揮発性有機塩素溶剤の閉鎖系分解処理装置


(背景)
望まれる揮発性有機塩素溶剤の無害化処理技術

 トリクロロエチレンや塩化メチレン、パークロロエチレン等の有機塩素溶剤は、洗浄溶剤として優れた特性を有しており、電子部品や機械部品等の洗浄工程や、衣類のドライクリーニング、化学薬品工業での溶媒等に大量に使用されている。しかしながら、これらの溶剤は発がん性が指摘され、かつ揮発性のため、使用時に蒸発し大気に放出されている。そのため、自治体による法規制が強化されている。現在、排出事業者において、排出の抑制や放出溶剤の回収を図るとともに、溶剤の処理は処理業者に委託しているが、ISO14000の認証取得や労働環境の改善要求等に対し、溶剤の排出抑制や回収のみならず、処理システムの確立を自ら行う必要に迫られている。
 従来、使用済み廃液中の有機塩素溶剤は、既存のロータリーキルン焼却炉を用い、廃油や油泥等の他の廃棄物と混合させて焼却処理されている。しかし、燃焼時に発生する酸性ガスが焼却炉の腐食の原因となる、排ガスや煤塵、排水処理等を行う付帯設備を有する大型装置となる等の問題があった。また、処理できる焼却炉の数が少ない。このため、取り扱いやすく、揮発性有機塩素溶剤を無害化できる分解処理技術が望まれていた。

(内容)
揮発性有機塩素溶剤を閉鎖経路内で酸化カルシウムと反応させ、無害な塩化カルシウムに直接変換

 本新技術は、揮発性有機塩素溶剤を酸化カルシウムと反応させて、含まれる塩素を無害な塩化カルシウムに直接変換させるものである。研究者は、トリクロロエチレンと酸化カルシウムとの反応による塩化カルシウムの生成を熱力学的に検討し、350℃位で直ちに反応を始め、速やかにトリクロロエチレンが分解されることを確認した。本反応は、空気雰囲気で取り扱えるので操作が容易であり、かつ閉鎖経路内で行われるので、未反応有害ガスの排出もない。また、酸化カルシウムが安価であるという利点を有する。
 本分解処理装置は、溶剤のガス化を行うユニット、反応塔、未反応溶剤ガスを回収するユニットより構成される。(1)ガス化ユニット:使用済の廃溶剤は、気化器で加熱、ガス化する。一方、放出された溶剤は、活性炭等の吸着剤に吸着させ、脱着ユニットにて脱着、ガス化する。(2)反応塔:溶剤ガスを経路内に循環させ、反応塔内で350〜400℃に加熱流動化した酸化カルシウム粉体と反応させて、塩化カルシウム、二酸化炭素、及び水に分解し、無害化する。本反応は、減圧反応であり、酸欠による一酸化炭素の生成を抑えるため、反応経路内に外気を導入し、経路内圧をコントロールする。(3)回収ユニット:未反応溶剤ガスを溶剤回収機に導入し、液化、分離してガス化ユニットに戻す。

(効果)
電子・機械部品の洗浄や衣類のドライクリーニングに用いられる揮発性有機塩素溶剤の分解処理への利用

本新技術は、次のような特徴を有する。
(1)有害な揮発性有機塩素溶剤を無害な二次廃棄物(塩化カルシウム)に直接変換できる。
(2)閉鎖経路内で処理でき、未反応有害ガスの排出がない。
(3)安価な酸化カルシウムを用い、二次廃棄物の再利用が可能であるため、処理コストの低減が図られる。

従って、以下のような用途が期待される。
(1)電子・機械部品の洗浄や衣類のドライクリーニングに用いられる揮発性有機塩素溶剤の分解処理への利用
(2)難分解性有機ハロゲン化合物の分解処理への展開

(※)この発表についての問い合わせは、電話03(5214)8995 野田または小泉までご連絡下さい。


This page updated on March 26, 1999

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