多価冷イオンプロジェクトの概要


 本共同研究は当事業団の国際共同研究事業として行うもので、研究実施場所はオックスフォード大学、国立物理学研究所など3ヵ所を予定している。研究期間は平成9年1月から5年間の予定で、多価イオンの原子構造や物質との相互作用の解明などについて研究を進める。
 多価イオンは電荷数が極めて高く、中性原子や低価数のイオンにはない特徴を持っている。例えば、多価イオンでは、束縛された電子は原子核の近くを光速に近い速度で運動しており、通常の原子とはまったく異なる量子状態を持っている。また、物質との相互作用の面では、多価イオンは極めて大きな内部エネルギーを持ち、他の物質から電子を吸引する粒子として振る舞うことが予想されている。
 しかし、これまでは、冷却されてエネルギーが低い状態にある多価イオンを作り出すことが極めて困難だったため、多価イオンに係る詳細な研究は進展していなかった。
 本研究では、高エネルギー電子ビームを用いて生成させた多価イオンをイオントラップ中に閉じ込めた状態で極限まで冷却し、そのイオンを用いて精密分光学による原子構造の研究、多価イオン化による原子核の壊変過程の研究、固体表面との相互作用の研究などを行う。
 この研究において、原子構造の観察を通して量子物理学の理論の検証を行うとともに、固体表面との相互作用の理解を通し、多価イオンによる物質の表面改質の新しい方法の開拓が期待される。また、多価イオンの原子核の安定性の変化の観察から、宇宙における元素創成のシナリオ作りなどに新しい着想を生み出すことが期待される。

研究課題「多価冷イオン」の構想

用語の解説


This page updated on March 31, 1999

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