新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要
戦略創造プログラム
戦略目標
「環境負荷を最大限に低減する環境保全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製」

  研究領域「エネルギーの高度利用に向けたナノ構造材料・システムの創製」

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
金村 聖志 東京都立大学 大学院工学研究科 教授 高次規則配列複合構造体を用いたエネルギー変換デバイスの創製 電気化学反応を利用したエネルギー変換デバイス(高分子固体型燃料電池、リチウムイオン電池、スーパーキャパシター)を全固体で構築するには、これまでの電池技術とは異なる点からの研究が必要であります。本研究では、電極材料と電解質材料のバルクおよび界面構造の制御を全固体系で自由自在に行えるようにするために必要不可欠な高次規則配列複合構造体に関する要素技術の確立を行います。
木島 剛 宮崎大学 工学部 教授 高機能ナノチューブ材料の創製とエネルギー変換技術への応用 研究代表者らは最近、外径6nmの白金ナノチューブと高分子ナノチューブの合成に世界で初めて成功しました。本研究では、独自に開発した複合界面活性剤鋳型法を含む独創的な手法により高性能触媒・プロトン伝導性・高誘電性・水素貯蔵能等の高度機能を有する新規ナノチューブを創製し、燃料電池用の白金系ナノチューブ担持電極とナノチューブ状高分子電解質、高容量電気二重層キャパシタ、ならびに素子化のためのチューブ集積技術の開発を目指します。
工藤 昭彦 東京理科大学 理学部 助教授 可視光水分解を目指したナノ構造体光触媒の創製 ソフト溶液合成プロセス等を活用してナノ構造体を構築することにより、電荷分離や反応場の形成・分離が制御された光触媒を開発していきます。これによって、太陽光を利用して水から水素クリーンエネルギーを効率良く作り出す可視光応答性光触媒を開発していきます。これにより、社会的な問題となっている地球規模でのエネルギー・環境問題に貢献できると期待されます。
鯉沼 秀臣 東京工業大学 応用セラミックス研究所 教授 電界効果型ナノ構造光機能素子の集積化技術開発 不純物のドープという欠陥の誘起を伴う方法に代わり、電界効果による電荷制御を従来の半導体を超える各種材料(ワイドギャップ酸化物、π共役有機固体)に拡張し、構成層の厚みや幅、表面・界面、チャネルのナノサイズ制御による新エネルギー利用システム(太陽電池、透明トランジスタ、発光素子、光触媒)を構築します。この際、世界最先端の集積化ナノ合成・評価システムを設計・開発し、研究にスピードと革新性をもたらします。
河本 邦仁 名古屋大学 大学院工学研究科 教授 ナノブロックインテグレーションによる層状酸化物熱電材料の創製 原子・クラスターのナノレベルで設計された酸化物機能ブロックのインテグレーションにより、従来の熱電材料では達成不可能であった複合物性を実現し、次世代の高度エネルギー利用社会に資する高効率熱電変換材料の創製を目指します。分散熱源からの排熱利用、特に自動車などの移動体熱源による熱電発電が実用化されれば、社会的・経済的・市場的インパクトは極めて大きいと期待されます。
佐々木 高義 (独)物質・材料研究機構 物質研究所 主席研究員 光機能自己組織化ナノ構造材料の創製 本研究では、独自の2次元ナノ物質を用いてこれらを自己組織化反応を活用して階層的もしくは傾斜的に集積する技術、機能性分子などと精密にナノ接合する技術の確立を行います。これにより新型太陽電池につながる高効率の光エネルギー変換、貯蔵機能の実現や省エネルギーに役立つ高感度セルフクリーニング薄膜などの開発を目指します。
中戸 義禮 大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授 界面ナノ制御による高効率な太陽光水分解システムの創製 高効率・低コストの太陽エネルギー変換を目的として、安価な多結晶シリコン薄膜と微粒子二酸化チタン薄膜(窒化・可視化したもの)の組み合わせにより太陽光水分解を行い、金属ナノ粒子の担持、表面アルキル化などの界面ナノ制御を駆使して、10%以上の高効率の達成を目指します。これにより太陽エネルギー変換の大規模実用化に新しい可能性が生まれ、地球規模のクリーンなエネルギー変換システムの開発が期待されます。
松本 要 京都大学 大学院工学研究科 助教授 ナノ組織制御による高臨界電流超伝導材料の開発 地球に負荷をかけず高効率で電力エネルギーを貯蔵・送電したり産業機器を駆動することを実現する高温超伝導線材は、実用化には臨界電流密度をあと数倍向上させる必要があります。本研究ではナノ組織制御によって人工ピンニング点(APC)を超伝導体中に導入し、量子化磁束の集団を効果的にピンニングして臨界電流密度を飛躍的に向上させることを目指します。これにより高温超伝導の77K応用が一息に加速することが期待されます。
山木 準一 九州大学 機能物質科学研究所 教授 ナノ構造単位材料から構成される電力貯蔵デバイスの構築 リチウムイオン電池やキャパシタに代表される電力貯蔵デバイスの性能は、単にその電極材料のマクロな化学組成から一意的に決まるものではなく、電極を構成する活物質の粒径や空孔構造といったナノ構造に大きく影響されます。本研究では、このようなナノ構造の新規構築と制御により、新規機能の発現の学術的解明と、電力貯蔵デバイスである金属空気電池やリチウムイオン電池・キャパシタの性能向上を目指します。

