資料5

戦略目標

戦略目標: 非侵襲性医療システムの実現のためのナノバイオテクノロジーを活用した機能性材料・システムの創製(平成14年度設定)
1. 名称
非侵襲性医療システムの実現のためのナノバイオテクノロジーを活用した機能性材料・システムの創製

2. 具体的な達成目標
 DNA、タンパク質などの生体分子の動作原理等を活用した各種の機能性材料、生体適合性材料、バイオデバイス、システム等の開発及び、ナノマシンテクノロジー技術を活用した細胞手術、遺伝子治療システム、バイオアクチュエーター等の開発に向けた技術の確立を目指す。
 このため、2010年代に実用化・産業化を図るべく、以下のような成果等を目指す。
人間の五感に匹敵する又は五感を超える感度を持つ高感度な外場応答材などによるインテリジェントなセンサ技術の開発及び、情報処理機能を持つ使い易いマンマシンインターフェースとして、高感度かつ知的なセンサの開発
ドラッグデリバリーの標的精度を単一細胞レベルにまで高めるとともに、細胞・遺伝子治療の要素技術の開発を通じた、ナノテクノロジーを設計基盤とする安全・無痛・高効率医療効果を得るトータルなシステムの提案
タンパク質分子やその複合体が関与する生体内反応を手本に、分子構造及び分子間相互作用の柔軟な変化を利用した、素子自体が状況を判断して最適な動作をするナノソフトマシンの開発
遺伝情報に基づいて生体が行うようなプログラムに基づく自己組織化現象によるナノ構造制御の物質・材料構築技術の探索を通じた、生体を超える分子モーター、分子デバイス、五感センサ、脳型デバイス等の人工生体情報材料の開発

3. 目標設定の背景及び社会経済上の要請
 経済のグローバル化と国際競争の激化等に伴う産業競争力の低下、雇用創出力の停滞といった現下の経済社会の課題を科学技術、産業技術の革新により克服し、我が国の産業競争力を強化し、経済社会の発展の礎を着実に築くことが不可欠である。このような革新的な科学技術、産業技術の発展の鍵を握るものとして、ナノレベルで制御された物質創製、観測・評価等の技術であるナノテクノロジーが、近年急速に注目されている。
 具体的には、
 (1) 新たな医療システムとして期待の高い極小システムの構築が急がれる一方、
 (2) ライフサイエンスとナノテクノロジー、電子技術などとの融合等が、次代の科学技術革命を拓くものとしての期待が高い。
 また、これらの実用化・産業化の目標を達成するためには、ナノレベルでの計測・評価、加工、数値解析・シミュレーションなどの基盤技術開発や、革新的な物性、機能を有する新物質創製への取組みが必須である。
 なお、総合科学技術会議分野別推進戦略(平成13年9月)においても、ナノテクノロジー・材料分野においては、国家的・社会的課題の克服のため、「医療用極小システム・材料、生物のメカニズムを活用し制御するナノバイオロジー」が5つの重点領域の1つとして位置づけられているところである。

4. 目標設定の科学的裏付け
 創薬、再生医療等の医療への応用が期待されるライフサイエンス分野において、ゲノム技術の活用、疾病予防・治療技術開発、生物機能を高度に活用した物質生産、食料科学・技術開発等に加えて、新たな技術や手法の開発が求められており、そのためにナノテクノロジーの利用が不可欠である。
 このようなナノバイオテクノロジーは、米国においては、2000年からCornell大学を拠点として、Nanobiotechnology Centerプロジェクトを開始している他、英国でも、オックスフォード大学、グラスゴー大学を中心としたナノバイオテクノロジーへの総合的な取り組みが開始されている等、昨今、欧米における取り組みの強化が目立つ分野である。ナノバイオテクノロジーについては、バイオテクノロジーと物理、ナノテクノロジー、電子技術などの融合が次代の科学技術革命を拓くものとして期待が高く、我が国においてもこのような新たな分野において、世界のトップを目指すべく、緊急かつ戦略的な取り組みを開始すべき領域である。
 具体的には、
高感度かつ知的なセンサーに関しては、情報を検知するセンサーについての開発は進んでいるところであるが、さらに多様な情報を超高感度で検知し、情報を処理伝達できる知的センター及び材料の開発が重要度を増している。
IT化医療に関しては、個々のDNA分子に対して自由に人工操作を加えるトップダウン型ナノテクノロジー的方法の開発が急務であるとともに、ドラッグデリバリーシステムとしては、高度なターゲット制度、放出医薬のモニター方法、ナノマニピュレータの開発が待たれている。
ナノソフトマシンについては、既に個々のタンパク質の動態を観察、操作し、分析するための1分子テクノロジーはほぼ確立しているが、これを発展させ、細胞内での個々の生体分子複合体レベルでの機能解明と相互の分子の作用ネットワークのメカニズムの解明及びその医療応用等への取り組みが求められている。
プログラム自己組織化については、最近では複数の分子種を構造制御しながら配列しようとする研究がなされているところであるが、人工分子を機能デバイスとして発展させていくためにより高密度に集積するとともに、集積した機能物質を利用したセンサー、メモリー等の開発等が求められる。

5. 重点研究期間
 ナノテクノロジー分野については、競争が激しく多くの研究領域を推進する必要があるため初年度のみの公募とし、次年度以降には新たに同じ研究領域での公募は行わない。1研究課題は概ね5年の研究を実施する。(なお、優れた研究成果をあげている研究課題については、厳正な評価を実施した上で、研究期間の延長を可能とする。)


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This page updated on October 31, 2002

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