新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要
さきがけプログラム
  研究領域「変換と制御」

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
伊原 学 東北大学 多元物質科学研究所 助手 環境調和型ハイブリッド光エネルギー変換材料 本研究は太陽電池用シリコン薄膜の結晶欠陥の低減を可能にした新しい手法であるZMC(Zone Melting Crystallization)法を利用し、量子サイズ効果と局所電場増強効果の二つの物理効果による物性の制御を行って環境調和型材料を低欠陥で複合化します。それによって、新しいハイブリッド光エネルギー変換材料の提案および作製を目指します。
大熊 盛也 理化学研究所 中央研究所 副主任研究員 高効率バイオリサイクル共生システムの解明 自然界で枯死植物資源を効率良くバイオリサイクルしているシロアリの腸内では、多様な未知の難培養性の微生物が共生しあって働いています。共生微生物の機能を細胞・分子レベルで研究し、腸内での存在状態と機能をリンクさせて微生物間の共生機構を解明します。共生システムによる高効率性の要因を理解して学ぶことにより、バイオマス資源の有効利用への応用を目指します。
片田 直伸 鳥取大学 工学部 助教授 表面に形状選択的活性点を持つ固体触媒 固体触媒は資源の有効利用や環境低負荷化学プロセスの実現に不可欠です。本研究では、固体の表面に有機分子を鋳型としてシリカで囲まれた触媒活性点を精密に構築し、形状選択性を持つ固体触媒をつくります。分子形状のセンシング、高強度プラスチック原料(2,6-ジメチルナフタレンなど)の選択合成、不斉反応場の構築への挑戦などを通じて、固体触媒を合理的に設計する方法を確立します。さらには、機能材料表面に自在に反応場を設計・導入する技術を目指します。
国嶋 崇隆 神戸学院大学 薬学部 講師 界面を反応場とした触媒的脱水縮合反応 カルボン酸をアミンやアルコールと脱水縮合させると、アミドやエステルが生成します。本研究では、これらの反応基質のいずれもがミセルや膜などの界面に集積しやすいことに着目して、その特性を活かした触媒的な脱水縮合反応の開発を行います。すなわち、基質の界面への吸着や取り込みに基づく効率的な反応制御によって、医薬品を始めとする有機化合物の合成に役立つ選択的でクリーンな反応系を確立するとともに、生物学的な機能解明に役立つモデルへと展開していきます。
藤原 徹 東京大学 大学院 農学生命科学研究科 助手 ホウ素の輸送を利用した生物制御と環境浄化 ホウ素は植物だけでなく動物にも必須な元素であることが最近になってわかってきました。本研究では、我々が単離に成功したホウ素の輸送を担う遺伝子を利用して生物におけるホウ素輸送の機構を解明するとともに、ホウ素輸送の制御を通じた植物の生産性や環境浄化に結びつく技術の開発を目指します。
宮田 隆志 関西大学 工学部 助教授 情報変換・機能制御性を持つ分子刺激応答性ゲル 外部環境の変化を感知して自ら膨潤収縮するゲルは、環境・エネルギー・医療分野などに利用できるインテリジェントマテリアルとして期待されています。本研究では、生体分子間相互作用をゲル架橋点として利用することによって、分子を認識して応答する新規な分子刺激応答性ゲルの設計開発を行います。さらに、生体分子間相互作用をゲル網目構造変化として情報変換し、多彩な機能制御によって広範な分野で利用できる新しいゲルシステムの構築を目指します。
葉 金花 物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター 主幹研究員 バンド構造制御による水素製造用高効率光触媒 光によって水を直接水素と酸素に分解する光触媒システムは、太陽光エネルギーの化学変換技術として期待されています。本研究では、バンド構造制御及び表面ナノ構造制御を通じ、可視光照射下で高効率的に水分解できるナノ構造光触媒を構築するとともに、キャリアの励起、移動、電荷分離等水分解素過程の制御因子を検討し、飛躍的な変換効率向上を目指します。

総評 : 研究総括  合志 陽一(国立環境研究所 理事長)
「変換のより効率的な制御を目指して」
 環境調和型社会を実現するためには、物質・エネルギーの変換を変革し、より効率的かつ選択的に制御しなければならない。この理想実現には地に足をつけた地道な努力が求められる。新しい物質変換や多様な触媒機能の開拓から生物の利用まで幅広い分野を対象に、既存の研究分類にとらわれない発想に基づく研究を公募したところ、大学・国公立のさまざまな研究機関から72件の応募があった。
 提案された研究計画は、9名の領域アドバイザーに審査をお願いし、第一次として20件を選定した。この20件については、第二次審査として面接による審査を行い、最終的に研究総括、領域アドバイザーの合議により採択課題7件を決定した。
 激戦の結果、多様な研究課題が選定され、また、研究者の所属部署も多様性に富んでいる。これら多様な研究課題が期待を超える成果をあげ、物質・エネルギーの変換に関する研究を大きく進展させるものと確信している。同時にその成果が応用研究に発展し、実用化されることによって、社会的にも貢献することを期待している。
 今年度は生物の分野に優秀な提案が多く、選定の結果にはそれが反映されている。採択に至らなかった提案の中にも捨てがたいオリジナリティの高い研究計画が少なくなく、これらを採択課題に加えられなかったことはまことに残念であるが、提案者が今後更に研鑽を積まれて多方面で活躍されることを期待したい。

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This page updated on October 31, 2002

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