(別紙4)
課題名透過電子位相顕微鏡
発明者 岡崎国立共同研究機構生理学研究所 教授 永山國昭
委託企業 日本電子株式会社 代表取締役社長 原田嘉晏、
本社 東京都昭島市武蔵野三丁目1-2、
資本金41.7億円
開発期間2年間
開発費用約2億円

 本新技術は、位相板を加熱し有機物を分解することと、新たなレンズ系により、位相板位置を汚染源から離すことにより、主として試料から蒸発する有機物による位相板の汚染を防止して、電子顕微鏡での位相差像観察を初めて可能とするものである。
 本新技術の背景、内容、効果は次のとおりである。

(背景)
光学顕微鏡では細胞内の組織レベルより微小構造の観察が困難であるため、より倍率の高い電子顕微鏡を利用した細胞・組織観察法の確立が求められていた。

 位相差法は、光の吸収がない試料でもコントラストの高い像が得られるため、光に対して透明である生物系試料を観察する方法として光学顕微鏡で広く利用されている。位相差法での観察には、回折光のみを90度位相回転し、回折光に含まれる位相変化量に比例した強度を持つ波形成分と位相変化のない直接透過光を干渉させる必要がある。このため、回折光の位相を変換する「位相板」が構成要素として不可欠であるが、電子顕微鏡では電子照射により位相板が帯電し、電子線の経路が乱れ、像が得られないという問題から、これまで位相差電子顕微鏡は実現しておらず、実現が求められていた。

(内容)
位相板位置を加熱して汚染を防止するとともに配置を最適化して帯電を防止して、位相差像観察を実現

 本新技術は、位相板の帯電が位相板に付着する汚染物質に起因するという研究成果に基づき、位相板を加熱して汚染物質を分解することで帯電の少ない位相板システムを実現するものである。その際発生する熱による試料損傷等の問題は、対物レンズ下にトランスファーレンズという等倍電子レンズをおき、対物レンズの焦点面と等価な焦点面を後方に作成、そこに位相板を配置することで解決した。

(効果)
重元素による染色等の前処理なしでコントラストの高い細胞微細像観察することが可能となる

 本新技術には次のような特徴がある。
(1) 電子散乱の小さい軽元素からなる細胞のような試料でもコントラストの高い像が得られる。
(2)組織を破壊する染色等の前処理が不要となり迅速な観察ができる。

 従って、次のような用途が期待される。
(1)生物用透過型電子顕微鏡
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This page updated on July 28, 2003

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