資料5

戦略目標

戦略目標: 環境負荷を最大限に低減する環境保全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製(平成14年度設定)
1. 名称
環境負荷を最大限に低減する環境保全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製

2. 具体的な達成目標
 原子・分子レベルで物質の組織・構造の制御等を行い、機能触媒及び循環可能な新材料等の環境保全材料並びに、高効率エネルギー変換システム等のエネルギー利用高度化材料の開発を目指す。この際、原子・分子レベルでの組織・構造の制御から求める材料開発までを総合的に推進する。
 このため、2010年代に実用化・産業化を図るべく、以下のような成果等を目指す。
太陽電池、熱電変換素子、超伝導電力貯蔵・超長距離送電、燃料電池、水素貯蔵用材料のナノ組織制御による画期的な高性能化
環境に余分な負荷を与えず、資源を無駄なく利用し、エネルギー効率を極限まで高めた、高速・高効率・高選択的物質変換プロセスと循環型エネルギーシステムを実現するためのナノ構造制御触媒の設計指針の確立及び調製技術の開発
ナノスケールオーダーの口径の微小な空間を持つ物質の微細構造を制御した、新たな触媒、分離膜、物質担体、光デバイス、電子デバイス等の創製
熱効率70%を可能とする超高効率ガスタービン材、片手でも持ち上がる自動車ボディー材、その他金属・セラミックス・高分子及びカーボンナノチューブ等の新素材を複合した新機能を持つコンポジット材料の開発
高機能・多機能化のためのナノ組織の設計の実現及び、地球温暖化防止・省エネルギーなどの環境材料、高度情報通信社会実現のための磁性材料等の革新的な金属材料の創製

3. 目標設定の背景及び社会経済上の要請
 経済のグローバル化と国際競争の激化等に伴う産業競争力の低下、雇用創出力の停滞といった現下の経済社会の課題を科学技術、産業技術の革新により克服し、我が国の産業競争力を強化し、経済社会の発展の礎を着実に築くことが不可欠である。このような革新的な科学技術、産業技術の発展の鍵を握るものとして、ナノレベルで制御された物質創製、観測・評価等の技術であるナノテクノロジーが、近年急速に注目されている。
 具体的には、多機能、多段階に機能する触媒、エネルギー貯蔵・変換効率の飛躍的に向上した材料開発等が特に求められる。
 また、これらの実用化・産業化の目標を達成するためには、ナノレベルでの計測・評価、加工、数値解析・シミュレーションなどの基盤技術開発や、革新的な物性、機能を有する新物質創製への取組みが必須である。
 なお、総合科学技術会議分野別推進戦略(平成13年9月)においても、環境・エネルギー分野においては、国家的・社会的課題の克服のため、「環境保全・エネルギー利用高度化材料」が5つの重点領域の1つとして位置づけられているところである。

4. 目標設定の科学的裏付け
 将来の我が国経済社会の持続的な発展のため、リデュース、リユース、リサイクルを実現し、かつ廃棄物の適正処分や自然循環機能の活用等を図ることにより、天然資源の消費が抑制され、環境負荷が可能な限り低減される循環型社会の構築を図ることが必要である。物質・材料技術は、このような資源循環型技術の中でも主要な役割を担う技術の1つである。
 また、エネルギー分野においても、エネルギーインフラを高度化していくために必要な研究開発として、燃料電池、太陽光発電のためのエネルギー変換材料、エネルギー機器・インフラ等各種材料の開発が求められているところである。
 産業界においてもその取り組みの強化が図られている環境保全・エネルギー利用高度化材料については、既存の材料分野を越えた多機能・多段階に機能する触媒等の環境保全材料、革新的にエネルギー変換効率を向上させた燃料電池材料等のエネルギー利用高度化材料をはじめとした各種のナノ構造制御材料開発により積極的な取り組みを行うことが必要不可欠。
 具体的には、
エネルギー貯蔵・変換材料については、既に、太陽電池、2次電池、水素吸蔵材料等様々な材料や製品が作られているが、エネルギー変換効率が未だ不十分であることから、ナノ組織制御材料により効率向上を目指すことが必要である。
高効率生産、環境浄化、エネルギー変換用などの触媒は現在までにおいても、多大な進化を遂げてきているが、ナノ構造を完全に制御した触媒により、必要な機能を単一の触媒上に付与する技術開発、多段階の合成プロセスについて、次々に機能する触媒開発、光機能触媒開発等への取り組みが求められている。
複合剤の研究は、金属系、セラミックス系、高分子系等既に様々な分野で進められているが、製造コスト、特性劣化の問題等により、製品としては、スポーツ用材料といった比較的小型の製品に限られている。発電用ガスタービン等、大型構造部材への応用のためにナノ複合化が急務である。

5. 重点研究期間
 ナノテクノロジー分野については、競争が激しく多くの研究領域を推進する必要があるため初年度のみの公募とし、次年度以降には新たに同じ研究領域での公募は行わない。1研究課題は概ね5年の研究を実施する。(なお、優れた研究成果をあげている研究課題については、厳正な評価を実施した上で、研究期間の延長を可能とする。)


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This page updated on October 31, 2002

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