分子転写プロジェクトの概要


 本共同研究は当事業団の国際共同研究事業として行うもので、研究実施場所はトゥエンテ大学など2ヵ所を予定している。研究期間は平成9年1月から5年間の予定で、原子や分子を認識する分子組織体の設計・合成手法について研究を進める。
 生命体は、分子集合体から生命が誕生する段階で、原子や分子を識別する機能を獲得した。自然界が示すこのような高効率、高選択的な原子や分子の認識系を人工的に再構築する試みが分子認識化学である。
 従来の分子認識化学では、認識対象となるゲスト原子や分子と相補的な形を持つホスト分子を設計し、有機合成化学的な技術で合成しているが、認識対象ごとにホスト分子の設計、合成方法を変える必要があった。
 本研究の基本戦略は、従来型の分子認識化学の研究指針に対する逆転構想から生まれたものである。すなわち、本研究では、認識対象となるゲスト原子または分子を”鋳型”として使用し、これにホスト分子を構成する分子断片を多点相互作用させて鋳型の形状に合わせて固定化することにより、鋳型のゲストと相補的な構造を持つ分子組織体を作製する方法論の確立を目指す。
 この研究により、分子認識素子を設計、合成するためのアプローチが、従来型から本研究による分子転写法に代わることが期待される。本方法論が確立されれば、普遍的かつ迅速に高精密認識機能を持つ希望のホスト分子が得られるようになり、これは、”形”を認識する分子記憶素子として機能することが期待される。

研究主題「分子転写」の構想

用語の解説


This page updated on March 31, 1999

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