新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要
さきがけプログラム
  研究領域「光と制御」 

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
伊関 峰生 岡崎国立共同研究機構 基礎生物学研究所 特別協力研究員 光センサータンパク質による細胞機能の制御 生物はその進化の過程で、光を検知するためのさまざまなセンサーを獲得してきました。我々が原生生物ミドリムシから発見した光センサーは、光で活性化されて環状AMPを作り出す酵素です。環状AMPは、感覚応答・代謝調節・細胞増殖等、多くの生命現象に関わる重要な分子です。本研究ではこの酵素の光活性化機構を明らかにするとともに、さまざまな生命現象の光による制御の実現を目指します。
岡野 俊行 東京大学 大学院理学系研究科 講師 光転写調節メカニズムと新規光センサー 脊椎動物を含め、多くの生物には光に応答して転写制御される遺伝子が存在します。これらの光応答遺伝子の多くは概日時計の時刻調節に関わっています。本研究では、光による転写調節の仕組みを探り、未だ謎に満ちた概日時計のリセット機構に迫ります。また、光感受性の転写因子と光応答エレメントを探索・設計・利用し、光刺激により任意の遺伝子の発現を自在にコントロールできる、「光依存的な転写制御システム」の構築を目指します。
梶川 浩太郎 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 助教授 局在プラズモン増強を使った光倍高調波によるバイオチップの高密度化 局在プラズモンと呼ばれる金属ナノ微粒子中の電子の波が注目を集めています。これを用いることにより光電場の増強を利用した高効率な光学デバイスや高感度なバイオセンサを作製することができます。本研究では局在プラズモンによる非線形光学効果の増強を用いてバイオセンサの超小型化、高感度化をはかります。そして、それを基板上にアレイ化して高密度なバイオセンシングシステムの作製を目指します。
勝藤 拓郎 早稲田大学 理工学部 助教授 磁性誘電体における誘電関数の磁場制御 “マグネットキャパシタンス”、すなわち磁場によって誘電率が変化する現象が注目されています。本研究では、巨大な“マグネットキャパシタンス”を持つ物質を、物理的メカニズムに基づいた設計指針によって開発します。さらに、それを用いた新しいタイプの光-磁性結合を提案し、従来型とは異なる磁気光学効果の発現を目指します。
香取 秀俊 東京大学 工学部附属総合試験所 助教授 シュタルク・アトムチップによるコヒーレント原子操作 電子・光子に比べて、はるかに多彩な内部・外部自由度をもつ原子のコヒーレント制御技術は、アトムトロニクスともいうべき、新しい高度情報処理系を構築する可能性を秘めています。本研究では、ミクロンサイズの微小電極が作る強電場を用いた原子運動制御技術を開発し、さらに光による単一原子レベルでの電子状態制御を実現することで、アトムトロニクスにおける、電子・光技術とのインターフェース手法の確立を目指します。
上妻 幹男 東京工業大学 大学院理工学研究科 助教授 光と原子の間の量子情報ネットワークの実現 光は最も速く、最も堅牢な量子情報の伝達坦体であるが、お互いに相互作用をさせることが出来ない、止めることが出来ないという決定的な短所を持っています。一方質量をもつ系である原子は、止めることも出来れば、お互いに相互作用をさせることも出来るが、量子情報を高速で伝達させることは出来ないという欠点を持っています。本研究では、光と原子を量子情報の入れ物と解し、両者の長所のみを生かした両者間のユニタリーな量子情報コミュニケーションの実現を目指します。
杉山 和彦 京都大学 大学院工学研究科 助教授 小型超高精度レーザー原子時計の実現 超短パルスモード同期レーザーとフォトニック結晶構造をもつ光ファイバーを使って、等しい周波数間隔で発振する多数のレーザー光の集合(光周波数コム)を広い波長域に発生できます。これを利用して、高精度に安定化されたレーザー周波数をマイクロ波周波数へ正確な比率で分周し、現在よりも安定で正確な原子時計を実現します。また、半導体レーザーを利用した、小型で可搬なシステムの開発を目指します。
高橋 雅英 京都大学 化学研究所 助手 有機-無機ハイブリッド低融点ガラスを用いたフォトニクス材料の創製 高い光機能性を持つ有機分子を含有したハイブリッド材料は、光波処理デバイス用材料として注目されています。本研究では有機-無機ハイブリッド低融点ガラスを利用したフォトニクスの確立を目指します。無水酸塩基反応やゾル-ゲル溶融法などの独自の材料合成手法を駆使し、非線形光学特性など有機分子の高い光機能性とガラス材料の実用光材料としてとしての有用性を併せ持つユニークな材料を創製します。
橋本 秀樹 大阪市立大学 大学院理学研究科 教授 光合成系の人為操作及び光反応制御 植物の光合成系は地球上に降り注ぐ太陽光エネルギーを最も有効に利用しているバイオナノデバイスです。本研究では、光合成系を構築する機能性色素・蛋白質を人為的に改変し再構築すること、及び極超短パルス光の位相制御(チャープ制御)を行うことにより「生命の青写真」を能動的に探索します。物理・化学・生命科学の研究領域を横断的に融合し、バイオナノサイエンス・テクノロジーの基盤概念及び技術形成を促進します。

総評:研究総括 花村 榮一(千歳科学技術大学光科学部 教授)
 この研究領域は、昨年度からスタートし、今年度は第二年次である。
 光は光情報通信、光情報記録を始め、微細加工やバイオ関連など、科学や技術で重要な役割を果たして来たし、今後予想もできないような潜在能力を秘めている。
 「さきがけ研究21」の趣旨に則り、将来の科学、技術の重要な芽を発掘する目的で応募したところ、純粋科学のアカデミックな研究者から、応用科学や工学における研究者まで、光が何らかの形で関わっている広い分野の人々から「光と制御」を切り口とした、斬新な提案や大胆な提案、堅実な、あるいは緻密な提案といった幅広い研究提案があった。
 今年度は昨年度の71件から43%増の102件の応募があった。所属区分では、国公立大;71件(国立大;60件、公立大;3件、分子科学研;5件など文科省管轄の研究所;8件)、私立大;11件、国研・独法など;8件(内、産総研;5件)、特殊法人・企業など;8件(内、理研;3件)、個人など;4件であった。企業からの応募も期待し、広報活動を行ったが残念ながら応募はなかった。これらの提案を研究総括及び領域アドバイザー8名による査読、評価を行い、書類選考では21件を面接選考対象とした。更に面接選考で9件を採択研究提案として選定した。選考では、独創性、将来性、主体性、計画の妥当性のみならず、将来の科学界や産業界へのインパクトも考慮して選考した。
 光情報通信や光情報記録関連のみならず光合成や生体の光応答等を含む幅広い分野からの採択になったが、光の持つ色々な可能性を追求する斬新な研究提案であり、大きな成果が期待できる。

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This page updated on October 31, 2002

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