科学技術振興事業団報 第276号
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骨形成に必須な遺伝子の決定に成功

 科学技術振興事業団の戦略的創造研究推進事業の研究テーマ「転写因子 Cbfa1 による関節軟骨の再生」(研究代表者:小守壽文 大阪大学大学院医学系研究科分子病態内科学講座/助手)において、骨形成に必須な遺伝子の決定に成功した。この成果は11月18日付けの米国科学雑誌「ネイチャージェネティクス」に発表される

 科学技術振興事業団(理事長 沖村 憲樹)では、基礎的研究発展推進事業の研究テーマ「転写因子Cbfa1 による関節軟骨の再生」(研究代表者:小守壽文 大阪大学大学院医学系研究科分子病態内科学講座/助手)として進めている研究の一環として、骨や関節軟骨の形成機構の解明を進めていたが、このたび多くの遺伝子のうち、核結合因子(core binding factor 、Cbfb)と呼ばれるものが骨の形成に必要であることを見いだした。
 この研究は、研究代表者とアルゼンチンからの留学生(大学院生)吉田カロリーナを中心とした研究室員によって行われたもので、その成果は11月18日付けの米国科学雑誌「ネイチャージェネティクス」に発表される。

 高齢化が進む中、欧米、日本ともに骨粗鬆症患者が増加し、骨折を契機とした寝たきり老人の増加につながっている。また、変形性関節症による関節の痛みは中高年齢者の就労にも大きな影響を及ぼしている。そのため、丈夫な骨格の維持が重要な課題となっており、その中心となる骨格の形成機構および維持機構の遺伝子レベルでの解明が急務となっていた。
 多くの遺伝子の中でCbfbは骨の形成に必要な因子と推定されていたが、この遺伝子のはたらきを止める(ノックアウト)とマウスは血液を作ることができずにただちに死亡してしまうため、従来この推定を確かめることができなかった。 今回、本来は造血できずに死亡するCbfbノックアウトマウスに対して、トランスジェニックマウス作成技術を用いて造血機能のみを機能させるという新しい方法により生き延びさせ、Cbfbの機能を明らかにすることができた。その結果、このノックアウトマウスはほとんど骨形成を認めずCbfbが骨格形成に必須な遺伝子であることを発見した。
 また、骨形成には、幹細胞が骨芽細胞へ分化することと、軟骨細胞が成熟することが必須である。幹細胞より各種骨格形成細胞への分化はそれぞれ異なった転写因子によって支配されているが、Cbfbは別のある種の転写因子と結合し、様々な遺伝子の発現を調節し、骨芽細胞分化や軟骨細胞の成熟も誘導していること、さらに、この結合したCbfb自身がその転写因子の発現を調節し、骨芽細胞分化・軟骨細胞の成熟を調節していることを明らかにした。
 骨粗鬆症は骨芽細胞の減少及びその機能低下が一因である。そのため、今回の発見された遺伝子を選択的に発現させることにより、骨芽細胞を増やし骨を増加させるなど、骨粗鬆症に対する治療への応用が期待される。
 一方、変形性関節症の予防・治療には、軟骨細胞の成熟して通常の骨になることを抑制することが重要である。この場合は今回発見された遺伝子の抑制が軟骨細胞の成熟の抑制につながることになり、さらに軟骨細胞の増殖の促進、軟骨の形質を維持する治療への応用、あるいは関節軟骨の再生等への応用が期待される。


[補足説明]



本件に関する問い合わせ先
小守壽文(こもり としひさ)
 大阪大学医学部分子病態内科学 助手
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甲田 彰(こうだ あきら)、高木 千尋(たかぎ ちひろ)
 科学技術振興事業団 研究推進部 研究第三課
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This page updated on November 18, 2002

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