ホームJSTについて情報の公開・個人情報保護機構の評価に関する情報(参考) 科学技術振興事業団(平成14年度まで)の評価結果平成13年度評価結果(研究交流促進・研究支援事業、及び科学技術理解増進事業)科学技術振興事業団機関評価報告書(科学技術理解増進事業)科学技術理解増進事業評価報告概要

科学技術振興事業団の機関評価にあたって


 科学技術振興事業団(以下「事業団」という)では、事業団が運営する事業の全般にわたって評価を行い、事業団が実施している事業の内容とその科学技術振興上の意義を明らかにするとともに、事業団の運営にあたっての改善事項を抽出することを主眼とする機関評価を行っている。

 事業団は外部から選任される評価者からなる総合評価委員会(委員長:熊谷信昭大阪大学名誉教授)(以下「委員会」という)に機関評価を依頼している。(資料1「総合評価委員会委員名簿」参照

 事業団は多岐にわたる事業を実施していることから、全事業を5つに大別し、平成10年度から順次事業の評価を進めてきたが、平成13年度は研究交流促進・研究支援事業及び科学技術理解増進事業を機関評価の対象と選定した。

 科学技術理解増進事業の評価にあたり、委員会は科学技術理解増進事業評価部会(部会長:坂元 昴 文部科学省メディア教育開発センター所長)(資料2「科学技術理解増進事業評価部会委員名簿」参照)を設け評価活動を行った。

 委員会は、科学技術理解増進事業の評価のため事業団から評価対象事業について説明を受け、「科学技術振興事業団の機関評価の目的及び評価の視点」に基づき、平成13年6月15日以降3回、部会は4回の審議を重ね本報告書をとりまとめた。(資料3「審議経過」参照



1.科学技術理解増進事業の全般的評価
 事業団の科学技術理解増進事業は、平成8年、新しい事業として開始以降5年の短期間に、我が国の学校教育機関以外の科学技術理解増進活動の中核的活動として成長してきたことは、高く評価できる。今後とも事業団において同事業を継続・発展させることが強く望まれる。

 事業全般について、全体として高く評価できるものの、以下の点については、更に考慮が必要であるとの指摘があった。
(1) 数多くの事業の経験を踏まえ、今後、我が国全体としての科学技術理解増進事業における事業団の位置づけを更に明確にし、重点的な事業の展開が望まれる。
(2) 科学技術理解増進事業は初等中等教育における理系教育を補強する任務を負うべきと考えられるが、これまでは学校教育との接点が不十分であり、十分な事業の効果を発揮できるまでには至らなかった面もある。今後学校における科学技術・理科教育の充実に資する取組みを強化することが必要である。
(3) 各事業の参加者に興味を持たせることに加え、今後は、本質的な科学技術の理解や知識の定着に繋がるような工夫が期待される。
(4) 事業の内容については、「科学」に重きが置かれ、「技術」、「産業」の視点が少ない傾向が認められる。「技術」、「産業」についても更に取り上げることを期待したい。


2.個別事業の評価
(1) 科学技術理解増進手法・素材の開発と普及
全国の科学館などの中心的センターとして、優れた展示、実験ショー、科学技術関連競技の開発と普及を行い、また科学番組の作成・放映、デジタル理科教材の開発・提供などに力を入れていることは日本全体の科学技術理解増進活動の大きな推進力になりつつある。
科学館等における展示や実験ショーのコンテストについては、企画担当学芸員等に目標を与え、優秀な人材を育てるのに大きな役割を果たしている。
コンテンツの開発(IT活用のバーチャル科学館、サイエンスQ&A、サイエンス・チャンネル等)については、学校現場で活用してもらい、その結果を反映して更に改良するといった仕組みが必要である。
サイエンス・チャンネルは、科学技術の理解増進を図る上で非常に有効な手段であり、番組の充実強化、視聴者数の多いメディアでの放送など一層の努力とPRが望まれる。
デジタル理科教材の開発にあたっては、教育的観点を踏まえて、教材を使用する教員の意見を十分反映して取組むことが求められる。また、教育現場への普及を図るため、提供システムの充実とともに、教育委員会へのPR等が必要である。

(2) 理解増進活動の支援
全国の科学館活動やボランティア等による草の根的活動に対する支援は、いずれの事業も有意義であり、今後、学校の完全週5日制により更に重要度を増すであろう。
事業団の事業を契機として、全国の科学館相互の連携や学校と科学館の連携が進むことは意義が大きい。事業の周知とともに、支援件数を増加させるための努力を期待する。

