新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要
戦略創造プログラム
戦略目標
「環境負荷を最大限に低減する環境保全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製」

  研究領域「環境保全のためのナノ構造制御触媒と新材料の創製」

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
魚住 泰広 岡崎国立共同研究機構 分子科学研究所 教授 水中での精密分子変換を実現するナノ遷移金属触媒創製 遷移金属錯体の構造・機能に立脚し、遷移金属を触媒活性種とするナノ構造体・ナノ金属クラスターを両親媒性高分子マトリクス内に自在調製する。両親媒性マトリクスによる水中での不均一有機反応場の提供、同マトリクス内に構築されたナノ触媒種による有機変換工程の精密な駆動・制御を一挙に達成することで環境調和・リスクフリープロセスを実現する。
奥原 敏夫 北海道大学 大学院地球環境科学研究科 教授 グリーン化学合成のための酸化物クラスタ高機能触媒の開拓 本研究では、廃棄物を出さないグリーン化学合成を実現できる新しい機能を備えたナノ構造制御固体触媒の開拓を行います。そのため、強酸性酸化物クラスタをベースに原子レベルからナノサイズの構造設計によって、従来の硫酸法化学合成にとって替わる水中有機合成や高難度ファイン合成を実現する新固体酸および副生物が水のみの高効率選択酸化反応を促進する新固体酸化触媒を開拓します。
黒田 一幸 早稲田大学 理工学部 教授 高度に制御されたナノ空間材料の創製 本研究では、組成と構造が良く制御されたミクロ多孔体・メソ多孔体などのナノ空間材料を創製します。電子線結晶学によってナノ空間材料の構造を調べ、環境触媒などとしての能力を明らかにします。材料の機能を組成・構造との関係で統一的に把握し、次の世代の新ナノ空間材料合成に挑戦し、環境・産業等各方面への応用を目指します。
辰巳 敬 横浜国立大学 大学院工学研究院 教授 有機無機複合相の自在変換によるグリーン触媒の創製 有機テンプレートによって導かれる有機無機複合相のソフト性を利用することによって、ゼオライト、メソポーラス構造を自在に変換し、所望の細孔構造と精密制御された活性点を有する新しい触媒材料を創製します。シリカ-界面活性剤分子集合体の形状変化やゼオライトの層構造と3次元構造の相互変換の原理、機構を解明します。これらのナノ構造が精密制御された触媒は化学工業のグリーン化への寄与が期待されます。
田 旺帝 北海道大学 触媒化学研究センター 助教授 高機能規整酸化物表面創生 本研究は酸化物単結晶または化学的に機能化した表面を対象に、振動分光法などの酸化物表面構造研究に適した手法により、原子・分子レベルの化学プロセスを規定し、物理・化学的特性の制御を目標とします。これにより、高効率選択反応、自己制御機能(増殖・修復)を有する環境にやさしい新材料の創出が期待されます。また、ここで開発されるナノ分析法は新たなナノテクノロジーとしての応用が期待されます。
辻 康之 北海道大学 触媒化学研究センター 教授 ナノ制御空間を有する均一系分子触媒の創製 本研究では、ナノサイズ制御空間を均一系分子触媒に導入することにより、ナノ制御空間が有する超分子相互作用等を活かした、高度な分子認識能のような従来では達成できない高い選択性を有する均一系分子触媒の開発を行います。これにより、室温に近い温和な反応条件下、高い効率で有用物質を生み出す接触変換反応を行うことが可能となり、地球環境を保全する優れた触媒システムの実現が期待できます。
寺岡 靖剛 九州大学 大学院総合理工学研究院 教授 ナノ構造制御ペロブスカイト触媒システムの構築 本研究では、ペロブスカイトを基盤材料に用いて、機能と構造を「ナノからメソ、マクロへサイズ階層的に制御」することにより、環境・エネルギー分野で重要な排ガス浄化触媒、電極触媒、メンブレンリアクターの高性能触媒システムの構築を目指します。これにより実用化への道を拓くとともに、ナノテクノロジーを基盤とした複合金属酸化物触媒システム構築の方法論の提示、確立とその背景にある基礎学理の構築にも取り組みます。
持田 勲 九州大学 機能物質科学研究所 教授 表面最適化炭素ナノ繊維の新規環境触媒機能 研究代表者らは、ヘキサゴナル炭素面を明確に認識して、直径及び炭素面の配列の多様な炭素ナノ繊維の調製に成功しています。この炭素ナノ繊維の表面及びそこに担持した触媒種について高い触媒機能を追及すると同時に、担持した触媒種あるいは基質と炭素面との微視的相互作用を明らかにして、ナノ界面化学を開拓します。最適炭素面を有する炭素又はカーバイドナノ繊維の大量合成、表面機能を最適・最大化した環境触媒およびエネルギー高度利用法を開発して新産業の基礎を構築します。
八嶋 建明 (財)地球環境産業技術研究機構 科学研究グループ グループリーダー
主席研究員
ナノ制御置換型金属酸化物触媒による選択酸化反応の制御と応用 酸化反応を司るのは活性酸素とされていますが、選択酸化反応ではその表面上での密度と動きの制御が必要です。本研究ではメタン等の選択酸化を可能にするために酸素との親和性の異なる数種の金属元素をナノオーダーで二次元的に制御した表面層を持つ置換型金属酸化物を合成することにより、表面上に生成する活性酸素の密度と動きを制御し、含酸素化合物生成の選択性の向上を試みます。この活性酸素の制御法はメタンの他、プロピレン等広く炭化水素の選択酸化反応への応用も期待できます。

