本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。

(背景)
気管内チューブの挿入時の様子や挿入具合などを、目で確認出来、安全、確実、迅速に挿管が行えるイメージガイドシステムが求められています。

 麻酔や集中治療、救急医療における人工呼吸の際には、気管に気管内チューブと呼ばれる管を挿入して気道確保が行われています。気管内チューブの挿入は、多くの場合手探りで行われていますが、歯牙、口唇、咽喉頭、声帯等を傷めたり、また、誤って食道に挿入してしまうことがよくあり、挙句には挿管操作に時間がかかり、生命の危険に陥る重大な事故に繋がるため、挿管の状況を映像で確認できるようにするイメージガイドシステムが求められています。

(内容)
1本のプラスチックファイバーで体内の画像を伝送し、固体撮像素子を介してモニターに映し出すイメージガイドシステムです。

 本新技術は、1本のプラスチック光ファイバーで体内の様子を目視に近い映像で外部に伝送し、固体撮像素子を介してモニターに映し出すもので、気管内チューブの挿入を支援する医療用挿管イメージガイドシステムに関するものです。
 同種の医療用具としてファイバースコープがありますが、これは一本一本のマイクロメーターオーダーのガラスファイバーにより、画像を画素に分解して伝送するため、数千から数万本を、両端でファイバーの位置が対応するように束ねたものを画像伝送に用いるため、製造コストがかかり、救急医療現場にまで普及する価格対応が困難でした。
 本新技術の画像伝送に用いるプラスチック光ファイバーは、周辺から中心に向けて連続的に屈折率を高めることにより、ファイバー一本で画像伝送を可能にしたものです。モノマーに屈折率分布を形成するドーパントを添加し、その濃度が適切に分布するようにプラスチックのプリフォームを製造し、これを延伸するもので、安価に製造出来ます。

(効果)
気管内チューブの体内への挿入を映像で支援するガイドとして挿入時の安全性の向上や患者および挿管操作者の負担軽減に寄与できます。

 本新技術は、現在手探りで行われている気管内チューブや吸引管等の体内への挿入を、映像で支援するイメージガイドとして手軽に使用でき、安全に、そして短時間に、確実に気管内挿管が行え、挿入時の安全性や確実性、迅速性の確保と患者の苦痛緩和及び挿管操作者の負担軽減等に大きく貢献することが期待され、救命率の向上にも寄与できます。また、感染防止のための使い捨てでの使用が可能になります。


【用語解説】

・気管内挿管: 救急蘇生および換気不全に陥っている患者の気管にチューブを挿入し、確実に気道確保と人工呼吸を行えるようにする手法。
・気管内チューブ: 気管内挿管の際に気管内に挿入するプラスチック製チューブで、通常は塩化ビニールチューブを用いている。チューブのサイズは内径3~9mm、長さは30cm前後である。気管内チューブは喉頭鏡により声門を確認して挿入するため、熟練した技術が必要であるが、呼吸停止の患者に確実に人工呼吸を行うことができる。
・喉頭鏡: 気管内挿管、喉頭の異物除去の場合などに咽喉頭、声門、食道入口部を直視するために用いる器具である。従来の喉頭鏡で喉頭を十分に視野に入れることができるようになるには、可成りの技術と熟練が必要である。
・イメージガイド: 光軸の周辺から中心に向けて連続的に高めた屈折率を有する屈折率分布型(GRIN;Gradient Index)レンズ。媒質自体が屈折力を持ち、画像を伝送する。円筒形のためロッドレンズとも言う。また、光ファイバーで同様の屈折率分布を有するものは、GI(Graded Index)型と呼ばれている。
・プリフォーム: 屈折率分布の形成までを行い、延伸を行う前のイメージガイド。

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This page updated on May 8, 2003

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