戦略的創造研究推進事業(公募型研究)
新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要



研究領域:「生体分子の形と機能」
 
氏名 所属機関 所属学部・学科など 役職 研究課題名
小澤 岳昌 東京大学 大学院理学系研究科化学専攻 講師 タンパク質オルガネラ移行と遺伝子発現の非侵襲的時空間解析法の確立
木下 専 京都大学 大学院医学研究科先端領域融合医学研究機構 助教授 極低温電子線断層法によるセプチン系超分子構造体の解析
西坂 崇之 学習院大学 理学部物理 助教授 蛋白質1個における局所的構造変化の可視化
林 重彦 京都大学 福井謙一記念研究センター 研究員 ミクロな化学反応過程がもたらすマクロなタンパク質機能発現の分子物理
宮田 真人 大阪市立大学 大学院理学研究科 助教授 マイコプラズマ滑走運動の分子メカニズム

総評 : 研究総括 郷 信広 (日本原子力研究所 特別研究員)

 タンパク質分子は生命活動を構成する色々な要素機能の担い手の分子であり生命と物質の接点に位置しており、そこには生物進化の過程で作り出され、遺伝情報の形で伝承されている洗練された分子レベルの技術の粋が凝縮しています。ヒトゲノムも塩基配列の解読の急速な進展によって詳細版が完成し、いよいよポストゲノムシーケンスの中核を担うタンパク質研究も新時代に入ってきました。タンパク質の理解には、X線結晶解析によって得られる精密な3次元的な結晶構造が基礎となりますが、さらにそのダイナミックな動きを捉え、生体分子レベルでの反応が、生体の機能に結びついていく様子を理解する必要があります。そのためには、生命科学と物質科学のそれぞれの面からの多様な研究が必要であり、純粋理学的研究と同時に、分子が本来もつ技術を応用に結びつける研究も大きな生命科学研究の流れの推進力として重要です。当領域の「生体分子の形と機能」の趣旨はまさにその点の理解を深めようとするものであり、このような観点から独創的な発想に基づく研究提案を公募したところ、大学・国公立、独立行政法人等の様々な研究機関から177件の公募がありました。内訳は、国立大学が60%、公立、私立大学が10%、独立行政法人、国公立試験研究機関など公的な機関が20%、民間企業が4%、海外が5%でした。
 提案された研究計画は8名の領域アドバイザーによる書類審査を行い、まず15件を選定しました。この15件については面接による審査を行い、最終的に研究総括、領域アドバイザーの総合審査により5件の採択課題を決定しました。選考された研究課題は、視覚を司る物質や分子モータなどの「機能」を分子レベルでモデル化しシミュレーションを通して解明しようとする理論的な研究、従来知られているいかなる分子メカニズムにも属さない細菌の運動をさまざまな手法を用いて調べ新たな分子の運動メカニズムの概念を見出そうとする革新的な研究、疾患関連物質の構造変化構造を明らかにし医学分野への有益な情報をもたらそうとする応用研究、生きたままの生体1分子の観察あるいはその外部応答をみる先端的な測定方法の研究など、最先端の今まさに新たな知見が得られつつある分野の研究課題を採択することができました。今まで採択された研究課題と併せ、さらに広い分野の研究の進展に貢献し、国際的な生命科学の研究レベルを高め、また産業界に刺激を与えて新産業を創出するなど、社会に貢献するものと確信します。

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This page updated on September 18, 2003

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