戦略的創造研究推進事業(公募型研究)
新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要



戦略目標:「遺伝子情報に基づくたんぱく質解析を通した技術革新」
研究領域:「たんぱく質の構造・機能と発現メカニズム」
 
氏名 所属機関 所属学部・学科など 役職 研究課題名
荒木 弘之 国立遺伝学研究所 細胞遺伝研究系 教授 核酸合成に関わるたんぱく質複合体の構造と機能解析
佐方 功幸 九州大学 大学院理学研究院生物科学部門 教授 細胞周期/チェックポイント制御たんぱく質の構造と機能の解析
鈴木 理 (独)産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門DNA情報科学研究グループ グループリーダー FFRPたんぱく質群によるDNA・リガンド識別機構の解明
藤田 禎三 福島県立医科大学 医学部生化学第2講座 教授 生体防御におけるたんぱく質間相互作用と機能発現機構の解析

総評 : 研究総括 大島 泰郎(東京薬科大学生命科学部 教授)

 本領域の公募も今回が最終年度となる。最後ということが背景にあるかもしれないが、108件という多くの応募があり、選考は困難を極めた。しかも、水準の高い応募が多く、大半が豊富な実績を持つ研究者が本領域の目標に的を絞り、独創性の高い目的、妥当な研究計画を提案しているもので、本質的に採択に値する応募が多数あった。過去の選考と同様に、研究総括と領域アドバイザー計9人による採点をもとに合議を行って、面接候補を決め、さらに面接後に改めて全員による合議を行って議論を 尽くし採否を決定した。甲乙つけがたい内容の申請が当落線上に並び、採択されなかった提案といえども国際的に第1級の研究計画であり、タンパク質研究の分野に多大の貢献が見込まれるものであった。少なくとも不採択の提案のうち30%は採択課題と比べ遜色のほとんどない内容であった。ゲノム科学の進展を受けて、また、この領域とは車の両輪の関係にある「タンパク3000」が順調な滑り出しを見せていることと併せて考えても、この分野が「盛り」に達し、今こそ研究助成が最も有効に活きるフェーズに達していることの反映であろう。科学技術振興事業団もこの学問的な潮流を理解し、最善の努力を払っていただいたと信じているが、なお評価の高い提案を見送らざるを得なくなったのは心残りである。
 このような過激な競争のもとでは、計画内容のわずかな瑕疵も許されないことはもとよりのこと、領域の目指す分野の中心的な課題が優先され、ハイリスク・ハイリターン型のやや冒険的な課題や周辺領域にまたがる学際性のつよい課題は採択しがたい結果となる点も気になる。しかし、採択課題は細胞周期のチェックポイント、DNA複製、転写翻訳や免疫における分子認識機構など生理学的に重要な現象に関わるタンパク質に関する研究であり、多彩な手法を組み合わせてタンパク質の構造がいかに生体反応の素過程を担っているかを解き明かそうとする研究が採択された。現在進行中の初年度、2年度採用の各課題も同様であるが、採択課題から生まれ出る研究成果は独創性が高く、タンパク質科学の水準を飛躍的に高めることはもちろん、質の高い基礎研究はやがて大きな応用分野を切り開くに違いなく、本領域への研究投資は将来、産業界に大きな還元を約束するものと確信している。

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This page updated on September 18, 2003

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