総評 : 研究総括  御園生 誠(工学院大学工学部 教授)
 ナノテクノロジー「環境保全のためのナノ構造制御触媒と新材料の創製」の研究領域は、ナノオーダーで構造・組織等を制御することにより、高効率・高選択的かつ低環境負荷な物質の合成あるいは処理を可能とする新触媒・新材料・システムを創製し、環境改善・保全に資する研究を対象とする。すなわち、「独創的なナノ制御法」と「環境改善への大きな貢献」の二つをキーワードとして高機能触媒・材料等を創製する研究である。
 応募総数は63件、大学55件、法人8件で、内容を主題で分けると、グリーン有機合成関連24件、環境触媒・材料・システム18件、環境材料合成15件、その他(バイオ、光など)6件であった。提案には、均一系、不均一系触媒のナノレベル制御により有機合成、汚染物質無害化の機能を向上させることを目指したものが比較的多かった。ただし、これらには、ナノ制御のアイデアに独自性が見出せないもの、グリーン化学のキーワードを含むだけで環境改善への貢献が明確に考察されていないものものも少なからずあった。選考にあたっては上記二つのキーワードを重視し、書類による一次選考と面接による最終選考により選考した。いずれか一方のキーワードに関してとくに優れている提案は他が現段階で不十分であっても将来性を勘案しながら採択の方向で検討したが、領域全体としてはナノテクノロジーの進歩と環境改善への貢献の二つがバランスよくはかられるように配慮した。しかし、合成効率の向上のみの提案や構造解析のみの提案などは対象としなかった。
 採択された規模の異なる9件の課題を全体としてみると、基礎から応用、物質・材料合成から機能設計、グリ-ン合成から環境改善技術のバランスがとれていて、いずれも将来の成果が期待される意欲的な研究である。とはいえ、成果はすべて今後の研究努力にかかっている。研究総括としてはアドバイザーやスタッフの方々と協力してインパクトのある成果が得られるよう精一杯応援をしたいと考えている。採択されなかった提案の中に優れたものがかなりあったが採択できなかった。これら提案が今後何らかの形で具現化され成功することを祈りたい。

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This page updated on October 31, 2002

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