別紙3

平成14年度採択地域の提案内容に関する評価結果

地域名:埼玉県
課題名:「高速分子進化による高機能バイオ分子の創出」

<事業概要>
   新しいバイオテクノロジーである新規な核酸や蛋白質を創出する高速分子進化技術を発展させ、医療分野や環境分野に有用なバイオ分子を創出するための基盤技術を確立し、これらの応用を通してバイオ新産業の創出を目指すことを目的とした基盤技術と応用技術の開発を行う。

<事業の推進に関して>
   県が新たな産業拠点として整備する「SKIPシティ」のトリガープロジェクトとして位置づけられている。同拠点には本プロジェクトの中核となるコア研究室を設け、大学や理化学研究所などの産学官の地域ポテンシャルが連携した事業実施体制であることからも、意欲的な研究開発の推進が期待される。

<研究開発に関して>
   高速分子進化技術は、世界的にも先端的で近年注目されている技術であり、新規な事業や産業の創出のための基盤技術を提供する可能性がある。また、研究統括者は高速分子進化の研究分野の第一人者であることから、理論的なバックグラウンドも非常に強く、国際的な競争力においても問題ない。

<地域による支援に関して>
   「SKIPシティ」の整備によるプロジェクト推進の支援や「むさしの研究の郷構想」によるプロジェクト終了後の基盤構築など、科学技術振興に対して積極的に取り組んでおり、地域COEの構築に向けた地域の支援が期待できる。

<事業の実施にあたっての指摘>
   提案の中核である新規な人工進化技術を全テーマに活用するような研究開発として本事業を推進すること、応用可能性の高い分子の創出に注力すること、さらにそのターゲット分子を複雑な条件下で利用可能な形にすることなどに留意して実現性の高い研究計画にすることが必要である。
 また、先進的な研究内容であることから、国内外の特許に留意して研究開発を推進すべきである。

提案のあった埼玉県地域結集型共同研究事業概要図(PDF)

地域名:三重県
課題名:「閉鎖性海域における環境創生プロジェクト」

<事業概要>
   閉鎖性海域での養殖生産と生活排水の流入によって底質環境が悪化し、危機的状況に到っている英虞湾において、産学官の研究ポテンシャルを結集・活用し、効率的な底質改善と干潟・浅場・アマモ場の造成により、海域の自然浄化機能の向上を図るとともに、水質予報に基づく養殖の導入により、海域の環境保全と真珠養殖等の生産活動が調和した新たな沿岸海域の環境を創生し、地域経済の活性化に資する。

<事業の推進に関して>
   企業、大学、地元NPO等といった産学官の研究ポテンシャルを結集・活用し、且つ三重大学、三重県科学技術振興センターを核としたコア研究室を対象海域近くに設置する計画となっている点で、対象海域を中心とした産学官の連携体制の構築と、円滑な事業推進が期待される。

<研究開発に関して>
   環境対策事業は局所的な対処ではかえって悪化させることがある中で、実海域をフィールドとした総合的な現場実証型研究を進めることにより、長年の懸案の解決策として期待がもてる。また、三重大学を中心とした県内外の有力大学と、環境改善技術に実績のある企業との共同研究が推進されれば、新たな研究成果の創出が期待できるとともに、その成果の他地域への応用あるいは波及といった科学技術基盤形成も期待できる。

<地域による支援に関して>
   三重県の十分な協力体制とともに、プロジェクトの終了時には研究成果の他の海域への応用や、研究活動拠点・人材育成の基地としての機能をもつ研究環境の整備などが計画されており、地域COE形成に向けた支援が期待できる。

<事業の実施にあたっての指摘>
   沿岸環境創生技術の開発において干潟・藻場造成技術の有効性やリスクについて、また底質改善技術の開発においては安全評価について、さらに環境動態シミュレーションモデルの開発においてはモデル高度化の方法に関して、それぞれ検討すべき課題があるので、これらにつき実現性の可否を見極めた上で計画を定め実施する必要がある。

提案のあった三重県地域結集型共同研究事業概要図(PDF)

地域名:滋賀県
課題名:「環境調和型産業システム構築のための基盤技術の開発」

<事業概要>
   工場から排出される廃プラスチック等の高分子固体をはじめとする固体廃棄物や廃水に、新たなエネルギーや資材を加えることなく有用な資源に転換して連続的に利用する「シーケンシャル・ユース」というコンセプトの下に、物質/エネルギーの排出速度を自然の受容可能な速度まで低下させることによる環境調和を実現させて、環境調和型産業システム導入の中核となる地域COEを構築し、マテリアル・リサイクル技術産業の創出を目指す。

