研究の発展に伴うDNAワクチンの進展や、ヒトの免疫系遺伝子を組み込んだマウスの作製等も免疫・アレルギー、感染症、癌の分野で新しい治療法や新しい医療の開発につながることが期待される。
 また、近年のヒト胚性幹細胞(ES細胞)の確立は、移植医療に画期的な展開をもたらそうとしている。そして、ヒトやウイルス・細菌・原虫などの病原体の全ゲノム配列がほぼ解読された今、ゲノム情報にもとづいた蛋白質の構造と機能の解析が進んでいこうとしている。これらの展開は、21世紀の医学、医療に革命的変化をもたらすことが予想されている。
 この領域では免疫学や血液系の異常により引き起こされる難病や腫瘍、アレルギー・アトピー、種々の感染症等に対する新しい治療法や発症予防法の開発、原理に立脚した新しい医薬品の創出等に直接つながっていく可能性をもった基礎的研究を展開することを計画している。
 "ちょっと遅れて流行を追う"というような研究ではなく、ユニークで創造性に富み、しかもその研究成果が新しい診断・治療技術の開発につながっていくような、研究者の個性の現れたロマンのある研究提案を期待します。


○戦略目標「新しい原理による高速大容量情報処理技術の構築」の下の研究領域
「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」
-量子効果、分子機能、並列処理等に基づく新たな高速大容量コンピューティング技術の創製を目指して-
研究総括:田中 英彦(東京大学大学院情報理工学系研究科 研究科長)
研究領域の概要
 この研究領域は、高速大容量情報処理に不可欠な新しい情報処理システムの実現に向け、その技術についてのハードウエア、ソフトウエアの研究を対象とするものです。  具体的には、量子コンピュータや分子コンピュータ等を含む新しい原理に基づく情報処理システム、従来型のコンピュータの性能を新しい時代に合わせて飛躍的に向上させる要素技術、従来システムの安全性や信頼性向上のための技術、大負荷に耐えられる大容量システム技術等に関する研究が含まれます。
今回の募集において、"量子コンピューティング"に関する研究は、新たに設定された研究領域「量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出」で扱いますが、昨年度までに採択された研究課題は従来通りこの領域で扱います。なお、個人型研究(さきがけタイプ)で新たに設定された「量子と情報」でも"量子コンピューティング"に関する研究を扱います。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 現在は情報の果たす役割の高い社会であるが、今後はますますその傾向が強まることが予想される。特にその利用者は一部の人に限られずあらゆる人々である。また、扱う情報の種類も文章や数値だけに留まらず、音、画像など様々なものがあり、高速インターネットの発展により、それらを迅速にやり取り可能である。従って、情報処理技術に対する要求も従来になく幅広く、また厳しいものがある。新たな科学技術研究の必須ツールとしての超高速性、膨大な情報を蓄積処理する大容量性、あらゆる人々が情報システムに頼って生活するための信頼性、人々が安心してシステムを使えるための安全性、変化する処理需要や機器に対応し易い適応性、生涯に渉って使うことを可能とする継続性など様々な要求がある。
 この研究領域は、このような要求を満たすための情報処理技術を対象としており、従来のコンピュータシステムを新たな時代の要求に合わせて変革するための抜本的な要素技術として、コンピュータ性能を飛躍的に向上させる要素技術、システムの安全性や信頼性を抜本的に向上させる技術、大負荷に耐えられる大容量システム技術などを対象とする他、分子コンピューティングやその他、全く新しい原理に基づく情報処理技術を対象としている。 これは基礎研究であるので、5年間の研究の後、直ぐに実用に供されるものを必ずしも要求してはいないが、5年後に所期の研究計画が達成され、その技術の有用性がかなり明確になるものでありたい。
 なお、昨年度まで本領域で対象としていた"量子コンピューティング"に関する研究は、今年度は新設の研究領域で扱うため、本領域では募集の対象としない。


○戦略目標「水の循環予測及び利用システムの構築」の下の研究領域
「水の循環系モデリングと利用システム」
-水資源と気候、人間活動との関連を踏まえた水資源の循環予測・維持・利用のシステム技術の創製を目指して-
研究総括:虫明 功臣(福島大学行政社会学部 教授)
研究領域の概要
 この研究領域は、グローバルスケールあるいはリージョナルスケールにおいて、大気・陸域・海域における水の循環の諸過程を明らかにし、水循環モデルの構築を目指すとともに、社会システムにおける水の効率的な利用に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、気候変動にともなう水資源分布の変化、人間活動が水循環に及ぼす影響に関する研究に加え、水資源の維持・利用、水循環の変化が社会システムに及ぼす影響の予測、生態系環境を維持・保全・回復する水の機能等に関する研究等が含まれます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 水は、一部の化石水を除き、時間的・空間的に偏在かつ変動しながら絶えず循環している。その循環の仕方は、自然的に変動すると同時に、森林伐採、農地開発や食糧増産、都市化あるいは炭酸ガスの排出など、人間活動によっても変化する。言い換えれば、水循環系と人間活動とはダイナミックな相互作用を及ぼし合う関係にある。特に、前世紀後半から始まった急激な人口増加と人間活動の拡大にともなう世界的な水問題、すなわち、飲料水の不足、食糧生産のための水需要の増大、水環境の劣悪化、水災害の激化、さらには気候変動にともなう地球規模での水資源分布の変化などは、今世紀にわたってさらに深刻さを増すと懸念されている。
 この研究領域では、こうした問題の解決に向けて、地球規模から地域規模まで様々なスケールにおける水循環とそれにともなう物質循環の諸過程に関する科学技術的解明と予測を基礎として持続可能な水の利用システムを考究する研究を応募の対象とする。
 具体的には、各種スケールにおける自然的ならびに人工的水循環/物質循環プロセスの解明とモデリング、農業用水、都市用水等の効率的かつ持続可能な利用システム、水文生態系環境の維持・保全・回復、水循環系の変化への社会システムの対応、などのテーマが上げられる。また、"水循環-利用システム"は、社会経済的側面を強く持っているので、自然科学的アプローチと人文社会科学的アプローチが融合した研究が推奨されるとともに、特に、アジア地域の水問題の解決に資する研究の応募が期待される。


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