本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) 使途の制限が少なく、多機能な品質保持剤が求められていました。

 現在、実用化されている品質保持剤にはいくつかの種類があり、その中で最も代表的なものに脱酸素剤(酸素吸収剤)があります。脱酸素剤の材質は酸化鉄系が主流で、市場の大半を占めています。しかし、鉄系は、酸素吸収以外の機能は有しておらず、また、電子レンジで加熱される食品では鉄が高周波加熱されるため使用できない、液体容器内での使用では鉄イオンが溶出するため使用できないなどの課題がありました。また、包装製品の検査工程で、金属探知器に反応し検査の障害になる問題も知られていました。このため、これらの問題を解決し、電子レンジ食品や液体状食品にも適用可能な品質保持剤の実現が望まれていました。

(内容) 二酸化チタン(TiO2)の酸素欠陥により酸素吸収能を持たせることで触媒機能とあわせた品質保持剤を実現しました。

 本開発では、触媒作用を有する二酸化チタンに注目し、それを特殊処理することで、酸素吸収能力のある改質チタンの製造技術を確立しました。酸化チタンは食品添加物として認められており安全性も高いことから、多くの機能を持つ品質保持剤としての利用が可能です。
 本新技術は、「光触媒用二酸化チタン(TiO2)」粉末を水素・窒素混合ガスなどの還元ガス雰囲気中で熱処理して、酸化チタンの結晶構造中に酸素欠陥を形成(TIO2-x)し、酸素吸収能力をもたせるものです。(図1)この改質した酸化チタン粉末は、酸素吸収機能に加えて、元来酸化チタンが持つ光触媒機能を併せ持っています。また、非磁性であるため、電子レンジ等の加熱処理も可能です。製品としては、この粉末を酸素透過性を持つ透明な袋状容器等に封入する従来法に加えて、包装材に直接練り込むような使用方法も可能です。

(効果) 酸素除去と光触媒効果を併せ持ち、適用範囲も広い品質保持剤です。

 本新技術による品質保持剤は、
鉄系の品質保持剤と同様の酸素吸収能力を持つ。
光触媒の効果により、果物の過熟を促進するエチレンガスの分解ができることや抗菌作用を持つため、食品の保存期間を伸ばすことができる。
成分の溶出がないため、液体状食品の品質保持に使用できる。
非鉄系であるため、電子レンジ加熱を行う食品にも使用できる。
金属探知器に反応しないため、食品の異物混入の検査能率が向上できる。
等の特徴を有するので、各種の加工食品や生鮮食料品、液体状食品、果物などの酸化防止や鮮度保持のための品質保持剤として活用が期待されます。
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