資料5

戦略目標

戦略目標: 情報処理・通信における集積・機能限界の克服実現のためのナノデバイス・材料・システムの創製(平成14年度設定)
1. 名称
情報処理・通信における集積・機能限界の克服実現のためのナノデバイス・材料・システムの創製

2. 具体的な達成目標
 2010年に訪れると予想されている現方式のシリコン集積回路の微細加工限界(ムーアの法則の限界)を越えた、次世代の情報処理・通信を担う新たな情報処理・通信用デバイス・材料・システム開発をめざす。この際、シリコン基板及び非シリコン基板の双方の取組みを実施する。
 また、これらデバイス・材料・システムを活用するためのインターフェースとしても有用な各種センシング技術(最先端的計測法・先端センサー素子とセンサー管理システムの開発等)による健康・環境計測法の実現を目指す。
 これらの目標達成のため、革新的な物性を有する物質創成からデバイス・システム開発までの総合的な推進を目指す。
 このため、2010年代に実用化・産業化を図るべく、以下のような成果等を目指す。
現在の半導体よりも演算速度を2桁向上するとともに、消費電力を2桁以上低減する情報通信用デバイスの探索。
革新的なナノ素材とナノプロセスの開拓、新機能・新特性を持つ超集積素子の実現及び、医療応用・障害克服などに貢献するための集積システムの生体親和性の飛躍的向上。
革新機能を付与した単一分子の合成及び高度集積化法の開拓等、機能分子を望むように集積して回路を形成する技術の確立及び分子デバイスシステムへ応用
ナノメモリーの原理・素材・方式の解明を通じ、現在のハードディスクの記録密度の1000倍程度の記録密度を目指す。
固体量子ビット素子、超伝導系量子磁束素子、相関電子素子、相関光子素子、スピン制御素子、ナノチューブ・ナノワイヤ素子等、新原理素子の探索及び技術的な壁の打破
大容量・超高速の光通信技術に必要な光発生、光変調、光スイッチ、光増幅、光検出、光メモリ、表示などへの革新につながるナノ構造フォトニクスや材料の開発を通じた次世代光技術の創製
バイオ分子の自己組織化を利用したナノスケールの新素子、新材料の創製を通じた高集積バイオチップの開発
半導体、酸化物や磁性体中の電子の持つもう1つの自由度であるスピンを電子デバイスにおける新しい自由度として積極的に活用した、新しいナノ構造を利用したスピンエレクトロニクス材料の探索・創製
超分子を用いたバイオナノ超分子センサー、導電性超分子スイッチング素子、ナノマシンなどの分子デバイス、ナノ材料の開発
フラーレンの集積化、ナノデバイスへの応用に不可欠なCNT超微細加工技術、コンポジット材料開発
フラーレン、ナノチューブに次ぐ新たなナノ集合体材料の創製と開発を通じたクラスター・ナノ粒子集合体をベースにした素子の実用化
従来は全く異なる物質・材料として扱われてきた有機物質と無機物質とをナノスケールで融合させた構造を持つ全く新しい物質・材料群による素子の開発

3. 目標設定の背景及び社会経済上の要請
 経済のグローバル化と国際競争の激化等に伴う産業競争力の低下、雇用創出力の停滞といった現下の経済社会の課題を科学技術、産業技術の革新により克服し、我が国の産業競争力を強化し、経済社会の発展の礎を着実に築くことが不可欠である。このような革新的な科学技術、産業技術の発展の鍵を握るものとして、ナノレベルで制御された物質創製、観測・評価等の技術であるナノテクノロジーが、近年急速に注目されている。
 具体的には、
(1) 半導体を用いた高速・高集積・低消費電力デバイス技術に関し、国際競争力を確保することに加え、
(2) 全く新しい原理を用いた次世代のデバイス・材料の礎を確立することが長期的展望にたった我が国の国際的な技術競争力の確保にとり必要不可欠である。
 また、これらの実用化・産業化の目標を達成するためには、ナノレベルでの計測・評価、加工、数値解析・シミュレーションなどの基盤技術開発や、革新的な物性、機能を有する新物質創製への取組みが必須である。
 なお、総合科学技術会議分野別推進戦略(平成13年9月)においても、情報通信分野においては、国家的・社会的課題の克服のため、「次世代情報通信システム用ナノデバイス・材料」が5つの重点領域の1つとして位置づけられているところである。

4. 目標設定の科学的裏付け
 情報通信分野における我が国の技術競争力は、欧米に比べて全体的に低下傾向にある。これまで大きな役割を果たしてきた民間の研究開発については、その投資額の日米格差が急速に拡大しており、内容的にも製品開発に重点を移しつつあるため、我が国の競争力強化に向け、リスクの高い研究開発等について国の役割が一層重要となっている。
 特に、次世代情報通信システム用ナノデバイス材料においては、2010 年に訪れると予想されている現方式のシリコン集積回路の微細加工限界(ムーアの法則の限界)を越えた、次世代の情報処理・通信を担う多様な新原理デバイス・材料・システムの構築に向け、現在、各国が世界標準の獲得競争のまっただ中にある。我が国として、次世代情報通信用デバイス開発において、世界を凌駕するための取り組みを緊急に準備することが必要であるが、この際、シリコン基板及び非シリコン基板の双方について産業化を見据えながら段階的な目標設定も行いつつ、戦略的に取り組むことが必要である。
 ソフトウエア無線等の新規通信方式への転換につれて、通信システムの急速な高速・大容量化が今後とも予想されているが、半導体の集積化・高機能化はムーアの予測に従い、3年で4倍のペースで進んでおり、2005年には素子の最小寸法が100nmを切り、ナノデバイス時代に突入することとなる。このため、大容量、高演算速度、省エネルギー、高セキュリティーその他の画期的な機能を有する新原理デバイス・材料・システムの開発が急がれている。
 具体的には、
現在の延長の技術においては、高速化限界、セキュリティー問題、消費電力等の課題の克服に加え、量子効果等により現れる素子の動作や製造技術上の物理的な限界、製造 コスト等の問題を回避するための革新的なナノ素材やプロセスの開発、量子ドット、量子細線、ナノチューブ等を取り込んだスイッチ素子の開発が求められる。
現在使われているLSIメモリ、磁気ディスク、光ディスクの性能限界の壁をうち破るとともに、強誘電体メモリーなどの次世代メモリーの開発が求められている。
更に、現在の方式の集積回路とは全く異なる新たな原理に基づくデバイスとして、単一分子素子、各種固体Qビット素子、超伝導系新量子磁束素子、スピンエレクトロニクス等の技術開発も次世代の世界標準獲得の観点から積極的に取り組むべき重要な課 題である。
加えて、このようなデバイスやシステムの開発に際しては、革新的な物性、機能を有する新物質創製が必須であり、超分子、カーボンナノチューブ、フラーレン、クラスター・ナノ粒子をはじめとした積極的開発が必要である。

5. 重点研究期間
 ナノテクノロジー分野については、競争が激しく多くの研究領域を推進する必要があるため初年度のみの公募とし、次年度以降には新たに同じ研究領域での公募は行わない。1研究課題は概ね5年の研究を実施する。(なお、優れた研究成果を上げている研究課題については、厳正な評価を実施した上で、研究期間の延長を可能とする。)


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This page updated on October 31, 2002

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