(補足説明資料)
独立行政法人 通信総合研究所
平岡 泰
運動ニューロン病
 運動ニューロン病は、神経変性疾患の一種であり、骨格筋を支配している運動ニューロンに原因があって筋肉が萎縮してくるものを指し、骨格筋自体の病気で筋肉が萎縮するものと区別される。ヒトの運動ニューロン病として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)などが知られている。筋萎縮性側索硬化症は、米国の有名な野球選手ルー・ゲーリックがこの病気になったために、ルー・ゲーリック病と呼ばれることもある。また、物理学者ホーキングが筋萎縮性側索硬化症であることもよく知られている。
 
ダイニンモーター
 ダイニンは、微小管と呼ばれる細胞骨格の上を移動するモータータンパク質である。微小管は、繊維上のタンパク質集合体である。微小管には方向性があり、盛んに伸長する側をプラス、反対側をマイナスと呼ぶ。神経軸索の中では、微小管は細胞体から神経軸索の先端に向かって、マイナス方向からプラス方向へと伸びている。このような微小管の上で、モータータンパク質の助けを借りて、神経軸索内でのタンパク質の輸送が行われる。ダイニンは、微小管上をマイナス方向に移動するモータータンパク質であり、軸索内では細胞体の方向へ向かう輸送に関与する。
 
今回の成果
(1) マウスのダイニン変異は、ヒトの運動ニューロン病に類似の神経変性を示す。
(2) ダイニン変異は軸索輸送に阻害を起こす。
(3) ダイニン変異は細胞分裂には影響しない。
(4) マウスのダイニン変異で見られる神経変性は、細胞分裂の異常ではなく、輸送阻害が原因である。
(5) ダイニンの変異が、ヒトの運動ニューロン病の原因になりうる。

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