参考資料
平成15年1月21日
総合研究大学院大学
科学技術振興事業団
発表題目 「量子エンタングルメント(量子連結相関)の抽出実験に世界で初めて成功」
  -量子情報処理の実現へさらに一歩近づく-
発表機関
総合研究大学院大学(総研大)学 長:小平 桂一
科学技術振興事業団(JST)理事長:沖村 憲樹
(NTT物性科学基礎研究所所 長:石原 直)
概要
次世代情報技術のブレークスルーを生み出す基礎となる学術研究成果
論文“Experimental extraction of an entangled photon pair from pairs”としてNature 平成15年1月23日に発表
総研大生・山本俊(たかし)君(指導教官・井元信之教授)の博士論文研究
井元・小芦グループの研究の一部として、総研大葉山キャンパスで完遂
総研大で集中的に資源投下している先導研の主力グループの一つ
総研大・先導研の特徴を活かしてJSTの委託研究をも受け入れ活用
産業界(NTT)とも協力
企画、実施、資源すべてにおいて当該分野で初の純国産Nature論文
論文著者 氏名(現職・前職・年齢)
山本 俊 :総研大博士課程院生、前職:熊本大修士院生、年齢:28
井元 信之 :総研大先導科学研究科教授、前職:NTT物性科学基礎研究所グループリーダー、年齢:50
小声 雅斗 :総研大先導科学研究科助教授、前職:NTT物性科学基礎研究所研究員、年齢:33
Sahin Ozdemir :JST-CREST研究員、前職:静岡大博士院生、年齢:32
研究経緯
1999~基礎実験開始
2001~総研大としてJST研究受託
戦略的創造研究推進事業(研究代表者 平山 祥郎)
研究課題:「相関エレクトロニクス」,
「量子演算の研究」(井元グループ)
2002~実験成功
内 容  昨年度(2001年)同じ著者等は量子エンタングルメントを抽出する量子光学回路を理論的に提案した(Physical Review A64,012304(2001))。今回はそれを実験的に実証したものである。実験としては非線形光学によりエンタングルした複数の光子ペア群を同時発生し(日本初)、それらに位相雑音を印加することによりエンタングルメントを取り去り、提案した光学回路にてそれらを一括処理して一つのペアを抽出し、エンタングルメントを測定した。
 その結果再現性の良いエンタングルメント回復が観測された(世界初)。
意 義  エンタングルメントとは複数の系の間に見られる量子力学特有の連結状態であり、量子力学を古典力学と区別せしめる根幹的概念である。特に二つの量子ビットがペアで形成するエンタングルメントは量子情報処理実現のために不可欠な基本的リソースとなる。「エンタングルメントの抽出」とはエンタングルメントが失われた多数のペアを一括処理してエンタングルメンが回復した小数のペアを得ることである。これは量子情報処理の実際的実現のために重要であるだけでなく、その抽出限界からエンタングルメントの本質を探る重要な手がかりが得られるため、世界的にその実験的実現が待たれていた。
今後の見通し  今回の実証実験では現象としての「エンタングルメント抽出」を初めて観測することができた。今後は量子トモグラフィを併用する等によりさらにレベルを上げ、これを用いた新しい量子情報処理を提案し、その基礎実験を目指す。(以上)
本研究の関連論文(理論提案)
[1]T.Yamamoto,M.Koashi,and N.Imoto:“Concentration and purification scheme for two partially entangled photon pairs,” Phys.Rev.A64,012304-1-8(2001).
[2]M.Koashi,T.Yamamoto and N.Imoto:“Probabilistic manipulation of entangled photons,”Phys.Rev.A63,030301(R)(2001).
量子情報関係はこのほか Physical Review Letter:9件
Physical Review  A:20件 その他

<本件に関する問い合わせ先>
総合研究大学院大学 先導科学研究科教授 井元 信之
〒240-0193神奈川県三浦郡葉山町湘南国際村
TEL:046-858-1560・FAX:046-858-1544

科学技術振興事業団 戦略的創造事業本部 研究推進部
研究第一課長 森本 茂雄
〒332-0012埼玉県川口市本町4-1-8
TEL:048-226-5641・FAX:048-226-2144

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