資料5

戦略目標

戦略目標: 個人の遺伝情報に基づく副作用のないテーラーメイド医療実現のためのゲノム情報活用基盤技術の確立(平成14年度設定)
1. 名称
個人の遺伝情報に基づく副作用のないテーラーメイド医療実現のためのゲノム情報活用基盤技術の確立

2. 具体的な達成目標
2010年代において、ゲノム情報を活用した合理的な手法による創薬や、そうした手法により開発された薬剤をより効果的に人に適用するため、個人の遺伝情報に基づく、副作用のない効果的な個人に合った医療(テーラーメイド医療)の実現等を目指し、そのために必要となる基盤技術を開発することとし、以下を達成目標とする。
高速かつ安価に個人のゲノム情報(SNPs)を解析することが出来るシステムの実用化のための基盤技術の開発
 例えば、現在100%外国技術を使用しているSNPsの解析技術(現在は、インベーダー法(米国TWT社)、TaqMan法(ABI社)、MALDI-TOF法(米国数社)が使用されている)について、100%の解析精度を実現し、かつ解析速度を現在よりも1桁(現在、1億タイピング/年)上げ、コストを2桁(現在1SNPあたり、100-200円程度)程度下げるための我が国独自のSNPs解析技術の開発及びその高度化
日本人固有の疾患遺伝子型の特定と創薬のための技術開発
例えば、日本人のゲノム配列と外国人のゲノム配列のわずかな差の比較による、薬剤感受性、感染症への抵抗性、生活習慣病の環境要因、がん・アルツハイマー病等に関する日本人固有の疾患遺伝子型の解明に決定的な情報の迅速な取得、及び同情報を活用した効果的かつ効率的な創薬のための技術開発

3. 目標設定の背景及び社会経済上の要請
21世紀は、世界各国で高齢化が進み、特に我が国においては世界に例を見ない速度で高齢化社会を迎えることが予測されている。このような状況はかつて経験したことのないものであり、高齢化社会にどのように対応していくかという問題は、人類の直面する大きな課題。
また、人口構成の高齢化の進展とともに、生活習慣病をはじめとする各種疾患の増加等により、医療費の社会的な負担の増や、少子化による労働生産力の低下等が問題となりつつある。
このため、遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握することで、個人個人に合った副作用のないテーラーメイド医療を実現し、患者個人の精神的・肉体的負担を大きく軽減するとともに、
(1) 医薬品の副作用の減少による医療費の大幅な削減
(米国では副作用により派生する医療費は9~10兆円にも達するものと推定されている)
(2) 効果的な治療による死亡率の低下、入院期間の短縮
(3) 疾病にかかる期間の短縮による労働生産性の向上
を達成することは、社会的、経済的ニーズが極めて大きいことから、あらゆる手段を用いて早急に実現する必要がある。特に、現在は米国において確立された手法、試薬によりSNP解析を行っているため、膨大な特許料を支払う必要がある。このため今後は我が国発の技術を開発し、国際競争力を確保する観点から、高速かつ安価に個人のSNPsを解析するための基盤技術の開発や、比較ゲノムによる日本人固有の疾患関連遺伝子型の特定による創薬開発を推進することが極めて重要である。

4. 目標設定の科学的裏付け
ゲノム研究からポストゲノム研究へ
平成12年6月のヒトゲノム塩基配列概要解読終了。平成13年2月に概要解読の解析結果が公表。我が国は国際ヒトゲノムコンソーシアムの一員として約6%の貢献。
平成13年度中にヒト遺伝子領域における約20万箇所の標準SNPsの位置を同定。現在、ミレニアム・プロジェクトなどにより体系的な疾患遺伝子探索の研究が進行中。
我が国の有する遺伝子多型の解析能力は現時点では世界最速であるとともに、保有するSNPタイピングデータ量についても欧米をしのいでいる。
日本75,000カ所 約5,500万SNPタイピングデータ
欧米5大センターの合計60,000カ所 約600万SNPタイピングデータ
また、大学、理化学研究所等に豊富な研究人材が存在する。
本目標の達成に向けた研究開発を推進するのに必要な基盤的な成果が生み出されつつあり、科学的ポテンシャルがある。ただし、近未来のゲノム創薬等を目指してさらに十分な科学的ポテンシャルを増すことが重要。

5. 重点研究期間
 平成14年度から平成16年度までに研究体制を順次整備しつつ、1研究課題につき概ね5年の研究を実施する。(なお、優れた研究成果を上げている研究課題については、厳正な評価を実施した上で、研究期間の延長を可能とする。)


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This page updated on October 31, 2002

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