本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
環境に優しい、新しい代替洗浄技術の開発が望まれていた。

 従来、半導体部品の製造工程における洗浄や精密機械部品の洗浄にはフロン系、有機系洗浄剤が使用されていたが、環境汚染対策として使用規制ができ、代替として水系洗浄、アルコール系洗浄および炭化水素系洗浄が実施されているが、洗浄力・環境対策等十分満足できる状態ではない。また、これまでの超臨界流体による洗浄システムでは、所定の溶媒の循環に高圧ポンプを用いて行っていた。しかし、超臨界流体による洗浄に高圧ポンプを用いるとパーティクルの発生があり、精密部品の洗浄に不適であった。これらにより洗浄装置として実用化普及が困難となっていた。このため半導体部品や精密部品の洗浄ができ、環境に優しい代替洗浄技術の開発が望まれていた。

(内容)
二酸化炭素の熱力学特性(温度、圧力)を利用して、高圧ポンプを使用しない超臨界二酸化炭素洗浄装置を実現した。

 本新技術は、超臨界状態の二酸化炭素を用いて洗浄を行う装置に関するものである。洗浄槽を中心に、超臨界二酸化炭素循環機構と液体二酸化炭素循環機構からなり、それぞれ加熱機構と冷却機構を備えている。また、循環機構中に、汚れた溶媒を分離するドレインタンクと気化された二酸化炭素中のパーティクルを除去するフィルターを備えている。
 本装置では、二酸化炭素の熱力学特性(温度、圧力)による密度勾配を駆動力とし、さらに二酸化炭素流体の落下エネルギーにより、高圧ポンプを用いることなく超臨界流体による循環と洗浄が行えるようにした。また、減圧により二酸化炭素流体が気化することで、容易に油分等の溶解物を分離でき、気化した二酸化炭素の再利用が可能である。
 超臨界二酸化炭素洗浄では、溶解力が高く、液体より粘度が小さく微細部分への浸透性が高いため、細かな電子部品等に付着している油分を除去できる。さらに液体二酸化炭素洗浄では、液体溶媒を高い圧力でシリコンウエハに噴射洗浄することで、パーティクルの除去と乾燥ができる。

(効果)
浸透性が高いため、細かな部品の油分の除去および液体溶媒を利用したパーティクルの除去と乾燥が同時にできる。

 本新技術による超臨界二酸化炭素を洗浄溶媒とした洗浄装置は、
(1) 二酸化炭素の熱力学特性(温度、圧力)密度勾配を駆動力利用して循環させるので高圧ポンプが不要、低ランニングコストを実現
(2) 加熱と冷却のみで流体の温度・圧力・流量がコントロールできるため、メンテナンス性、安全性優れている。
(3) 二酸化炭素溶媒を減圧により容易に汚れ成分の溶解物分離、抽出ができるため、半製品・組立部品でも丸洗・脱脂洗浄乾燥が同時に可能。
 などの特徴を持つため、機械部品、電子部品、半導体材料、医療用材料など幅広い分野での利用が期待できる。

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This page updated on August 8, 2003

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