<事業の推進に関して>
   琵琶湖を抱え自然環境の保全に熱心に取り組んできた「環境県」である一方で、県内総生産の5割を占める製造業を中心に発展してきた「工業県」でもある滋賀県の提案であり、これらの調和を図るために「環境調和型産業システムの構築」を目指すべくテーマを選定したことは、十分に地域性を認めることができる。

<研究に関して>
   研究内容は工場内での環境負荷を低減するための材料研究を中心として、環境技術を融合させ新たな概念である環境調和型システムとして提案しているのはユニークである。プロセス技術開発においては非常に高い目標を掲げているものの、計画どおりの結果が得られた場合には、大きな成果が期待できる。

<地域による支援に関して>
   昨年度の可能性調査(FS)の経験を踏まえて十分検討された上での提案であることから、県の支援意識は強く地域COE構築に向けた支援体制については高く評価できる。

<事業の実施にあたっての指摘>
   プロジェクトへの環境科学分野の専門家の参加、及び新材料の開発におけるいくつかのテーマの関連性及び妥当性について検討すべき課題があるので、これらにつき実現性の可否を検討し計画を定めて事業を実施する必要がある。

提案のあった滋賀県地域結集型共同研究事業概要図(PDF)

地域名:高知県
課題名:「次世代情報デバイス用薄膜ナノ技術の開発」

<事業概要>
   今後の高度情報化社会において必須となる多様な次世代情報機器に必要不可欠な各種新規情報デバイスを作製する基盤技術を県内の産学官の総力を結集して開発するものである。特に新材料を利用したTFT技術は早期に開発し、従来技術を凌駕する高性能液晶ディスプレイの事業化をする。また、プラスチック液晶、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイなどの新商品の開発を目指す。

<事業の推進に関して>
   産学官連携で実績のある高知工科大学を中心に、県内外の有力大学、公設試験研究機関、カシオ計算機(株)の他ハイテク中小企業群との産学官の連携が整備されており、新たなデバイス技術分野において多くの研究成果が期待される。

<研究に関して>
   現状の情報科学技術分野の進展から判断して重要なテーマであり、世界に類が無い新しい材料系での高機能商品の開発を目指す点からも評価できる。また、参画する研究者は情報デバイス分野において優れた実績を有することから推進する意義が高い。

<地域による支援に関して>
   公設民営の高知工科大学を中心とした県内の研究ポテンシャルと民間企業である高知カシオ(株)や他の地場企業との連携をコーディネートした県の意欲と実績を高く評価することができる。

<事業の実施にあたって>
   情報デバイス分野の技術は進展が非常に早いこと、研究開発テーマの大きさや数に対するマンパワーが不足気味であること、さらに次世代薄膜メモリの開発には実現性について危惧があることから、これらにつき実現性の可否を検討した上で計画を定めて進める必要がある。

提案のあった高知県地域結集型共同研究事業概要図(PDF)

地域名:沖縄県
課題名:「亜熱帯生物資源の高度利用技術の開発」

<事業概要>
   沖縄県の生物資源の高度利用に関する基盤技術について、産学官連携による研究を行い、健康・バイオ分野における産業技術の高度化を図るとともに、付加価値の高い新たな製品開発を促進し、県内産業の振興に寄与することを目的とする。

<事業の推進に関して>
   平成14年度末に竣工する沖縄健康バイオ研究開発センター(仮称)にコア研究室を設置し、県内外の大学、公的研究機関、工業技術センター及び県内企業との共同研究の実施が計画されており、産官学の連携が期待できる。

<研究開発に関して>
   生物資源を利用した有用物質の生産技術開発では、亜熱帯という地理的特殊性を踏まえたテーマが多く選ばれており、沖縄における早急な健康産業の基盤形成という高い緊急性を鑑みれば妥当であり、さらには沖縄県が注力しているバイオ産業発展のための基盤的研究となることが期待される。

<地域による支援に関して>
   新たに建設される沖縄健康バイオ研究開発センターへのコア研究室の設置や、中核機関である(株)トロピカルテクノセンターの技術移転機能を活用し、地理的特性を生かした亜熱帯生物資源の高度利用技術に関する研究開発及び、産業化までの機能を有する地域COE構築に向けた沖縄県の取り組みは熱心であり、高く評価できる。

<事業の実施にあたって>
   研究開発テーマには地理的特性の希薄なテーマがあることやテーマ間の有機的連携の強化が必要であること、実施体制に十分な調整が必要であることから、これらにつき実現性を見極めた計画を定めることが必要である。

提案のあった沖縄県地域結集型共同研究事業概要図(PDF)

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This page updated on December 6, 2002

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