研究開発課題の概要

○ 希土類錯体SNPs(一塩基多型)解析システム
遺伝子多型解析は医学等の基盤技術として広く使われるのみならず、テーラーメイド医療へ向けた実用的技術として重要である。現行のSNPs(一塩基多型)解析法には幾つかの方式があるが、いずれも外国の技術に依存している。特に、インベーダー法は、標的DNAの一塩基ミスマッチの構造変化を特異的に認識する酵素を用いた蛍光シグナルの検出よって一塩基変異を検出する方法である。当該手法に、独自技術である、蛍光寿命が長く、検出感度の高い希土類蛍光錯体を蛍光ラベル剤とし、日本で開発された要素技術である一塩基ミスマッチを特異的に認識する新規酵素を組み合わせ、従来法より高感度で経済的な方法を提供する。
○ 皮膚再生のためのレチノイン酸ナノ粒子
ビタミンA活性体であるレチノイン酸を卵の様に無機質の殻でカプセル化しナノサイズにすると、皮膚に効率良く浸透し、殻が徐々に壊れてレチノイン酸が放出する。その結果、従来皮膚組織への浸透性が悪く皮膚炎症を起こしたレチノイン酸そのものより、刺激がなく、表皮のターンオーバー(細胞の分化)を促進・皮膚組織の弾力と保水を担うプロテオグリカン産生能増強から劇的にシミ及びしわを解消する。
○ ゲノム関連資源常温流通システム
多数の遺伝子クローンDNAや蛋白質などゲノム関連資源の溶液を紙などに各々スポットし固化し(いわゆるカップ麺化し)、シートや書籍の形で、保管・配布することのできる流通システムを確立する。これにより研究者をはじめ多くのユーザーが、必要なゲノム関連資源を簡単に廉価にかつ迅速に入手し、即実験に利用でき、保管することが、可能になると期待される。
○ 製品開発用仮想試験システム
機械は、運動、電気、熱などのエネルギー変換によって機能する。本課題では、これを直接表現できるモデル化手法を用いて、機械をコンピュータの中で試験し、その機能と性能を検討するシステムを開発する。本システムは、自動車や情報機器など各種機械の製品開発に利用でき、飛躍的な期間短縮とコスト低減が期待される。

製品開発用仮想試験システムのイメージ図
○ 次世代知能型設備診断システム
現状の市販診断器の診断原理は、ほとんど振動値(平均値や実効値などの有次元特徴パラメータ)により設備状態を識別するもので、安定した微小異常の検出が不十分で、高精度の劣化傾向監視も困難である。本開発では,最新設備診断理論及び高度情報工学的手法を用いて「次世代知的設備診断装置」を優位製品とした診断サービスの提供を実現する。本技術は機械設備以外でも、インフラ施設や医療分野での診断への拡張応用も期待できる。
○ オンチップセルソーターシステム
微細加工・MEMS技術と画像認識技術を組み合わせた、細胞に損傷を与えない使い捨てオンチップセルソーターシステムと、細胞形状・構造に基づく画像ベースの細胞種判別分離プロトコルの研究開発を行う。今後市場の拡大が予想される、細胞を利用したバイオ研究・産業分野での細胞精製装置として広範な利用が期待される。
○ 組織融合性に優れた骨修復材料
ナノサイズのアナタ-ゼやルチル等の酸化チタン微粒子の大きさ・形状、それらの集合組織を適当に制御すると、優れた骨結合能・骨形成能・抗菌性等を示す。これらの特性を生かして組織融合性・機械的強度に優れた人工椎体、人工歯根、創外固定具部材、骨セメントなどの骨修復材料を開発する。骨折等の早期治癒が期待される。
○ 低視力用網膜投影電子眼鏡
水晶体の機能不全患者や網膜細胞の一部が生きている視力低下者に視覚機能を復活させることができる網膜投影方式電子眼鏡を日常生活で装着できる完成度の高いレベルで実現し、患者に最適な電子眼鏡を供するための視覚機能検査システムを含めて提供することによって起業する。
○生体組織の常温長期保存液の創製
現在、細胞や組織を長期間保存するには凍結保存法が用いられている。しかし、凍結障害により細胞の生存率が大きく低下するため、血小板や角膜などは凍結保存できない。本課題では、緑茶ポリフェノールを利用することで、細胞や組織を常温で長期間保存できる保存液を開発し、再生医療の進歩に貢献する。
○シュガーチップの実用化
様々な糖鎖を集積したチップ(シュガーチップ)を製造し、糖鎖と細胞や蛋白質等との結合挙動を網羅的に測定する技術を確立する。この技術は、糖鎖が関与する生命現象の解明といった基礎研究に役立つとともに、ウイルスのタイプ分けなどの迅速な検査・診断法の開発を導き、さらに新しい薬を開発するための技術としての応用も期待される。
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This page updated on August 19, 2003

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