科学技術振興事業団報 第352号
平成15年8月27日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
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URL:http://www.jst.go.jp/

プレベンチャー事業で世界に先駆け「カオスCDMAチップ」の開発に成功

カオスチップの設計、開発・製造・販売等を行うファブレスベンチャー企業設立


 科学技術振興事業団(理事長 沖村憲樹)では、平成11年度より大学等の研究成果をベンチャービジネスにつなげていくための起業化に向けた研究開発を行う研究成果最適移転事業 成果育成プログラムC(プレベンチャー:旧 新規事業志向型研究開発成果展開事業)を実施してきました。
 この度、プレベンチャー事業において平成12年度より開始しました研究開発課題「カオス符号分割多元接続通信用チップ」の研究開発チーム(リーダー:梅野健(独立行政法人通信総合研究所主任研究員)、サブリーダー:高明慧)のメンバーが出資して、ベンチャー企業 株式会社カオスウェア(社長:高明慧、本社:東京都小金井市、資本金:1000万円)を平成15年8月26日に設立しました。
 我が国の第3世代携帯電話の契約数がサービス開始から1年半足らずで720万に急成長し、携帯電話のインターネット対応率が現在世界一となった現在、カメラ付き携帯電話に代表される様に画像データや動画データといった大容量データをセキュリティを高く保持したままストレスなく無線で送信可能にする技術への要求が非常に高まっております。現在、第3世代携帯電話の規格であるIMT2000システムにあるCDMA(*1)のマルチチャネル化が、次世代システムに採用され得る有力な方法ですが、マルチチャネル化のみでは、チャネル間の干渉雑音が増え、通信品質を極端に落としてしまうという問題がありました。
 本チームは、CDMAの拡散符号としてカオス符号(*2)を利用し、さらにチャネル間を非同期化することで、干渉雑音を低く抑え、IMT2000のW-CDMAシステムと比較してユーザー数が25%増加するカオスCDMA通信方法を世界に先駆けて開発し、LSIチップ(カオスCDMAチップ)の実証実験に成功しました。本技術は、携帯電話を活用したインターネット利用の拡大、液晶画面のカラー化、音楽配信、画像配信といったデータレートの高速化を、通信セキュリティを高く保持したまま実現できるので、今後、第3世代携帯電話の高度化、第4世代携帯電話への利用が期待できます。
 第3世代携帯電話を含む国内移動体通信市場は、2004年度で2兆6,140億円で、移動体通信端末は2980億円(モバイルコンピューティングコンソーシアム推計)と見積もられることから、同社は、来年度で高品質第3世代携帯対応チップとしてその0.1%程度、3億円、2005年度で15億円、2006年度で50億円の売り上げを目指します。
 株式会社カオスウェアは、本技術の効率的導入のコンサルティングや移動局用通信用チップ、基地局用チップ、関連機器の製造販売、汎用CDMAシミュレータUCS(Universal CDMA Simulator)等関連ソフトウェアの製作販売を主業務とし、同技術の第4世代携帯電話技術への標準化を今後5年間の主な経営課題とします。

 今回のカオスウェア設立により、当事業によって創設したベンチャー企業数は17件(大学発14件、公的研究機関発3件)となりました。
 なお、同社は通信総合研究所(CRL)のCRLベンチャー起業支援制度を利用しCRL内にて起業します。


 本件についての問い合わせは、
企業化開発事業本部 技術展開部 新規事業創出室 03-5214-0016 服部又は斎藤隆行までご連絡下さい。

 通信総合研究所のCRLベンチャー起業支援制度についてのお問い合わせは、
独立行政法人通信総合研究所 企画部研究連携室 042-327-7464 までご連絡ください。
(*1)CDMA(Code Division Multiple Access):
 符号分割多元接続。個々の送信者毎に固有のコード(拡散符号)を割り当てて、送信データを拡散符号で処理した後にそれをまとめて送信する方法。受信側では、受けたデータを再び拡散符号で処理することでそれに対応する送信者が発したデータを取り出すことができる。

(*2)カオス符号:
カオス理論を用いて生成された拡散符号。カオス理論を用いると直交性(個々の拡散符号の独立性)の高い符号を容易に多数生成することができる。

企業概要
開発した技術の概要



This page updated on August 27, 2003

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