総評 : 研究総括  藤嶋 昭(東京大学大学院工学系研究科 教授)
 ナノテクノロジーは21世紀を支える重要な分野であり、今年度、文部科学省からは3つの戦略目標が示されたところである。研究領域「エネルギーの高度利用に向けたナノ構造材料・システムの創製」は戦略目標「環境負荷を最大限に低減する環境保全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製」を目指して設定されたものであり、ナノテクノロジーを活用した高効率のエネルギー変換・貯蔵技術、環境調和型の省エネルギー・新エネルギー技術を創製し、環境改善・環境保全に資する研究、および、ナノオーダーで構造・組織等を制御することにより、省エネルギーを達成し、エネルギーの高度利用に資するこれまでにない高度な物性を有する機能材料・構造材料・システム等を創製する研究等を対象としている。
 本研究領域への応募総数は67件で、これを分野別に分類すると、エネルギー・環境分野(24件)、ナノ物質・材料(構造材料)(11件)、ナノ物質・材料(電子・磁気・光学)(10件)、省エネルギー・エネルギー利用技術(5件)、加工・合成・プロセス(3件)などであった。用途別には、水素製造・貯蔵関係(7件)、超高温耐熱材料(7件)、燃料電池(7件)、熱電変換材料(6件)、太陽電池(4件)、ナノチューブ関係、医療関係、超伝導関係などに分類された。審査に際して、本研究領域の研究総括、領域アドバイザー8名により戦略目標の方向性を共有した後、単なる既存概念の延長ではなくナノテクノロジーを駆使した革新的技術シーズの創出、具体的な研究目標、充実した研究体制、研究の進め方、及び熱意にあふれ優れたオリジナリティーを有する研究リーダーをも視点として意見交換を行い、書類審査により14件の提案を選定し、面接審査により9件の提案を厳選した。
 採択できなかった提案にも多くの優れた提案もあったが、戦略目標に対する貢献度、基礎データの蓄積、再現性の確認、ターゲットの絞込み、具体的な説明や数値目標の明確さ、効果的な研究体制、及び研究代表者の研究課題への取り組み等を勘案し、これらの課題の採択に到ったものである。
 採択された課題は、太陽光水分解、熱電材料、光エネルギー変換用ナノシート、電界効果型光機能素子、全固体型エネルギー変換デバイス、燃料電池用ナノチューブ、超伝導材料、電力貯蔵デバイスなどいずれも意欲的な提案で、革新的技術シーズの創出と大きな成果を期待したい。

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This page updated on October 31, 2002

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