科学技術振興事業団報 第336号
平成15年7月16日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話048(226)5606(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

「杉間伐材を原料とする家畜粗飼料の製造技術」
の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 沖村 憲樹)は、農業技術研究機構 上席研究官 寺田文典氏らの研究成果に基づき「杉間伐材を原料とする家畜粗飼料の製造技術」を当事業団の委託開発事業の課題として、平成12年3月から平成15年3月にかけて九州産業株式会社(取締役社長 岩切 好和、本社 宮崎市大字赤江 字飛江田4945、資本金2000万円、電話0985-51-4122)に委託して開発を進めていた(開発費約1億8千万円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 本新技術は、杉間伐材から家畜用粗飼料の製造を行い、稲藁などの代替となる粗飼料を提供するものである。本新技術はシラカンバの粗飼料化の技術成果を杉間伐材に適用して開発に成功した。製造した粗飼料は牛が食べやすい柔らかさの長さ2cm以下の繊維状のもので、これを濃厚飼料に混ぜて与えたところ、通常飼料を与えたものと成長状態に差がなく、また動態が穏やかで反芻が促され排便状態も良好で、下痢が減り・毛艶がよくなる等の良好な結果が得られた。よって、本新技術により杉間伐材を家畜用粗飼料に転化することが可能となり、稲藁あるいは輸入牧草の使用量を減らすことが可能となった。本新技術は牛の粗飼料製造技術として広く用いられることが期待される。


本新技術の背景、内容、効果は次のとおりである。

(背景)
家畜用粗飼料としての稲藁は入手困難となり、輸入牧草などを使用せざるを得なくなっているため、新たな粗飼料を杉間伐材から得ることが提案された。

 従来、家畜用粗飼料として利用されてきた稲藁は次の理由により入手が困難になっている。

自脱コンバインの導入等により破砕化される
土中に鋤き込まれる

 このため、牛飼育農家では粗飼料用稲藁の約2割を中国・台湾・韓国等から輸入し、また麦藁も輸入しているが、口蹄疫発生原因の懸念もあり、食の安全確保のために新しい粗飼料源の確保が求められる。
 一方、林業においては、国の拡大造林事業として杉造林が推進されたが、木材の輸入自由化により需要が低下し、間伐が停滞し、放置された間伐材が山林を荒廃させている。
 以上の理由から、杉間伐材を原料として家畜粗飼料を製造できれば林業・畜産両面の問題を解決することが期待される。

(内容)
杉間伐材の木片チップに水を加え、加圧缶の中で蒸煮した後、摺りつぶし、牛が食べやすい柔らかさの繊維状粗飼料を製造した。

 この技術は農林水産省のシラカンバの粗飼料化の研究成果を参考にして開発した。シラカンバの粗飼料化ではチップを蒸煮する加圧缶の圧力が10気圧を超え、コストも割高となるが、本新技術では約4気圧の加圧缶で蒸煮して製造することが可能である。製造した粗飼料は長さ2cm程度の牛が食べやすい柔らかな繊維状のものである。(図1)

(効果)
製造した粗飼料を濃厚飼料と共に牛に与え、通常粗飼料を与えた牛と比較して、摂取量・成長状態に差がなく、血液生化学的にも異常がないことを確認した。

 杉間伐材を原料とする粗飼料を長期にわたり毎日1kg程度濃厚飼料に混ぜて乳牛、肥育牛、及び繁殖牛(母牛)に与え、生育状況や動態を評価し、また血液生化学検査等を行った。本新技術による粗飼料を与えた牛は、通常粗飼料を与えた牛と比較して共通的に摂取量・成長状態に有意の差がなかった。また、動態が穏やかで反芻が促され排便状態も良好で、下痢が減る・毛艶がよくなる等の結果が得られた。血液生化学検査上も異常がなかった。
 個別事項としては、通常飼料を与えた牛と比較して次の結果を得た。

乳牛試験では牛乳の生産性が良好であった
肥育牛試験では牛の胃液、胃粘膜、肝臓が健全で肉質が良好であった
繁殖牛試験では母牛の受精・妊娠・分娩に異常がなく子牛の発育も良好であった

 これらの確認は農林水産省の「飼料の安全性評価基準」に準拠して実施した。
 以上のことから、本新技術による杉間伐材を原料とする粗飼料は、牛の飼育に十分適用可能なことが確認され、稲藁あるいは輸入牧草の使用量を減らすことが可能となった。

・ 図1 杉間伐材を原料とする家畜粗飼料の製造フロー
・ 開発を終了した課題の評価

(注)この発表についての問い合わせ先は以下のとおりです。
科学技術振興事業団 開発部 開発推進課菊地 博道、高野 晃
電話 03-5214-8995
九州産業株式会社 研究開発課日高 佳久
電話 0985-51-4122


This page updated on July 16, 2003

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