新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要
さきがけプログラム
  研究領域「協調と制御」

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
岡田 真人 理化学研究所 脳科学研究センター 副チーム
リーダー
神経活動のスパイク揺らぎと機能的アーキテクチャー 神経細胞はスパイクと呼ばれる活動電位で情報交換しています。脳内では、神経細胞は不規則にスパイクを出します。このような確率的なデバイスで、なぜ我々は高度な認識、記憶、思考を行うことができるのでしょうか?スパイクの揺らぎには、脳の機能を創発する機能アーキテクチャである神経回路網のダイナミクスやアトラクター構造が反映されていると考えられます。本研究は、スパイクの揺らぎをキーワードに認識や記憶などの脳の高次機能の解明に迫ります。
岡田 義広 九州大学 大学院システム情報科学研究院 助教授 実世界指向の具象化プログラミング 実世界にある事物やそれに対する操作のメタファーを積極的にプログラミングに活用することにより、より人間の思考に近い感覚・操作によりプログラミングが可能になると考えられ、ソフトウェアの生産性向上が期待できます。本研究は、計算機の画面上で三次元可視化されたリアクティブな具象としてのソフトウェア部品化を行ない、実世界にある事物を操作するのと同じ身体動作を伴う直接操作によって、ソフトウェア構築が可能な動的プログラミング環境を目指します。
黒田 真也 東京大学 大学院情報理工学系研究科 特任助教授 シグナル伝達機構のシステム解析 私たちの細胞は、外界より与えられた様々な情報(シグナル)に対して、分子ネットワークからなる情報処理機構(シグナル伝達機構)を用いて、細胞の増殖や分化、神経細胞のシナプス可塑性などの生命現象を制御しています。本研究では、生化学反応に基づいたコンピュータシミュレーションと、実験による細胞の内部状態の観測を併用したシステム解析を用いて、シグナル伝達機構の定量的な記述と理解を目指します。
齋木 潤 京都大学 大学院情報学研究科 助教授 知覚と記憶の協調による視覚認知の成立過程 我々は視覚情報から瞬時に複雑な外界を統合された全体として認知していると感じています。しかし、この印象は一種の「幻想」であり、視覚認知は統合された内部モデルの構築ではなくて、分散した部分情報の動的な相互作用であることがわかってきました。本研究では多次元、多物体からなる動的状況での情報統合メカニズムに着目し、心理物理実験、機能的脳イメージング、数理モデリングの手法を有機的に展開して、その解明に挑みます。
坂上 雅道 玉川大学 学術研究所 教授 推論・思考を可能にする神経回路 ヒトで頂点に達する創造する能力は、どのような神経メカニズムに支えられているのでしょうか?このメカニズムを実験的にかつ詳細に明らかにするためには、実験動物を用いた神経科学的研究が不可欠です。本研究は、ヒトに近い脳構造をもつマカーク類のサルに連想・推論を必要とする認知課題を学習させ、その行動を実験心理学的に調べると同時に、課題遂行中の被検体の前頭連合野・線状体からニューロン活動を記録・解析することにより、刺激間の連想さらに推移的推論を可能にする神経回路の基礎を明らかにします。
田浦 健次朗 東京大学 大学院情報理工学研究科 助教授 分散管理された計算機の高度な協調利用 今日、インターネットに結合されたPCは、最も安価で強力な、大規模計算のための計算基盤です。本研究では、それらを真に有効利用するための、(1)分散管理された計算機の初期設定、日常利用、問題解決に至るまでの「トータルコストの削減」をサポートする設定・管理ソフトウェア、(2)従来のパラメータスイープに限定されない高度な協調処理を、常時利用可能とは限らない計算資源で実行するタスクスケジューラについて研究します。
橋本 浩一 東京大学 大学院情報理工学系研究科 助教授 微生物群によるオーガナイズドバイオモジュール 生物にとって、環境変化の的確な感知とそれに対応した素早い行動の成否は生死にかかわります。そのため、微生物も体内に高感度・高性能なセンサとアクチュエータを発達させてきました。本研究では、微生物をセンサとアクチュエータの統合体ととらえてバイオモジュールと呼び、複数のバイオモジュールとコンピュータを結合させるインターフェースを開発します。これにより生物と情報処理機構を融合した新しいマイクロシステムの実現を目指します。

総評 : 研究総括  沢田 康次 ( 東北工業大学通信工学科 教授 )
 本領域では、人間・社会・環境のそれぞれで生成されその間で伝達される情報の抽出・モデル化、「協調」的情報処理(コミュニケーション)する様式とその「制御」、さらにそれを実現するための手法などを研究対象とする。例えば、インテリジェントなデバイスとシステム、ブレインコンピューティング、言語的・非言語的コミュニケーション、異種情報の統合シミュレーション、大量データの高速処理による意思決定支援システムの研究などを含む。
 平成14年度の当領域への応募は、これまでに比しても内容の充実した研究提案が極めて多く、総数は昨年度より少し減少の59件であったが、その殆どが採用レベルに達しているとも云える状況であった。
 その内訳としては、脳計算関連の研究が24件、認識・意味理解の研究が13件、インタラクティブ・ソフト関連の研究が6件、高速コンピューティングやデバイスに関するものが5件、情報処理基礎技術が4件、バイオに関する研究が4件、その他3件であった。
 本領域では今年度が最後の応募選考となる。昨年度と同様、募集要領の「選考にあたっての考え方」ならびに戦略的創造研究選考基準を踏まえて「協調的人間社会の構築に貢献」する「野心的で独創性」があり「今後の科学技術に大きなインパクトを与える」とともに、当領域の【協調】をテーマとする研究提案を重視した。また、研究グループを構成し研究を推進することが前提であるので、研究者自身の研究に対する「活力・リーダーシップ」を重視し、より研究のアクティビティの高いものを採用するように腐心した。
 書類選考に当たっては、応募課題は広範で多岐にわたるため1テーマあたり3人のアドバイザーがそれぞれ専門家としての立場から提案内容を評価し、より独創性に富んだ課題を15件選定した。
 さらに面接選考では、申請者本人によるプレゼンテーションならびに質疑応答を通して審査を行ない、アドバイザー全員による討議により上表に示す7件の提案を採択した。今後、これらの研究遂行により、人間社会に大いに貢献されることを期待したい。

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This page updated on October 31, 2002

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