(3) 理解増進活動の基盤整備
科学技術の内容を解りやすく、参加者が興味を持てるように伝える人材の養成が不可欠であり、科学館職員やサイエンス・レンジャーの研修、実験教室の指導者養成、更に小中学校の教員研修なども非常に重要な事業である。
青少年の科学技術に対する興味を喚起するためには教員の役割が重要であり、教員研修に力を入れるべきである。文部科学省と連携をとり、実のある研修制度が実現することを希望する。

(4) 体験機会の提供
JST科学技術講話、サイエンス・ワンダー・ワールド、サイエンスキャンプなどは、重要で有効な事業であり評価できる。
母親を対象にした機会提供や内容をより親しみ易いものにするなどの工夫も必要である。

(5) 日本科学未来館
コンセプト、展示内容、企画組織、人材の活用など、現時点で最高の取組みがなされている。
来館者数だけから見ると投資効率は低いとの意見もあるが、世界の主要国はいずれも大型の科学館を持ち、安価な料金で国民に提供している。科学技術を特別視せずに、一種の文化として継続することが大事であり、入館者数や経費を最重視することにより館の公的使命が損なわれることのないよう配慮すべきである。

(運営)
最先端の科学技術に関する情報発信と交流のための総合拠点として意欲的な運営がなされている。
最新の科学技術展示は、たちまち時代遅れとなる宿命があるので、科学技術の動向に即応する展示を常に考慮する必要がある。
企画を科学者だけにまかせるのではなく、社会学者、文化人、ジャーナリスト、産業人などの参加を考えることも必要である。
中高生を狙いとするならば、教育委員会や指導主事、教科調査官などにも宣伝し、一度は見学会を持つように学校へ働きかけることが必要である。
来館者の理解の程度、能力、関心等に応じたきめ細かな対応が必要である。

(展示)
バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどは目に見えない分野であるので、展示として取り扱うのは極めて難しい。その分野によく挑戦している。
高度な内容を細かく丁寧にパネル解説を行っている。パネル前での対話は理解増進に役立つので十分な情報が必要である。

(インタープリター、ボランティア)
インタープリターの役割は効果的であり、非常に大きい。更なる努力を期待するとともに、ボランティアを更に積極的に活用すべきである。


3.提言
 委員会は、以上のとおり、事業全体として有効な活動を実施しているとの評価意見をまとめた。更に成果をあげることを期待し、科学技術理解増進事業全体として特に留意、検討すべき事項を提言として述べることとする。

(1) 事業の継続的な実施
科学技術理解増進事業は、効果が直ちにあらわれるものではなく、成果については長い目で見て行くべきであり、事業を今後長期にわたり継続発展させる必要があり、現在の活動が縮小されないような努力が必要である。
そのためには、国において研究開発の費用の一定割合は理解増進に充てるといった考え方が導入されることを期待する。

(2) 全国的な活動ネットワークの形成
事業団が国の科学技術理解増進事業のセンター的機能を果たすことは非常に重要である。全国の科学館や草の根的活動とネットワークを更に強化し、科学技術の理解者、応援者を増やし、ボランティア活動を呼び込み、その活動をバックアップするような全国的な運動を展開していくことを期待する。

(3) 学校教育等との連携
子供たちに一番影響が大きいのは学校教育であり、学校教育とどのように関連を持って行くかということが重要である。このため、学校、教育委員会、地方自治体との連携を深め、効果的な事業の推進を図ることが必要である。
小学校の教師に対し、もっと面白く子供を惹きつけて理科教育ができる手法の開発、研修等を通じた普及に配慮することが望まれる。

(4) 技術への配慮
科学、技術、それらが活用されている産業の現場をバランスよく取り上げるとともに、青少年が日本の技術、産業に誇りを持てるような事業を期待したい。

(5) 事業の対象
子供の理科離れ対策と成人に科学技術に対する関心を喚起させることは異なる。対象に適した活動を行う必要がある。特に子供に大きな影響力を持つ母親に対する活動を持つべきである。
科学技術ジャーナリストが果たす役割は一層重要になるので、科学技術ジャーナリストとの連携を強め、活動を支援していくことが重要。また学協会との連携も重要である。

(6) 事業の方法
より有効な事業手法等について幅広い調査・分析を行い実施方策を検討する必要がある。事業の評価にあたり効果の分析が重要であり、定量的評価になじまない面もあり、多角的評価が可能となるような評価手法を取り入れることが重要。特に新しい試みについてはその評価方法の研究が必要である。

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